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「願い side K」
2015年06月09日 (火) | 編集 |
「願い side K」





まだセツカでいたい。セツカとしてあの人の傍にいたい。

『TRAGIC MARKER』の撮影が終わりに近付くにつれ、キョーコはその思いを一層強くしていった。

セツカとしてカインの傍にいる間は、極度のブラコンという設定を言い訳に四六時中べたべたいちゃついていられる上に、独占欲を全開に他の女を牽制できる。

『この人はあたしのモノよ』

なんてセリフ、最上キョーコのままでは絶対に言えない。言える訳もない。

堂々と自分の所有権を主張できるセツカが、キョーコは羨ましかった。

そしてカインからも『可愛い』『愛しい』『大切だ』と何度も何度も、時には言葉で、時には態度で示してもらえた。たとえカインからでもキョーコには充分嬉しかった。

抱き締められ、耳元で囁かれたあの時も、セツカでいられないほど堪らなく嬉しかった。

今だけはあの人は私のもの。私もあの人のもの。

けれどそれももうすぐ終わる。

キョーコにはそれが酷く悲しく辛いことだった。だからセツカである時は幸せで、これまで以上に全力でセツカを演じていた。いや、演じていたつもりだった。

その変化に気付いたのはまさかの村雨だった。

「最近元気ないけど体調悪いの?暑さにやられた?」

カインが撮影中、隙を見て村雨がセツカに話しかけてきた。無視しようと思ったが、本気で心配している様子だったのでキョーコは言葉少なく「大丈夫」と答えた。

「ならいいけど……あ、もしや兄貴とケンカした?」

「は?そんな訳ないでしょ」

あんた、バカなの?といつも通りに冷たく睨みつけると、村雨はまだ何か言いたそうにしていたが、監督に呼ばれ、撮影に戻っていった。

「なんなのよ、まったく!」

(セツカが元気ない訳ないじゃない!今はこの上なくセツカを楽しんでるのに!)

キョーコは村雨の言葉に内心憤慨していた。

けれど村雨の意見は正しかったのだ。

キョーコは気付いていなかったが、実はキョーコは俯いて思い詰めた顔をしていたり、辛そうに何度も息を吐いていたのだ。それもカインが撮影中で、かなり離れた所にいる時に限って。

カインの目がない所では無意識にキョーコの気持ちが表面化していることに、キョーコは気付かなかった。




そんな中、グアムでの最終撮影に入ることになった。

撮影は順調に進んだが、そのことが余計にキョーコを暗鬱な気分にさせた。撮影が進まなければセツカとして長く傍にいられるのに。撮影なんて出来なければいいのに。

そんなことを考えてしまう自分が、キョーコは自分勝手で醜くて、嫌で嫌で仕方なかった。

キョーコの願いが通じたのか、グアムでの撮影の終盤、天候の関係で撮影が中止になってしまった。

『セツ、出掛けるぞ』

ホテルで暇をもて余し、ぼんやりしていたセツカを、カインが引っ張り上げた。

『えっ!?この中を?外凄い雨よ?』

『タクシーを使えばいいだろう?』

『でも……』

渋るセツカを無視し、カインは強引に連れ出した。ホテルの前に停まっていたタクシーに乗り込み、行き先を告げる。セツカが逃げないように手を握ったままで。

『グアムは初めてだったんだろう?ずっと撮影でろくに観光できなかったからな。俺がお前を連れて行きたいんだ。まあ、この雨じゃ行けるとこは限られているんだが……』

『だから別にどこにも行かなくてもいいったら!あたしは兄さんさえいればいいの!』

(敦賀さんの傍にいられるだけでいい。それだけで嬉しいから)

外は激しい雨だ。普段は旅行者で賑わっている通りには、今日は人っ子一人いない。車やバスは何台か通るが、歩いている人は見当たらない。それだけで南国であるはずなのに、なぜかこの天気のように暗く感じてしまう。

そんなことを考えながら外を眺めていると、タクシーが停まった。着いたのは地元のショッピングモールのような所だった。ここも普段は賑わっているのだろうが、今日は閑散としている。

『ずっと俺に付き合わせていたから土産を買う暇もなかっただろう?好きなだけ見ていい。今日は俺が付き合ってやる』

『もう!兄さんに付き合うのは当たり前なのに……。それにお土産なんて別に必要ないでしょ!』

そう怒ってみたが、南国の色鮮やかな雑貨や、日本では見たことのない変わった食品が並べられている店内は、おもちゃ箱の中のようで中々楽しい。セツカはローテーションながらも目をキラキラさせてそれらを見て回った。

一通り商品を手に取り、どれがいいか厳選する。そしてセツカはだるま屋夫妻と奏江用、千織用にも土産を買った。極秘ミッションだが、グアムに行くことは知らせていたからだ。それからカインが少し離れている間に自分用とコーン用に小物を選んだ。

会計をしていると、カインが慌ててやってきてカードを出して支払いをしてしまう。

『もう!これぐらい自分で出すのに!』

『俺がお前に買ってやりたかったんだ』

『でもこれはお土産なのに……』

だから自分で出したかったのに……。

『いつも可愛い妹が世話になっているんだ。俺からのささやかな礼だ』

そう言ってしまわれると引き下がるしかない。セツカはプンっと照れ隠しに怒りながらも、ありがと、と言ってカインの腕に巻き付いた。そこで初めて気付いた。

『兄さん、それ、何持ってるの?』

『ああ。俺も土産だ』

『ふ~ん』

(社さんへのかしら?だったら一瞬に選びたかったのに)

キョーコはそう思いつつも、片時も離れたくないという自分の本心に気付き悲しくなった。どれだけ独占したいのだろう。ほんとに恋とは愚かだ。

カインの腕に甘えるように摺り寄ると、カインは微笑んで頭を撫でてくれた。セツカだけに向けられるカインの優しく甘い表情と仕草。それだけで泣きそうになる。

『セツ、次に行くぞ』

『次?どこに行くの?』

『行けばわかる』

待たせていたタクシーに乗り、二人は雨の中次の場所を目指した。二人を乗せたタクシーは市街からどんどん離れていき、植物しかない道を進む。そして鐘らしき物が見えると、そこでタクシーが停まった。降りると海岸が見えた。恋人岬なる所らしい。晴れた日だとさぞ見晴らしがよいだろうそこは、バス停とお店、入場券やお土産を買う小さな建物しかなかった。

カインに案内され、セツカはゆっくりと展望台へ上がる。降り続く雨と激しい風に、普段はカップルでいっぱいだそうなそこには二人だけ。

風に飛ばされそうになると、カインがぐいっと引き寄せ胸の中に抱き込んでくれた。ドキドキとセツカ、いや、キョーコの胸が高鳴る。

キョーコは、かすかに見える広い海を見ながら、いつか本当の恋人同士になったら、二人で来られるといいなと秘かに願った。

(有り得ないけど……)

雨がまた一段と強く降りだした。

『さすがにこの雨はキツイな。セツ、タクシーに戻るぞ』

『うん……』

一向に止まない雨の中を、二人は帰途に着く。タクシーを使ったとはいえ、恋人岬に行ったせいでかなり濡れてしまった。

『セツ、風をひくから、先にシャワーを使え』

『嫌よ。兄さんこそ、撮影があるんだから先に入って』

『お前が風邪をひいたら、それこそ心配で撮影に行けない。それとも一緒に入るか?』

『い、いい!じゃあ、に、兄さんを心配させないために先に入るわね!』

いやらしくニヤリと笑われ、セツカは慌てて浴室に向かった。

(し、心臓に悪い~~。……はっ!でも超絶ブラコン設定のセツカなら喜んで一緒に入ったかも~~。それに今度こそ敦賀さんのボディを拝めるチャンスが~~)

などと悶々と悩みながらキョーコはシャワーを浴びた。

そしてシャワーから出ると、上半身裸のカインがセツカを背後から抱き締めた。

『に、兄さん!?なに!?どうしたの?』

慌てて尋ねたセツカの首に、カインは何かを着けた。

『??????』

『雨の中付き合わせた礼だ。受け取れ』

それは小振りのペンダントだった。薄い水色の硝子の中に星の砂や小さな石がいくつか入っている。青や緑、ピンクの石が光によって微妙に色を変えて輝く。液体も入っているせいか、揺れる度ふわふわと宙に漂っている。形もハートで可愛らしい。

『兄さんに付き合うのは当たり前よ!それに楽しかったからお礼なんていらないのに……でも…ありがとう。大事にする』

セツカが恥じらいながら言うと、カインは優しげに微笑んだ。

(敦賀さん……)

『今日はほんとにありがと。スッゴく楽しかったわ』

セツカの中のキョーコは泣きそうだった。それを誤魔化すように早口で礼を言うと、カインがまた笑って頭を優しく撫でてくれた。

この人はどうしてこんなに優しいんだろう。どうしてこんなに好きにさせるんだろう。

(セツカだから……?)

セツカなら、本当のセツカならよかった。

セツカになりたい。心から本物のセツカに。

セツカになってずっとこの人の傍にいたい。この人を独占したい。この人に愛し愛されたい。

キョーコはペンダントを握りしめ願った。




次の日、天候も回復し、郊外での撮影が開始された。そんな中事故は起こった。

前日の雨でぬかるんでいた地面に足をとられ、子供が転びそうになり、勢いあまってカメラを繋いでいた機材にぶつかった。ぐらりと揺らいだ機材が重いカメラを支えきれず、今にも子供に倒れそうになっている。

近くで見ていたセツカがそれに逸早く気付いた。セツカはとっさに子供を突き飛ばす。けれどセツカ自身が逃げる時間はなかった。

ドバンという轟音とともに百キロ近くある機材がカメラとともにが倒れ、セツカはその下敷きになってしまった。

あまりのその場にいた全員が一誠にそちらに目を向けた。もちろんカインも。そして下敷きになっているセツカを視界に入れた瞬間、突き動かされたように駆け出した。

カインの目にはただ倒れて動かないセツカしか入っていない。傍にいたスタッフを押し退け、セツカに近付いた。

「最上さんっ!!!」

割れたカメラに構うことなく、カインはセツカの上から機材を退かせた。セツカを起こそうとすると、ぬるりと手に濡れた感触がした。見ると、手が真っ赤に染まっている。滴り落ちた血がセツカの頬を濡らしたが、セツカはピクリとも動かない。、セツカ、いや、キョーコの頭からは大量の血が流れ出していた。

「最上さん!!最上さん!!しっかりして!!!」

カインであることも構わず、蓮が必死に叫ぶ。けれどキョーコの反応は返ってこない。

「そんなっ……!嘘だろっ!!キョーコちゃん!!キョーコ!!!」

ざわつく周囲の喧騒も蓮の耳には入ってこない。キョーコの頭を膝に上げ、抱き締めた。そしてただひたすら呼び続ける。そんな蓮の肩を叩き、この映画の監督である近衛がそっと囁いた。

「今911に連絡したから。大丈夫。救急車がすぐに来るよ。だから、落ちついて、敦賀くん」

「監督……」

今にも泣きそうな顔で蓮は監督を見た。

近衛は蓮を落ち着かせるようにふわりと笑い、キョーコの様子を窺った。出血箇所が頭だから血の量は多いが息はしているようだ。頭を打っているのが気になるところだが……。とりあえず頭の血を止めようと止血できる物をスタッフに持ってこさせ、救急車の到着を蓮の隣で待つ。

近衛の冷静な対応に、蓮も少し落ち着きを取り戻した。けれどキョーコから離れることはせず、力のないキョーコの手をずっと握り締めている。まるで温かいキョーコの手を感じて、生きているのを確かめているかのように。それとも自分の力をキョーコに与えようとしているのか。

幸い救急車はすぐに到着した。救急車の中ですぐさま応急措置が開始されたが、キョーコの反応は相変わらずない。そしてキョーコは、目を覚ますことなく病院に搬送された。




次にキョーコが目を覚ました時、キョーコはキョーコではなかった。

「カイン兄さんはどこ?」

慌てて病院に駆けつけたテンにセツカは訊ねた。

「キョーコちゃん、そんな状態でセツカにならなくてもいいのよ」

テンが気遣いそう声をかけたが、キョーコは不審そうな表情を浮かべ、素のキョーコではない顔で彼女を睥睨した。

「キョーコ?誰、それ?」

「キョーコちゃん?何を言ってるの?冗談よね?」


「だから誰なの、それ?それよりあたし早く兄さんに会いたいんだけど」

テンはおおよそ普段のキョーコらしくない言動に嫌な予感がした。医者を呼ぶ前に恐る恐る訊ねる。

「あなたセツカちゃんなの?」

「そうに決まってるじゃない。何言ってるの?」

小馬鹿にしたようにうっすら笑いを浮かべるキョーコ――ではなくセツカに、テンは愕然とし、それ以上言葉を発することが出来なかった。




<後書き>
ずっと書きたかった記憶喪失ネタ。というかなんちゃって解離性同一性障害。原作でグアムでのカイセツがあんまりなかったのでいちゃラブ補給のため書いてみました(まあクオン×キョーコは今までにないくらいたくさんありましたけどね)。恋人岬……二回行ったけど正直あんまオススメしません。さてさて、後半は蓮視点。いつ書けるやら……。
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コメント
この記事へのコメント
カイセツでデート
素敵なカイセツをまたまたありがとうございます。グアムでのカイセツいちゃいちゃがなかったので私も残念だったんです。
補給ありがとうございました。早くキョーコちゃんを戻してあげてください。グアム恋人岬以外はいかがでしたか?
2015/06/11(木) 21:53:42 | URL | 蒼天 #-[ 編集]
早く戻して上げて下さい。
タイトルから切なそうな話だとは思ったんですが、やっぱり切なかったです。そして痛々しいというか辛いので早く元に戻して上げて下さい。続きは蓮サイドですかね。キョーコちゃんの名を叫ぶ蓮に涙。続き待ってます。

タイトル…一瞬本誌の続き的な話かと思いました。本誌の妄想も待ってます。
2015/06/14(日) 18:49:10 | URL | 紅揚羽 #-[ 編集]
キョーコたんが!
キョーコたんが!キョーコたんが大変なことになっているじゃありませんか!
蓮さんがかわいそうです!

グアム懐かしいですね。そんなに前じゃないのにずいぶん前な気がします。クオン×キョーコで萌えはしましたが、カイセツは確かに少なかったですよね!

セツカになりたいキョーコたんの乙女心がよくわかります。
2015/06/18(木) 21:41:15 | URL | ひばりヶ丘花屋敷 #-[ 編集]
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