花とゆめ連載「スキップ・ビート!」の感想&二次SS中心です。当サイトはリンクフリーです。
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「北海道の夜」
2015年06月02日 (火) | 編集 |
※注意。このお話は「彼女の嘘と彼の苦悩 side K」の一部です。まずそちらをご覧になってからご一読下さい。
その空白部分というか、エロ部分というか本来書く予定だったシーンです。一応18禁(私的には15禁ぐらい)です。ご理解いただいた上でお読み下さい。ちなみに以前掲載していたものよりエロレベルはupしてます。では下へ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「北海道の夜」




「あの鶏が君だったなんてね」
知らなかったよ、と部屋に着くなり蓮は言った。そして俯くキョーコの顔を指で無理矢理持ち上げる。
「ねえ、どうして隠してたの?」
キュラララと光を振り撒きながら笑顔が尋問する。
「あ、あの……その……」
「ん?」
「敦賀さんこそどうして……」
「昨日、君の態度がおかしかったからね。気になって椹さんに聞いたんだよ。それで今日の仕事が終わってからすぐこっちに来たんだ」
蓮の顔は相変わらず笑顔だ。
「ねえ、隠していたのはどうして?言って?」
言えない。言える訳ない。
キョーコは唇を噛み締めた。
一度とはいえ、恋愛相談までしてくれる程信頼されている坊と、嫌われているだろう、最上キョーコとを結び付けられたくなかった。
素の敦賀蓮を知っていたかった。
先輩と後輩以外の関係が欲しかった。
でもそんなこと知られたくない。
綺麗な瞳に怯えた自分の姿が映っている。蓮の感情が読めない。怒っている様子ではない。それが余計、キョーコには怖かった。
「どうして黙っているの?」
トンとふくらはぎに何かが当たる。キョーコはいつの間にかベッドサイドまで追い詰められていた。
「ん?」
涙が出そうになる。堪えようとしたが無理だった。歪んだ視界。頬を一筋の雫が零れ落ちる。
そんなキョーコを見て蓮はハッとし、辛そうに目を伏せた。
(どうして?どうして敦賀さんまでそんなに……)
戸惑うキョーコの体が急に温かいもので覆われる。
(何?何なの?)
蓮に抱き締められているのだ。それに気付き、キョーコはパニックを起こした。そして一瞬にしてベッドに引きずり倒されてしまう。至近距離で蓮の瞳に見つめられ、息がつまりそうになった。なのに視線を反らせない。
両手首を押さえつけられているから、溢れる涙を拭うことも出来ない。
涙で潤んだ瞳で見上げるキョーコに、蓮が覆いかぶさった。
「あの……敦賀さん?どう……」
したんですか?とキョーコは続けることは出来なかった。
キョーコの目の前には妖しい、あの淫らな表情の彼がいた。
蓮ではない、知らない男の人。
涙に濡れた頬を指先でツイッとなぞり、ニヤリと危うい笑みを浮かべる。
「答えたくなるようにしてあげようか?」
妖しい光を湛える瞳。引きずり込まれそう……。




キョーコは泣いていた。
少しかさついた唇が首筋を這う。舌先で耳たぶ、耳の穴が舐めねぶられ、かじられる。熱くぬるついた感触にビクリと身体が震えた。
キョーコのその様子に、蓮はくすりと笑みを漏らす。
「気持ちいい……?」
そんな蓮の問いかけに、キョーコは答えることが出来ない。恥ずかしそうに顔を背けるだけで精一杯だ。ねっとりと濡れた舌が耳裏を這い上がり、その感触に背筋がゾクリとした。
「抵抗しないの?」
抵抗しようにも強く両手首を捕まれ、頭の上に縫い取められている。その上、キョーコの華奢な身体の上に逞しい蓮の身体が乗っているのだ。
びくともしない鍛えぬかれた大きな大人の男性の躯。
逃げることはもちろん、抵抗なんてできる訳がない。
蓮の唇は頬、耳や首筋を這い纏わり、チクリと痛みを遺していく。ねとりと耳の中を舌で舐められ震えが走った。
「……ん、あっ…やあ……」
身を捩り、顔を背けようとすると、頤を指で押さえつけられ、そして唇を柔らかくて熱い何かで塞がれた。
キスされている。そう気付いたとき、キョーコの心は壊れそうになった。
(なんで!?どうして?)
息苦しくて空気を求めて開いた口の中に、舌が入り込んできた。ぬるついた蓮の舌がまるで軟体動物のようにキョーコの口腔を掻き回す。脅えて縮こまった舌を絡められ、歯茎や下顎の裏を舐められる。
「……く……ふっ…んんっ……」
息までも奪うような激しい口付け。余りにも獰猛で乱暴なキスに、心が悲鳴をあげる。それなのにキョーコの身体は、その淫らな感触に震え始めた。
「……キスだけで感じちゃった?可愛いね……」
くすりと笑って耳元で甘い声で囁き、蓮は震えるキョーコの身体を見つめた。まるで捕らえた憐れな獲物を、どう料理しようかと楽しげに思案する狼のように。
「た……助け……」
「一体誰に助けを求めてるの?まあどうせ助けなんてこない。それにこんなとこ、見られてもいいの?」
残酷な微笑みを浮かべる男に、キョーコの瞳から新たな涙が溢れ出る。
蓮はその涙を舌で舐めとり、またキョーコの首筋に顔を埋めた。首、下顎と舌を這わせていく。そして耳まで辿り着くと再びそこを蹂躙した。耳たぶの柔らかな感触を楽しむように口に入れ、舐めしゃぶり、食む。
「あ……、はぅ……やあ……」
背中を仰け反させ、キョーコが喘ぐ。
快感に潤んだキョーコの瞳を眺め、蓮は薄く笑った。悪辣で淫猥な微笑み。
そんな顔を見たくなくて、キョーコは顔を背けた。溢れ出た涙が次々とシーツに吸い込まれていく。
それに構うことなく、蓮の左手がシャツをたくしあげ、下着の中に入り込んだ。右胸を揉んでブラジャーのカップがズレたところに、カリっと乳首を噛まれた。
「……っつ!」
痛みに思わず声を上げると、今度はそこを舐められる。
赤い果実のような乳首を、蓮は舌で執拗に弄ぶ。ピチャピチャといやらしい音をさせながら何度も舐めあげた。ザラリとした舌がまるで生き物のように乳首をこね回す。舌だけでなく唇や歯で愛撫すれば、赤い果実がプクリと立ち上がった。
その間も左手がもう一方の胸を揉み上げる。優しく強く、時折乳首を摘み、硬くなったそれを嘲笑うかのように弄ぶ。
「……あ、ふ……んん、…んあ…」
キョーコは強すぎる刺激に喘ぎ、動きを封じられているにも関わらずもがいた。どうしても声を堪えらない。
やがて蓮の左手がスカートの裾を掻き分け下着の中に入ってきた。
「いやっ!!」
キョーコは思わず声を上げ、脚を閉じた。けれど目一杯脚をバタつかせてみても侵入を拒むことはできない。
「……いや……、こわっ……」
「怖い?なら、教えてくれる?」
それはできない。
顔を背けた。これが答え。
「強情だね……いいよ。俺も君が答えてくれるまで止めないから。せいぜい我慢して」
黒い羽を背中に隠した悪魔が愉しそうに笑う。
淫靡で妖しい悪魔に魅入られた愚かな人間。自分はきっと簡単に篭絡されてしまうだろう。
キョーコは諦めにも似た境地で蓮の手を受け入れた。
下着の中に入ってきた手が脚の付け根をやわやわと撫で上げる。その微妙な感触にキョーコの腰が蠢いた。
それを酷薄な瞳で眺めた蓮は、更に薄い茂みの奥に指先を伸ばす。隠された割れ目に辿り着くと、指先がぬるりとした液体に触れた。キョーコの蜜口がしとどに濡れている。
「もう濡れてるの……?処女なのに随分淫らなんだね」
蓮の聞くに堪えない物言いにも、初めての淫靡な快楽に翻弄されているキョーコには聞こえていない。眉を寄せ、堪えるだけだ。
「…ん、……あ、あん……」
長くて骨張った指が中を探る。指先で中を擽り、鍵型にした状態でグリっと奥を付く。そうかと思えばゆるゆると撹拌するように掻き回された。とてもあの大きな手が動いているのだと思えないくらい繊細に。そして執拗に。
ネチャネチャと濡れた音が耳をも侵し、キョーコを狂わせる。ただひたすらこの訳のわからない激しい愉悦に堪えるしかない。
そんなキョーコの隘路に、二本目の指が挿入された。卑猥な肉襞を拡げるように指が中で開かれる。二本の指が中でバラバラに動かされ、堪えきれない喘ぎがキョーコの口から漏れた。
「いや……も、も…もう……だめぇ……」
子供がいやいやをするように首を振るキョーコに、蓮は動きを一旦止めた。そして捕らえていたキョーコの手首を放す。
ようやくこの享楽の地獄から解放されたのだ。キョーコは安堵し、ほっと息をついた。
しかし、それもつかの間、なんと蓮はキョーコの両足を掴み、大きく広げた状態で抱え込んだのだ。
「あっ……!やめっ……!」
オムツを替える赤ん坊のような体勢に、キョーコは必死になって身体を捩った。しかし、蓮が凄まじい力で押さえ込んでくるため逃げることが出来ない。
蓮はそのままキョーコの割れ目に顔を近付け、そこをねっとりと舐めあげた。
「ひっ……ん、んん……」
キョーコは最初それが何かわからなかった。しかし、濡れた感触と時折溢れる吐息に、それが蓮の舌だと気付くと、羞恥に顔を染めあげた。
「いや……、いやあ……」
解放された手でせめてと顔を隠すも、濡れた音が耳から入ってくる。
キョーコは次から次へと溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
蓮の口淫は止まることを知らない。キョーコの蜜口に舌を挿し入れ、敏感な襞を舐めあげる。キョーコの愛液と蓮が送り込む唾液とで、そこは益々濡れていく。そして舌だけでなく指まで挿入され、キョーコはとうとうキョーコは陥落した。
「いやあ……つ、敦賀さん……やめ……、も、やめ……て……許して……」
執拗に嬲られ、キョーコは息も絶え絶えに懇願した。
もうこれ以上は堪えられない。
「じゃあ……教えてくれるね……?」
キョーコは涙でぐしゃぐしゃになった顔で、こくりと頷いた。
そんなキョーコのこめかみにチュっとキスをして、蓮は泣き濡れた顔を優しく撫でた。
「話は後で聞かせてもらうから、とりあえず身体拭いてあげるね」
「…………え?」
「身体、ベタベタしてるでしょ?裸のままでもいいけど、それだと俺も辛いし」
本当は最後まで出来ないのが残念なんだけど、などど恐ろしいことを口にした蓮に、キョーコはベットの上を後退る。
そんなキョーコに蓮はくすりと笑い、浴室に向かった。酷く楽しそうに。
キョーコは蓮の後ろ姿をぼんやり眺めていたが、すぐにまぶたが重くなり、やがて寝てしまった。




気が付くとキョーコはバスローブを着てベッドに寝ていた。
「あ、起きた?よかった、置き手紙でも書いて帰ろうかと思ってたんだ」
むくりと起き上がると、蓮が近付いてきてキョーコの額に口付けた。
「身体は一応拭いておいたから。鞄漁るのは流石に出来なかったから下着は着せてないんだ。ごめんね」
なんてことないような爽やかな声で言われ、キョーコは悲鳴を上げそうになった。それを蓮の手で塞がれ、手足をバタバタ動かすだけに終わる。
「まだ夜中だから。大声は止めてね」
そう言って、蓮はにこりと笑う。キョーコが落ち着いたのを見てとり、蓮はキョーコの口を塞いでいた手を外した。そして真剣な眼差しでキョーコを見つめ言った。
「最上さん、よく聞いてね。あの鶏くんに言ってたこと思い出して。俺が好きな人のこと。俺が好きなのは君だよ。愛してるんだ」
蓮の真摯な眼に、キョーコは目を反らすことが出来ない。蓮の言葉に嘘はない。それはわかった。でも……。
「今度は君の番。あの鶏だってどうして隠してたの?答えてくれるって約束したよね?」
どうやって自分の気持ちを伝えたらいいかわからない。それに不安で堪らない。蓮の気持ちは素直に嬉しい。けれど自分がそれを受け入れてしまったら……。もう後戻りできなくなってしまう。
キョーコは蓮の瞳を見ながら途方にくれた。
不安に揺れる瞳を見て、蓮はくすりと笑い、そしてキョーコの唇に触れるだけのキスを施した。
「今日はもう時間だから行くよ」
「え…………?」
そう言って蓮は部屋を出ていった。捨て台詞を残して。
「次に会ったら逃がさないよ。覚悟して?」
キョーコはその言葉に頭を抱え込んだ。
(次?次っていつ……?いやあーーーっ!!!)
心の中で絶叫しながらも、キョーコは自分の中に芽生えた気持ちに気付いていた。
期待と不安。
自分の身体に施されたたくさん紅い“シルシ”。
キョーコはほんのりと頬を染め、唇を指でなぞった。




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「彼女の嘘と彼の苦悩 side S」
2015年04月04日 (土) | 編集 |
意外に難産でした。一人称が混在しているのはわざとです。



「彼女の嘘と彼の苦悩 side S」





妻と娘をこよなく愛す、普通の中年男、椹武憲42歳。
ただ一つ特殊なことといえば、勤めている会社の社長が変わり者ということだけだろうか。
LMEという業界きっての芸能事務所でタレント部門主任の地位にある私だから、変わり者は見慣れているつもりだ。が、それを抜きにしてもうちの社長は群を抜いて変わっていると思う。
その変人社長が創設したセクション、ラブミ-部をまかされたのは成り行きだった。
そう、彼女と出会ったせいかもしれない。
私がラブミー部員の一人、最上キョーコという爆弾娘と出会った時は正直、彼女がここまでのものになるとは思っていなかった。
私が見出だし(脅されただけだが)、一応直属の上司としては嬉しい誤算である。



「ねえ、椹のおじ様。お姉様、明日は空いてるかしら?
とある日、変人社長の孫娘、マリアちゃんが尋ねてきた。
このマリアちゃんはなぜだが最上君を「お姉様」と呼び慕っているようだ。少し前まで問題を起こしていたが今は嘘のように落ち着いているらしいのだが、それが彼女のおかげなのだと社長が感謝していた。あの社長がだ。ほんとに凄い影響力だ。
「確か明日は最上くん、北海道だ」
「なんだあ、残念。学校お休みだから一緒に遊んでいただきたかったのに」
そんな会話をした夕方、なぜか社くんからも電話がかかってきて同じことを聞かれた。
「ああ、明日は北海道だ」
『それ、なんの仕事なんですか?ラブミー部ですか?』
やけに詳しく突っ込むなと思いながら「坊」には触れないように、触れないようにと慎重に答える。それが悪かったのか、どうにも言葉に詰まってしまう。普段通りの対応ができなかったが、ちょうど内線がかかってきたのでそれ以上は追及されなかった。
(うーん、上手くごまかせたかな?しかしなんで、社くんが最上くんの予定を知りたがるんだ?)
社くんは俳優、敦賀蓮のマネージャーをしていて、若いながらも人気俳優をしっかりサポートしている。蓮も社くんの支えで俳優として更に磨きがかかったと評判だ。
その彼がなぜ新人タレントの動向を気にするのか。しかも部門違いのまだまだ駆け出しの彼女を。
(なんだかおかしいな……)
胸騒ぎを覚えながらも他の仕事に没頭していた。




そして今日の仕事も無事終わり、そろそろ家に帰ろうかと思っていたその時、悪魔、いや魔王が俺の前に現れた。
(なんだ?急に寒気が……。風邪でもひいたか?)
「早く帰って休まない……っと、ん?蓮、どうした?」
「お疲れ様です、椹さん」
奴はいつものように笑顔だった。それはもう無駄にキラキラした紳士の顔で。
「なんだ?蓮、こんな時間に」
「実はお伺いしたいことがありまして」
「俺にか?まあ俺で答えられることなら構わないが」
俺はこの時すっかり忘れていた。夕方奴の遣いが俺に電話してきたことを。
にっこり笑っている奴に、俺は浅はかにも素直に応じてしまった。
「実は最上さんのことなんですけど……」
「最上くん?何だ?彼女がどうかしたか?」
そういえば最上くんはドラマで蓮と共演してい るんだった。
「明日から北海道でロケだと伺ったんですが……」
「あ、ああ。そうだ。一泊だけどな」
「大変ですね。一泊だけなんて。どこなんですか、ロケ」
「ん?確か函館だったはずだ」
「函館……」
思案げな蓮をいぶかしみながらも俺は素直に答えた。
思えばこの時逃げるべきだったのだ。この魔王が視線を外している間に。
少し俯いていた顔を上げ、蓮がこちらを見た。それはもうこれ以上ないくらい極上の笑顔を浮かべて。
何故か背筋に寒気が走った。カンカンカンカン。頭に逃げろと警鐘がなる。
「れ、蓮。悪いが明日は早いん……ひっ!」
(こ、殺されるー!!)
時既に遅し。蓮は器用にも後ろ手で扉を閉めた。鋭く切れ長の瞳には怒気を通り越し、殺気が浮かんでいる。蛇に睨まれた蛙のように俺は動くこともままならない。
「ねえ、椹さん。何か俺に隠していることないですか?」
奴が一歩、また一歩と近付いてくる。
口元は笑みを讃えているものの、それに反して眼光は鋭利な刃物のように鋭い。研ぎ澄まされた刃に一刀両断されそうだ。切られる前の恐怖にじわじわと侵される。
「れれ、れ、蓮……」
あまりの恐怖に声が上擦る。二十以上も年下の若造に本気で怯えるなんて情けないことこの上ない。が、これは仕方ない。
「教えていただけませんか、椹さん。このままだと俺気になって眠れそうにないんですけど……ね?」
暗いオーラを背負いながら極上の微笑みを浮かべて、蓮が俺の机に手を付いた。逃げ場はどこにもない。
「か、隠していることなんて、何もな……」言い切る前にバキっと凄まじい音がした。思わず目を閉じてしまう。次に目を開いたら蓮の顔がより近い所にあった。
「ひーっ!!」
思わず慄いて後ずさった俺の耳にバラバラと何かが壊されていく音が聞こえてくる。恐る恐る音のした方に目をやると、机の上で灰色の何かが粉々に潰されているのが見えた。
壊した欠片の1つを掴み、にこりと笑みを作る奴の顔は素人じゃない。笑顔で人を脅す経済ヤクザ…むろん下っぱじゃない、情け容赦なく金をぶんどるのを後ろで笑顔で指示している奴だ。
「椹さん……教えてくれますよね?なんで最上さんが函館に行くか」
教えないとこの欠片のようになる、と仄めかすようにそれを粉々に握り潰した。
この残骸のように潰される俺……想像しただけで震えが走る。
「椹さん……社長から聞いてますか?俺…昔は結構ヤンチャだったんですよね……」
確実にヤンチャャで済まされるものじゃない。しかも昔じゃなく今もそうだろう!と反論したくなった。
ブルブルと震える俺を見て、蓮が薄ら笑う。
恐い。恐すぎる。
ダラダラと冷や汗が流れる。
「椹さん……確か娘さんがいらっしゃるんですよね……?」
「蓮……?」
「まあさすがに娘さんはまずいか……なら奥様を俺のモノに……」
「れ、蓮?何を……」
「ああ……奥様を誘惑するのも面倒だな。椹さんの不倫でもいいか……」
不穏な言葉を漏らす蓮が不気味な笑いを浮かべている。
「ねえ……椹さん……?奥様や娘さんに軽蔑されたくないですよね?」
「れ、れれれ蓮?」
「噂なんていくらでも作れますよ?」
さてどうします?と目で問われ、俺は陥落した。




恐ろしい魔王が去った後、俺は最上くんに電話した。幸いなことに彼女は出なかった。
今はまともに彼女と話せそうにない。けれど言わずにはいられない。
だから留守電には謝罪の一言だけを入れた。
最上くんがこれを聞いた後、きっと何のことか尋ねてくるだろう。そうなる前に帰ろう。
電話を留守電モードにし、机に施錠しようとした時、灰色の残骸が目に入った。
「明日買ってこないとな……」
『すみません、マウスは弁償します』と帰っていった似非紳士の姿が頭を過る。
粉々になったマウスを残して帰る訳にもいかず、俺は仕方なくそれを綺麗に片付けた。
こんな風に壊されなくてよかったと思う反面、いたいけな少女を悪魔に売り渡してしまった罪悪感が拭えない。
明日、いや、もう今日だ。
魔王が函館で何もしませんように。
俺にはそれを祈ることしか出来なかった。




<後書き>
コピペに失敗して後半がなくなってしまっていたの再構築してみました。当事書きたかった脅す部分がなくなっていて困りました。脅迫方法とか台詞とか忘れて(壊すものはサリーちゃんが覚えててくれました。感謝♪)こんな風になってしまいましたがいかがでしょ?薔薇姫姉様に脅された光サイドは消えたし、姉様以外に求められていないので書きませんので悪しからず。

彼女の嘘と彼の苦悩 side Y
2009年07月16日 (木) | 編集 |
やっと社さんサイドがアップできます。
派生SSなので短いです。


「彼女の嘘と彼の苦悩 side Y」




マネージャーとして、やっと板についてきたなと感じる今日この頃。
俺、社倖一、25歳には悩んでいることがある。
俺の担当する俳優、敦賀蓮のことについてだ。
この蓮という男、恋愛百戦錬磨な顔して実は小学生並の愛情表現しか出来ない、更には自分が恋をしているという自覚すらない恋愛音痴だということが判明したのだ。そして最近やっと自分の恋愛感情を自覚してくれた。
陰ながら見守っている俺としてはおおっぴらにからかえ、いや、応援できて嬉しい限りなのだが……。




「頼むから犯罪に走らないでくれよ~、蓮」
(明日の一面、『敦賀蓮、新人タレントをレ○プ!』なんてことに……いやいや蓮に限ってそんなことは)
ないと言い切れないところが悲しいところだ。
自宅に帰りついてからも頭の中を支配するのは奴の笑顔。
自宅の鏡に映る自分に、奴の顔が重なる。全体は穏やかに笑みを称えているのに瞳の奥には殺気にも似た怒気を孕んでいた。人一人は確実に死んでそうな勢いだ。
思わず浮かんだ幻を振り払い、食事を買いに行くことにした。
途中、本屋でとある雑誌に目に留まる。
『人気俳優、敦賀蓮の素顔を大解剖!』
そんな見出しに苦笑した。
穏やかで優しい紳士を完璧に演じる男のインタビューは、どこまでも紳士だった。
あの面の皮の厚さは表彰ものだ。
あれが素顔だと信じている子にそれが剥がれた瞬間をもし見せたらどう思うだろう。
(特に昨日の蓮のような……)
思い出したらまた震えが走った。
昨日の蓮は恐ろしかった。笑顔の奥に隠しきれない魔王の憤怒の形相が見えていた。
(怖い!恐すぎる!蓮がマジギレしてる)
五つも年下の若造に本気で怯えるなんて情けないことだが、怖いものは怖い。所詮しがないただの人間である俺が、本気の魔王に勝てるわけはないのだ。
(当たり前だけど椹さんも負けたみたいだし……)
昨夜、仕事を終えた蓮は事務所に向かった。俺も一緒に寄るつもりだったが、椹さんに個人的に用があるだけだからと先に帰されてしまった。
そして今朝挨拶もそこそこに
「帰り、羽田まで急ぐので明日の予定今聞いていいですか?」
と極上の笑顔で言われた。
一体どんな脅しをかけた、いや、やり取りをしたのか知らないが、どうやら獲物の行き先を聞き出したらしい。
「はっ?明日も11時には仕事だぞ?」
どう考えても往復するのは厳しいだろうと言外に匂わすと、平然と言い返された。
「大丈夫ですよ。飛行機なら4時間半。帰りは夜中に向こうを出て電車で帰りますから」
何を言っているんだ、この男は!
「れ、蓮?いくらなんでもそれは……」
その続きは言わせてもらえなかった。
これ以上、魔王様の逆鱗に触れる勇気は持ち合わせていない。
俺は大人しく手帳を出した。




赤い夕日がやけに眩しく輝いて見える。
(俺の心と大違いだ……)
「早いけど夕飯にしよう」
スーパーで買ってきた惣菜を温めるだけの簡単な作業はすぐ終わった。
「はああぁ」
美味しそうに湯気を上げる食事を前に出てくるのはため息ばかり。帰宅してから何度目だろう。
頭を悩ましている俳優は今頃、遠い北の地で愛しの彼女に会えた頃だろうか。
一体奴がどんな行動に出るのか、想像もつかない。
偽紳士笑顔で迫り倒すならまだ可愛い方だ。プチっと切れて、いやもう切れているかもしれないが、強引に事に及ぼうとしないだろうか。
何しろあんな余裕のない蓮は初めてだ。
以前半ば冗談で、キスの一つでもおみまいしてやれと言ったが、今は冗談でなく本気でそれ以上のことをしそうで怖い。
(キョーコちゃん、どうか無事で!)
生贄に差し出した少女の安否が非常に気になって、今夜は眠れそうにない。
暗雲立ち込める北海道に思いを馳せながら、俺はもう一度でかいため息を吐いた。





<後書き>
書くのが楽しい社さん視点です。この話じゃなければ乙女が出せてなお楽しいのに。
一応イケナイ言葉は伏せ字にしてみました(笑)。社さんは言わないよ、こんな言葉。
残りは誰も待ってないだろう椹さん視点です。ほんとは同時にアップしたかったのですが、椹さんは以外と書きにくく、進みません。
でも蓮の脅すシーンが書きたい!頑張れ、私!


彼女の嘘と彼の苦悩 side K
2009年07月15日 (水) | 編集 |
ようやく完成しました。なんというか当初三人称で書いたのと違うものになってしまいました。
しかもエロは……ありません。詳しくは後書きにて。




「彼女の嘘と彼の苦悩 side K」




私、最上キョーコ。駆け出しのタレント17歳。
明日はいよいよ初めての北海道。一泊だけだけれど楽しみにしていた。
今日は明日のロケに向け、先に流すVTRの撮影が急遽行われることになった。学校を途中早退して急いでテレビ局に入る。
一時は立入禁止になっていた場所だけに感慨深い。
「急にごめんね、キョーコちゃん。忙しいのに」
いつものスタジオに入ると、最近よく声をかけて下さるADさんが真っ先に気付いてくれた。
「これ、今日の台本。北海道……楽しみだね」
「そうですね。私も北海道初めてなので楽しみです」
ひそかにウキウキしていた私は、弾んでいるのが自分だけじゃないのにホッとした。
ロケ場所は函館だ。有名な観光スポットがたくさんある。美味しい食べ物もあるだろうし。
「もしちょっとでも空きができたらさ、一緒に……」
二人で函館談議でひとしきり盛り上がる。彼が急に真剣な顔をした時、背後で怒鳴り声した。
「さっさと着替えてこないか!なんのために先に呼んだと思ってる!お前も!暇ならもっと仕事させるぞ!」
二人で顔を見合せ慌てて返事をし、急いで準備に入った。



慌ただしく撮影が終了して、帰り支度をしている時携帯が光っているのに気がついた。
どうやら着信があるようだ。
「……敦賀さん?何かしら……」
しかも昼から何度もかけて下さっている。
(もう夕方だけれど……今かけても迷惑じゃないかしら)
でも気になって、かけてみた。
「もしもし……あの…、何度もお電話いただいたのに出れなくてすみません」
『いいよ。気にしないでそれよりさ……』
敦賀さんは移動中だったようで、すぐに応答があった。
(なんだか安心する声よね……)
『明日、君…オフだよね?俺も午後からオフなんだけど、どうかな?俺の家に来ない?』
(え……?どうして?私対外的には確かにオフにしてるけど……なんで敦賀さんが知ってるの?)
『最近忙しくてあんまりまともに食事できてないんだよね……。また君にご飯を作って貰えると嬉しいなって……』
黙り込む私に、敦賀さんは更に言い募る。内容的にはかなり気になるんだけれど……。
「……あの、すみません……。お作りしたいのは山々なのですが、明日からその……ロケなので……」
『えっ……?』
困惑した声がした。
(そんなに私に食事作って欲しいのかしら?敦賀さんならお腹空いたって言えば、何か作ってくれる女の人がわんさかいると思うんだけど……)
『それ、ドラマか何か?それともバラエティー?』
聞いて欲しくない所を追及される。
(どうしよう?なんて言えばいいの?)
「いえ、その……バラエ……あの……その……えと…あ、ラブミー部の仕事で……」
どうにも上手く答えられない。
(だって明日は……)
『へぇ~。どこに行くの?泊まり?』
「その……北海道です。一泊だけですけど」
『北海道に一泊なんてキツイね。どんな仕事?』
「……っ!!いえ……その…全然、全く!楽しくない、敦賀さんにお聞かせするようなものでは……」
(いーやーっ!それ以上聞かないで!!無理!無理!!)
これ以上はぐらかすことなんてできない。敦賀さんが黙っている間に、仕事だからと挨拶もそこそこに電話を切った。
(こ、怖いよ~~)
しばらく私は携帯を思いきり握りしめていた。



「急に切って、敦賀さん怒ってるわよね。でも…しばらく会わないし。次に会ったらきっと忘れてるわね」
呑気にそう考え、夜荷物を詰め終わり寝ようとしていた。ちょうどその時、携帯の電源を切ったままにしていたことを思い出した。
留守電が一件入っている。
「よかった。敦賀さんじゃない」
『すまん、最上くん』
何気なく聞いた伝言は、椹さんの意味不明な謝罪だった。
「……?」
結局翌日飛行機に乗る前電話したが、椹さんは捕まらなかった。
私がその謝罪の意味を知るのは、その日の夕方のこととなる。




「あっつーい!!」
バラエティー番組「やっぱ気まぐれロック」の収録で訪れた函館は、東京よりは涼しかった。しかし北海道とはいえ、着ぐるみで動き回ると暑い。特にこの「坊」は人?一倍アグレッシブだ。動く量も質も半端じゃない。
撮影も一段落し、ADさんが背後から扇いでくれたけれど汗は止まらない。
「少し脱いできてもいいですか?」
街中で着ぐるみを脱げない私は、ロケバスに戻って汗を拭きたかった。
「いいよ。今日はあとブリッジのカットだけだから」
「ありがとうございます」
早く着替えたくていそいそ駐車場に向かっていると、長身の男性に行手を阻まれた。
「……?」
不審に思い顔を上げ、そこで私は悲鳴を上げそうになった。
そこにありえない人のありえない顔が!!
「つっ、つ、つ、つつつ……」
(いーやー!!なんで!?なんで!?)
パニックを起こし、上手く声が出ない。
「やあ。こんなとこで逢うなんて、奇遇だね」
にっこり笑顔の彼が力いっぱい私を掴んでズルズルと引っ張って行く。
駐車場に着くと、ロケバスにいたスタッフが気付いてドアを開けてくれた。
「彼女、ちょっと気分悪いみたいだから先に帰ってもいい?」
きっと笑顔なのだろう。女性スタッフが真っ赤になってブンブンと首を振る。
「ありがとう」
半分失神しそうな彼女は、慌てて他のスタッフに伝えに行った。
車内は私と彼、敦賀さんの二人きり。
シーンと静まり返っている。
沈黙が怖い。
あれほど暑かった躯が今は震えるぐらい冷え切っていた。
(どうして敦賀さんがここにいるの?なんで?坊に相談?)
どう考えても違うわ。
黙っている敦賀さんは、じっと私を見ている。偽紳士笑顔は消え、すごく冷たい瞳をしている。
坊の着ぐるみがガタガタと震えていた。体中を恐怖が支配する。
どうしてこんなに恐れているのか、何に怯えているのか、自分でもわからない。
「脱がないの?暑いんでしょう?ねえ、最上さん」
決定的だった。
坊=最上キョーコ。
昨日の椹さんの留守電はこのことだったのだ。
私は諦めて頭を取った。
「着替えてホテルに帰ろうか」
嘘くさい笑顔の紳士の囁き。逆らうことなんてできない。




「あの鶏が君だったなんてね」
知らなかったよ、と部屋に着くなり敦賀さんは言った。
俯く私の顔を、指で無理矢理持ち上げる。
「ねえ、どうして隠してたの?」
キュラララと光を振り撒きながら笑顔が尋問する。
(怖い!この笑顔が怖い!)
「あの…その……」
「ん?」
「敦賀さんこそどうして……」
「昨日、君の態度がおかしかったからね。気になって椹さんに聞いたんだよ。それで今日の仕事が終わってからすぐこっちに来たんだ」
敦賀さんは相変わらず笑顔だ。
「ねえ、隠していたのはどうして?言ってごらん?」
怒ったりしないから、なんて言っておられますけど!
(十分お怒りでしょう!いやああぁぁ!!怨キョレーダーが興奮してるー!)
キュラキュラ笑顔の魔王様がどんどん迫ってくる。
「ねえ、どうして?」
トンと足に何か当たった。
いつの間にかベッドサイドにまで追い詰められている。
ベッドに座ることを余儀なくされ、そのままのしかかられるような体勢に持ち込まれそうになった。手を突いて慌てて逃げるもすぐに行き止まりになる。
「もう逃げられないよ」
にーっこり、と極上の笑顔。
(ひーっ!か、確実に喰われる!)
まさに狼に狙われたウサギのような心境だ。プルプル震えた憐れな小さな生贄の私。
それども諦め切れず、ズルズルと足だけでも体に近付けた。
「どうして黙っているの?」
綺麗な瞳に怯えた私が映っている。
「ん?」
最上級のキュラ笑顔にこちらの恐怖もマックスに高まって、自然と涙が溢れた。
(怖い、怖いよー!!)
軽井沢の時とはまた違う恐怖感。
「答えたくなるようにしてあげようか?」
怪しい瞳で私を見つめ、薄く笑みを浮かべた唇が迫ってくる。
軽く押し当てられたものは案外柔らかかった。
「敦賀さん……?」
これはキスなの?
戸惑う私の眼前に再び端正な顔が近付いてくる。今度はすぐには放れず、舌で唇を舐められた。
長いくちづけに息が出来なくなる。空気を求めて開いた隙に、ぬるりと舌が入り込んできた。
「んん……っ、……ふっ……ん……」
まるで蛇のように絡み付いてくる舌から逃れようとしても、敦賀さんは執拗に追いかけてくる。
息苦しさに顔を背けようとしても、顎を掴まれていて動くことも出来ない。遂には搦め捕られた舌を強く吸われた。
そうして何度も吸われたり、口蓋や歯茎を舐められたりしてある間に、なんだか頭がぼうっとしてきた。
縦横無尽にうごめく舌に翻弄され、呼吸困難に陥ってしまう。
ぐったりした私を、敦賀さんがようやく解放した。
「はあ、はあ……はあ……」
「言う気になった?」
クスリと笑った顔に躯が震える。
ゾクリと寒気が走ったのは恐怖にか、それとも……?
長い長い北海道の夜が更けていった。




翌日、なんとか残りの撮影を済ませた私は、帰りの飛行機の中で困惑していた。

『俺が好きなのは君だよ。愛してるんだ』

敦賀さんの思いがけない告白。

『次に会ったら逃がさないよ。覚悟して?』

甘く囁かれた言葉が頭の中を何度も駆け巡る。
そして首筋と躯のあちこちに遺る赤い痣。
この痕が消えるまでに答えは出るだろうか。
まだ怖い。
(でも……)




最上キョーコ、17歳。
甘くほろ酔い体験をした北海道。
私はきっと忘れない。




<後書き>
キョーコ視点。いかがでしたでしょうか。最後、夜の帝王が暴走し過ぎてこりゃ注意書きがいるわと全削除を通達されてしまいました(キスぐらいはノーカウントで)。
つーか蓮より明らかにキョーコの方が苦悩してますな。
しかしコメディーにしたいのですが、キョーコさんは悩み出すとシリアスになっちゃう。男がヘタレて悩む分にはいいんだけどな。
なので少しギャグテイストを入れました。シリアス&エロい北海道の夜(または夜の帝王暴走編)はどうしましよう。
本番はしてないから、たいしてエロくないっちゃあエロくないんですが。
そちらをアップするかいなかは皆様の反応次第でしょうか。ドキドキ。



彼女の嘘と彼の苦悩 side R
2009年05月03日 (日) | 編集 |
「彼女の嘘と彼の苦悩 side R」



芸名敦賀蓮、21歳。
俺は今、携帯を前に葛藤している。
「ラブミー部に依頼なんて…いや、ダメだ。社長に後で絶対からかわれる。でも個人的にっていってもなあ~。はあ……」
こうして、もう30分も悶々としていた。ドラマ撮影の間の貴重な昼休みを、昼食も食べずに。そんな時間の使い方をしていたら怒られるのは目に見えている。
それでも……。
俺にとって、今はそれどころではない。
何しろもう明日のことなのだ。今連絡しなければ間に合わないかもしれない。
でもどうしたらいい……?
自分ではこの情況を打破することができず、こうしていつまでもうじうじと携帯を開け閉めしていた。
気が付けば撮影再開まで残り10分。
もう今しかない。
彼女もきっと今はお昼だ。今日は学校だけだって言ってたし。
窓際で短縮ダイヤルを回し、すぐに聞こえてきたコール音に耳を傾ける。
プルルルル、プルルルル、プルルルル……。
中々繋がらない。
(まだ持ちなれないのかな?……それにしても遅い……)
10回ほどすると留守番電話に切り替わった。
「ただ今電話に出ることができま……」
味気ないアナウンスを聞くために電話したんじゃない。彼女の声でなければ……。
仕方なく携帯を閉じたが、まだ諦め切れずそれを握りしめる。着信を見てかけてきてくれないだろうか……甘い期待を込めてみた。




結局昼の休憩中は連絡先が取れず、いつもはしないが、ちょっとしたシーンの間の待ち時間もずっと、彼女にコールをかけていた。
その甲斐あって、夕方の移動の最中彼女から電話が掛かってきた。
『もしもし……あの…、何度もお電話いただいたのに出れなくてすみません』
心底申し訳なさそうな彼女の声に自然と顔が綻ぶ。隣で社さんがニヤニヤしているのがわかるがやめられない。
「いいよ。気にしないでそれよりさ……」
(思いきって言え、俺!さりげなく…さりげなく…)
「明日、君…オフだよね?俺も午後からオフなんだけど、どうかな?俺の家に来ない?」
『…………』
しばらくの沈黙に少し焦る。
(やっぱり恋人でもないのにオフに家に誘うのはまずかったかな?)
「最近忙しくてあんまりまともに食事できてないんだよね……。また君にご飯を作って貰えると嬉しいなって……」
卑怯だけど、俺の食生活を人一倍気にしてくれている彼女には有効だろう。
『……あの、すみません……。お作りしたいのは山々なのですが、明日からその……ロケなので……』
「えっ……?」
思わず社さんを見た。彼女のスケジュールを調べて貰っていたから。
社さんは慌てて手帳を取り出して見てくれる。
しかし、
「明日あさっては空白だ。ロケなんて聞いてないけど……急な仕事かなあ?」
「それ、ドラマか何か?それともバラエティー?」
『いえ、その……バラエ……あの……その……えと…あ、ラブミー部の仕事で……』
どうにも歯切れが悪い。(何か隠してる……)
「へぇ~。どこに行くの?泊まり?」
『その……北海道です。一泊だけですけど』
「北海道に一泊なんてキツイね。どんな仕事?」
『……っ!!いえ……その…全然、全く!楽しくない、敦賀さんにお聞かせするようなものでは……』
(ますますもって怪しい……まさかあいつとじゃないだろうな……)
無言でいると、怒りの波動を電話越しに感じたのか、彼女は仕事だからと慌てて電話を切ってしまった。
(まさかロケは嘘……?)
車内の空気が少しひんやりしている。
社さんがびくびくしながら俺を見ていた。
「社さん……椹さんに詳しく聞いていただけませんか?」
「は、はいいぃっ!」
何をそんなに怯えているのだろう。
手を震わせながら手袋をし、社さんが電話をかけてくれた。
「あ、椹さん、実は聞きたいことが……」
真っ青になりながら社さんは、椹さんに明日のキョーコちゃんの仕事内容を聞いてくれている。微かだが椹さんの声も漏れ聞きことができた。
けれど……。
なぜだか椹さんの歯切れまで悪い。
ラブミー部の仕事なら隠す必要なんてないはずだ……。
(何を……何を隠してるんだ?)
本当はロケではないのか?
気になって、松島主任にも聞いてみた。
『ああ、バラエティーの仕事だって聞いてるけど?』
(嘘……だったんだ……)
バラエティーならそう言えばいい。なのにどうして……。
ぐるぐると不安が駆け巡る。
隠す理由がわからない。
(まさか……でも……)






<後書き>
当初、三人称だったのを蓮視点で一人称にしてみました。全部書き直すのは結構大変でした。
で、蓮サイドのみなので敢えてここで切りました。
続きはキョーコ視点で。まあなんで嘘というか隠してるのかはバレバレですが。
タイトルの割りに蓮はあんまり苦悩してないなあ。


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