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「マッチ売りの少女(後編)」
2015年06月10日 (水) | 編集 |
「マッチ売りの少女(後編)」





「あ、あなたは……!」

「その服で少しは売れたかね?」

そう言ってニヤリと笑ったのは、朝最初に出会い、ピンクのつなぎをくれた、親切で奇抜な格好をした紳士でした。

「あ、はい……お陰様でとても目立ちました」

嘘のつけない少女は、売れたとは言えず言葉を濁して答えました。しかし紳士は少女が口にしなかった言葉なんてお見通しだったのです。

「ふむ……やはり目立っただけで売れはしなかったか。残念だ」

そう言いつつも紳士はあまり気にしていないようでした。むしろ少女の方が申し訳なくていたたまれなくなってしまいます。

「す、すみません。せっかく親切にしていただいたのに……」

「いやいや、お前さんが気にやむことはない。マッチの良さのわからん連中が悪いのだ!マッチはこんなにも素晴らしいというのに!皆何故それがわからんのだ!嘆かわしい!!」

「…………は?」

「見てみよ、棒の先にあるささやかな球体のこの美しいフォルム!擦りあげる時の絶妙の感触と何とも言えない音!まるで春を思わせるような温かで優しい光!どれをとっても素晴らしい!!」

マッチへの愛を興奮ぎみに語り出した紳士に、少女は呆気にとられ、社は頭を抱えます。

「これが始まると長いんだ」

口を開けながらポカンと紳士を見ていた少女に、社は苦笑しながら耳打ちしました。

「とりあえず座って。お茶を用意してくるよ」

そう言って社は部屋を出ていってしまいました。

残された少女は不安でたまりません。たいそう豪奢な宮殿の、たいそう大きな部屋に、たいそう変な紳士と二人きり。

一体自分は何のために呼ばれたのか。何をしたらいいのか。

少女は訳がわからないまま、マッチの素晴らしさを延々と語る紳士を眺めていました。

そこへ社がお茶を持って帰ってきました。

「お待たせ、今の間に飲んで」

「いただきます」

とりあえず落ち着こうと、少女は出されたお茶をありがたくいただくことにしました。金色に輝くカップには美しい装飾が施されています。少女はその美しさに思わずうっとりと見惚れてしまいました。

「これ……金食器ですか?」

「そうだよ。見たことあるの?」

「昔に……。でもこんな見事な装飾されているの、見たことありません。細部までとても綺麗…………あれ?でも昔見たのとはちょっと金の感じが違うような……」

少女が不思議そうに食器を眺めていると、背後から声がかかります。

「さすがに目がいいね。それは装飾重視の24金製の金食器。君が昔見たのは純金製。違ってて当然だけど、普通は気付かないよ」

驚いて振り向けば、そこにはあの意地悪な紳士が立っていました。

「あ、あなたは……!」

「よお、蓮!一足遅かったな。彼女のマッチは俺が全部買い上げたぞ」

現れた意地悪な紳士に、奇抜な紳士がニヤリと笑いながら声をかけます。それを見て嫌そうな顔をしながらも、蓮と呼ばれた紳士は、朝とは打って変わって優しく少女に声をかけました。

「朝はごめんね。相変わらず君があいつのために一生懸命だったから。だからちょっと意地悪したくなっちゃったんだ。久しぶりだね、キョーコちゃん」

「…………誰?」

「君に昔純金製の金食器を見せてあげたよね?君は目をキラキラさせてそれを見てた」

「まさか…………コーン……?」

「そうだよ。また逢えて嬉しいよ、キョーコちゃん」

そう言って蓮は、キラキラとした光を振り撒きながら満面の笑みを浮かべました。

その笑顔には覚えがあります。少女が幼い頃出会った妖精と勘違いした少年のモノです。髪や瞳の色は違いましたがこの光と優しい笑顔。間違いありません。少女は忘れられない笑顔を見て瞳を潤ませると、とうとう泣き出してしまいました。

「キョ、キョーコちゃん……!?どうしたの!?どうして泣くの?」

慌てて蓮、もとい、コーンは少女を抱き締めます。コーンにとって少女は大切な初恋の女の子で、絶対に泣かせたくない相手なのです。

「コ、コーンが生きててよかった~」

そう言ってわんわんと子供のように泣く少女を、コーンは更に強く抱き締めました。愛しくて堪らない初恋の少女。自分を見失うくらい苦しく辛い時でも忘れられなかった少女。

今朝再会した時には、相変わらず恋敵であるショーのために少女が一生懸命なのに腹が立ち、つい意地悪なことを言ってしまいました。けれど泣くほど再会を喜んでくれるなら、嫌われてはいないようです。むしろ好いてくれている。そう思ったコーンは、涙でぐしゃぐしゃになっている少女の目尻に口付けをしました。

「……っ!!コ、コーン?」

思わぬキスに、少女はびっくりして泣き止みました。

「あ、泣き止んでくれたね。よかった。俺もうキョーコちゃんが泣いてるとこ見たくないんだ」

そう言って笑うコーンに、少女は真っ赤になりながらも笑顔を浮かべました。

「コーンったら……」

恥ずかしそうにしながらもコーンの腕から離れようとしない少女を、コーンはこれ以上ないくらい甘い表情で見つめています。

「キョーコちゃん、こんな俺でも逢えてよかった?」

「もちろんよ!逢えて嬉しいわ、コーン!!」

満面の笑みで抱き着く少女をしかと抱き止め、コーンは幸せそうに微笑みました。

「しばらく二人きりにしてやるか」

「そ、そうですね……」

二人を見守っていた大人達は、そっと部屋から出ていきました。

「しかし蓮があんな顔をするなんて……俺今まで見たことないですよ。それにコーンってなんですかね?あだ名なんでしょうか?」

「……さあな。しかしありゃあ初恋だな。蓮のやつ……メロメロじゃねえか」

「……ですね。見てて俺も恥ずかしくなってきました」

「俺もだ。さすがに砂吐き出しちまうかと思ったぞ」

「王様まで……これは事件ですね」

「あいつに報告しねえとな」

奇抜な紳士、もとい王様と社は、嬉しそうにそんな話をしつつ、廊下を歩いて行きました。

そして残された二人はというと……。

「ねえ、コーン?どうしてこの国にいるの?遠い国に帰ったんじゃなかったの?それにどうして瞳や髪の色が違うの?変身してるの?」

矢継ぎ早に尋ねる少女に、コーンはにこにこと笑顔で答えます。

「違うよ。でも、それを話したらキョーコちゃんを放してあげられなくなっちゃうけど……いいの?」

「うん。話して。昔私の話をたくさん聞いてもらったから。だから今度は私がコーンのお話を聞いてあげたいの」

「キョーコちゃん……」

コーンは感極まったように少女を見つめ、そして強く抱き締めました。

「コーン……痛い」

「ごめん」

そう言って微笑み、コーンは少女の唇に触れるだけのキスをしました。

「コ、コココ、コーンっ!?」

「話す前に言っておくね。好きだよ、キョーコちゃん。大好き」

眩い光を纏い、神々しい笑顔でそう言われ、少女は顔を真っ赤に染めました。そんな顔も可愛いな、とコーンは思い、再びキスをします。今度は少し長めに。もちろん軽いものでしたが、少女が空気を求めて喘ぐまで、コーンはずっとキスをし続けました。

「コ、コーン!も…もういいでしょ?お話聞かせて?」

中々キスを止めないコーンに、少女は抗議しました。キスされるのが嫌なのではありません。ただ恥ずかしかっただけなのです。

仕方ないなあとコーンは言いつつ、腕に少女を抱いたまま話始めました。長い長い話を。

そしてコーンは話終えた後、最後に付け加えました。

「俺の本当の名前はクオン。これからはクオンって呼んで。愛してるよ、キョーコちゃん」




これは一人の少女のお話です。

少女はしがないマッチ売りから、なんと異国の王子の妃になったのです。王子様の名前はクオン。少女はクオンの初恋の人でした。

二人は小さい頃に少しだけ、少女がいたこの国で遊んだことがあったのです。それからクオンには辛いこと、悲しいこと、苦しいことが次々起こります。やがて自暴自棄になったクオンは、姿を変えこの国にやって来ました。そこでマッチを売る少女に再会したのです。変わらない少女にクオンは癒され、自分を取り戻しました。

そしてクオンは愛しい少女を連れ自分の国に帰り、すぐに二人は結婚したのです。

少女、キョーコはクオンの傍らで、いつまでもいつまでも幸せに暮らしました、とさ。



おしまい。





<後書き>
どこがマッチ売りやねん!というツッコミはなしにしてね。メモ書きのプロットではこんなはずじゃなかったんですが……あはは。それにしても童話の文体は書きにくいです。
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