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「Adoption difficulties」
2015年03月15日 (日) | 編集 |
※注意:本誌最新話、act221まで未読の方はネタバレなので読まないことをオススメします。



「Adoption difficulties」





『金輪際連絡してこないように。早く誰かに養子縁組して貰うこと』

パスポートの同意書と共に添えられていた手紙には、短く冷たい言葉でそう書かれていた。

実にあの人らしい。

私にはもうなんの興味もないのだ。いやそもそも最初からなかった。

そんなこと、嫌というほどわかっていたはずなのに。少し期待した自分が愚かしい。

何年も会っていない娘を、勝手に出ていった娘を、行方知れずの娘を、普通の母親のように心配してくれる気持ちなんて、あの人に求めるだけ無駄だったのだ。

もう一切私に関わりたくない。そういうことだ。

そしてついこの間あの人がテレビで言っていたあの言葉――。

『私に子供はおりません』

あの人が私の存在を疎ましいと思ってるなんてこと、子供の頃からずっとわかっていたけれど。

ついに存在まで否定されてしまった……。

あの人に関することでもう傷ついたりしない。

そう思っていたのに……。

「ごめんね、コーン。また貴方に頼って」

がま口から出した小さな石を握りしめ、私は眠ることにした。

明日は元気になるから――。




グアムから帰ってからしばらくたったころ、私は社長に呼び出された。

私の恋心の話だろうか。それともまた別のミッションの話?

なんとかその日の仕事を終え、少しソワソワと落ち着かない気分のまま社長室に向かった。するとそこには何故かだるま屋の大将と女将さんが立っていた。

「大将!?女将さん!?どうしてここに?」

朝は何もおっしゃっていなかった。前日に聞いた私と違い急な呼び出しだったのだろうか。

「ちょっと前に話があるからと社長さんが連絡を下さっててね。昨日ようやく時間が取れたからこちらに来て下さいって連絡があって。本当はお店でしたかったらしいんだけど、社長さんも何かとお忙しいらしいからね」

話って何?一体何の話?

前からって。

それにどうして私に隠してたの?

女将さんの言葉にパニックを起こしていると、社長がマリアちゃんを連れて奥から現れた。

「お待たせして申し訳ない。最上くんにはもう?」

「いえ、まだ……」

訳もわからないまま呆然としている私を放置して、立ったまま女将さんが社長と話している。その隣で無口な大将はいつも通り無愛想な表情で黙って社長を見ていた。

そう言えば社長、今日はいつもの派手な格好と違って普通のスーツだわ。

そんなどうでもいいことに気が付いた。そんなことでも考えないと、言い知れぬ不安に押し潰されてしまいそうだったから。

「お姉様、心配しなくても大丈夫よ」

社長の隣にいたマリアちゃんがちょこちょこと私に近付くと、にっこりと笑って手を握ってくれる。温かいマリアちゃんの手にはっと我に返った。

私、そんな不安そうな顔していたの?顔には出していないつもりだったのに……女優失格ね。

マリアちゃんのお陰で少し落ち着いた。それでも不安は拭えない。この場から逃れたい。まだ何も聞いていないのに、どうして逃げ出したいって思うの?

話が一段落したのか、座るよう促される。ソファに座ると、向かいに座った社長が一枚の紙を示した。そこには見覚えのある字が書かれている。

「…………っ!」

「もちろん最上くんはこの字に見覚えがあるね」

見覚えも何も、あの手紙で久しぶりに見たばかりだ。あの人のもので間違いない。

「どうしてこれを…………」

「君の親権のことは実はパスポートを申請させる時から考えていた。君がまさか自分から母親に連絡を取るとは思っていなかったから、その時は言い出せなかったが……。先日正式に君をタレントとして所属させるために母親と連絡を取ったんだが、その時の返事がこれだ」

『私に子供はおりません。関わりのない者に一切興味はありませんので勝手になさって下さい。今後このような連絡が来ないよう早急に対応なさって下さいますように』

私への手紙より長いなとまるで他人事のように思っていると、隣の女将さんの手がわなわなと震えているのに気が付いた。女将さんが静かに怒っている。

「女将さん?」

私が声をかけると女将さんがはっとして私を見てにこりと笑った。

「それでだ。今後の活動をふまえても養子縁組は必要だ思う」

社長の言いたいことはよくわかる。私はまだ未成年で、成人するまでにはまだ数年かかる。これから芸能人として本格的に活動するには親の同意は必須だ。親の承諾が必要なこともたくさんある。

それをあの人から逐一承諾してもらう訳にはいかない。しかもご丁寧なことに私にも社長にもこんな手紙まで来ているのだ。もう一切関わりを持ちたくないという強い意志を感じる。

今までだってあの人の承諾が必要なことはあった。自分で書いたこともある。しかし正式にタレントとして活動するとなったらバレたらスキャンダルになりかねない種は摘んでおかなければならない。

「もちろん君さえよければだが……このまま母親の元にいる意味はないだろう……?」

社長の目が私を捕らえる。その真剣な眼差しに、手紙が着てからずっと燻っていた想いが溢れ出だ。

「はい……。私に来た手紙にも、養子縁組しろって書いてあったんです。正直やっぱりなって思ってました。ずっと母親が私のこと疎ましく思ってるのは知ってましたから……。だけど…だけど……言い出せなくて。こんな…こんな母親にも見捨てらるた私を……私なんかを養子にしてくれる人なんて……っ」

いないと言う前に大将さんが私の頬を叩いた。

「私なんかと言うな!母親一人ぐらいなんだ!お前にはお前を好いてくれるやつがたくさんいるだろう」

「そうよ。キョーコちゃんが大好きな人がたくさんいるわ。もちろん養子にしたいってくらい大好きな人がね」

「大将……女将さん…………」

女将さんが叩かれて赤くなった頬をすっと優しく撫でてくれる。

「キョーコちゃんさえよければ私達の娘になってくれないかい?」

「えっ……………?」

「先に言われてしまったが、私も君を娘にしたいと思っているぞ。何よりマリアも喜ぶ」

「ええ。お姉様が私のおば様になるのよ!素敵だわ」

「………………へっ?」

あまりのことに頭がついていかない。大将や女将さんのこともだけど社長が私の父親に?マリアちゃんが私の姪?

「以前から君を養子にとは考えていた。元々15歳以上なら普通養子縁組が認められている。この手紙で母親との関係はよくわかったからな。どうだ?パパでもダディと呼んでくれても構わないぞ、娘よ!」

真剣だった表情から一転、ニヤリと笑って社長は飛び込んでこいと言わんばかりに両腕を広げた。

「こ、困ります!!社長を父親だなんて………」

「じゃあ私達の娘で決まりだね」

「へっ……?お、女将さん……?」

「私達も前からキョーコちゃんを娘にしたいって思っていたんだよ。子供もいないからね。まあ娘みたいにはずっと思っていたんだけど。そんな時社長さんからこの話を聞いてね。この機会に調度いいと思ったんだよ。それに早いとこキョーコちゃんを娘にしないと他にも立候補されて取られたら嫌だからね」

フフフ、と女将さんがいたずらっ子のように笑う。

「そうだぞ。実はこの間クーからも申し出があったんだがな。君を娘にしたいと」

「えっ!?」

「それはいつか叶うだろうから待てって言っておいた。待ちきれないならあいつに発破をかけろともな」

「は?」

ニヤリと笑う社長の言葉は意味不明だった。

「まあヘタレなあいつの話は置いといて、最上くんには類稀なる才能がある。それを育ててみたいってのがたくさんいるのは本当だ。エルトラも興味津々だったからな。もしこの話をすれば絶対飛び付いてくるぞ」

社長の言葉に嘘はない。養子云々は別にしても才能があるという言葉は嬉しかった。正直自分に才能なんてある訳ないって思う。けど努力すれば手に入れられるんじゃないかなんて思ってしまう。

天から賜った、神の寵児であるあの人のようには到底ならないかもしれない。けどそこに少しでも近付けるようになりたい。

そのためにはやっぱり。

私は目を閉じて決心した。

「大将、女将さん。ふつつかものですが、私を娘にして下さい。よろしくお願いします」

目を開いて床に正座し、頭を下げて言った。

「キョーコちゃん、ありがとうね……」

大将は無言で頷き、女将さんは泣きながらそう言って私の手を取り抱き締めてくれた。

「女将さん……ありがとうございます」

そう言いながら泣いてしまった私に、大将が手拭いを出してくれる。

「フラれてしまったか……。まあ家庭裁判所の手続きは俺に任せておけ」

「社長、すみません。ありがとうございます」

「社長さん、ふつつかものですが、うちの娘をこれからもよろしくお願いします」

大将がそう言って深く頭を下げる。その隣で女将さんも静かに頭を下げた。

「大将……女将さん…………」

「これからは父さんと呼べ」

「そんな急に……」

「そうだよ、お前さん。急にはこっちも心の準備が出来てないよ」

「“父さん母さん”だ!“パパママ”なんてもんは認めん!」

仏頂面をしながらも大将の耳は少し赤くなっていた。

「はい、お父さん、お母さん」

私は溢れ出た涙を手拭いで拭き、泣きそうになりながら笑顔で言った。




実の母親とは縁がなかったけれど私には大好きな人達がいる。私を大切に思ってくれる両親がいる。血は繋がっていないけれど深い愛情をたくさん与えてくれる。

私は今心の底から幸せだと思う。

だから今日も頑張れる。私が大好きな人達のために。私を愛してくれる人達のために。そしてそんな人達が愛してくれる私のために。

新生キョーコ、今日も一生懸命頑張ります!





<後書き>
随分前からキョーコちゃんの親権についてネタを考えていました。グアムの前にちらっとヤバイのが投下され、プロットを考えているうちにあれよあれよとキョーコママとの話になったので辻褄を合わせるのが大変でした。これ以上展開が進む前に書き上げられてよかったー。




オマケ。



『なあぁにぃー!キョーコを養子にするだとー!!ズルいぞ、ボス!そんな話があるならわたしに真っ先に持ってきてくれていいだろうが!』

「お前うちの大事なホープを奪う気か!」

『けどボス!わたしはあの子にわたしのような父なら欲しかったと言われているし…それにすでに親子の縁を結んでいるんだ!』

「だからお前はすでに父親としての地位を確立してるだろうが」

『それはまあそうだが』

「それにいつかは本当に娘になるんだ。まあそれもあのヘタレ次第だが……。そんなに早く娘にしたいんだったらあいつに発破をかければいいだろうが!」

『それが出来たら苦労はしない』

「全くだな……」

『はあ……でもクオンとキョーコ、兄妹っていう関係も中々楽しそうなんだけどな。兄妹ケンカとかしてみろ。きっと天使たちがじゃれてるみたいに可愛いだろうなあ』

「そんなおかしな想像するな。勝手に兄妹にしてみろ、この間の非じゃないくらい怒り狂うぞ、きっと」

『ああ…まあ……想像できるな。恐ろしい』

「まあ法律上は兄妹でも結婚出来ない訳じゃないが心情的に問題あるだろう?素直に諦めろ」

『わかった……ボス、諦めるよ。でもボス、わたしの大事な娘だ。ちゃんとした両親に預けてくれよ』

「おい!俺はちゃんとしてねえってことかよ!しかも今預けてって言ったか、お前はどんだけ図々しいんだ!」

『ボスが父親は無理だろう?キョーコがボスを父さんと呼ぶなんて想像も出来ない』

「しかしうちにはマリアがいるからな」

『何にせよ、あの子が幸せになってくれるならいいさ何でもいいさ。そして将来的にクオンの嫁になってくれたらそれでいい』

「まあそうなるようまたあのヘタレをせっつきに来い」

ローリィは笑いながらそう言って電話を切った。国際電話の向こうの相手はきっと今頃愛する妻に内容を報告していることだろう。

それはキョーコが生まれ変わる少し前の夜のことだった。


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