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「マッチ売りの少女(前編)」
2015年06月10日 (水) | 編集 |
「マッチ売りの少女(前編)」





一度目に入れば、思わず振り返りたくなるド派手なピンク色のつなぎをきた少女が、寒空の下一人マッチを売っていました。朝から降り続いている雪で少女の足は雪で埋もれ、肩や頭にもかなり降り積もっていましたが、もはや少女にそれを払う気力は残っていません。

「寒いなあ~。でもこれが売り切れるまでショーちゃん帰ってくるなって言ってたし……頑張らなきゃ」

自分にそう言い聞かせて、少女は再び通りがかる人々に声をかけました。

しかしマッチは中々売れません。籠にはまだまだマッチがたくさん残っています。

朝最初に声をかけてくれた奇抜な格好をした親切な紳士が、このつなぎをくれてから、目立ちはするもののマッチを買おうとする人は中々いませんでした。今日は特に朝から酷い雪のため、外出する人も少なく、馬車は通るものの歩く人は家路を急ぐ人ばかりなのです。

「今日はこんな雪じゃ売れないんだから、あんたも早く帰りなさいよ」

いつも同じ通りで花売りをしている少女も、今日はすでに売るのを諦め、そう言って帰ってしまいました。あの少女がいればまだ寂しくなかったのに。少女はそう思いながら悴んだ指を息で温めました。それでもちっとも温まりません。

「寒いなあ。この寒さはやっぱり根性ではなんとかならないわ」

そう呟いて少女はクスリと笑いました。朝出会った意地悪な紳士のことを思い出したからです。

奇抜な紳士から貰ったピンクのつなぎに着替えて間もなく、少女の目の前を豪奢な馬車が通り過ぎました。装飾の美しさに思わず目を奪われ、行く先をじっと見ていたら、なんとその馬車が少女の目の前に戻ってきたのです。

少女が驚いて見ていると、馬車から一人の紳士が降りてきました。その紳士はとても背が高く、整った顔立ちで、少女は少し見惚れてしまいました。

「やあ、お嬢さん。それは何を売っているの?」

そんな少女に紳士がにこやかに尋ねました。

「……マ、マッチです。ショー印の特製品です」

一瞬ぼうっとしてしまった少女が慌てて答えると、紳士は呆れたような顔をしました。

「マッチ?今時?」

そのバカにしたような言い草に、少女はカチンときて思わず言い返してしまいました。

「悪いですか?これでも結構役に立つんですよ。あなたみたいなお金持ちにはわからないでしょうけど」

「ああわからないな。けど一つだけわかることがある」

「何ですか?」

「そんなマッチを買う愚かな人はいないってこと」

あまりの言われように少女はますます憤慨し、紳士を睨み付け言い放ちました。

「そんなことないわ!ショーちゃんがあんなに頑張って作ってくれてるんだもの。そりゃあ確かに前より売上は落ちたけど、でもいつも根性で売り切ってるもの!ショー印のマッチをバカにしないで!!」

「根性だけでいつまでも乗りきれると思うなよ」

冷たい瞳で見下され、少女はびくりと震えました。しかし勇気を持って睨み返すと、紳士は表情をころりと変え、にこりと笑って馬車へと踵を返します。

「いつまで持つかな。じゃ、精々頑張るんだね」

ヒラヒラと肩越しに手を振って、紳士は馬車に戻り行ってしまいました。

「なんだったのかしら、あれ……。それにしてもムカつく!!絶対売り切ってやるんだから!!」

――――――と決意したものの、やっぱりマッチはほとんど売れず、今に至るのです。

「やっぱりあの人の言う通りだったかなあ~。でもほんとに今までは根性で売り切っっていたんだもの。それにしてもあの人も子供の私に言い返したりして、大人なのに子供っぽいなあ。しかもあんなにかっこいいのに……あ、かっこいいは関係ないか」

誰に聞かせるでもなく呟いて、籠にかけていたストールから雪を払います。雪でマッチを湿らせないように。しかしその配慮も売れなければ意味がありません。

「今日はもう諦めようかなあ。ショーちゃんにはプリンでも買って許してもらうとして」

幸い奇抜な紳士のおかげで売上が少しはありました。プリンを買ってもお金は充分残ります。

あとちょっとだけ頑張って無理ならそうしよう。

少女はそう決意して、再び通りがかった人に声をかけました。



しばらくして、少女の前を一人の青年が通り過ぎました。青年は、ピンクのつなぎに驚いて振り返り立ち止まると、少女をじっと見つめます。居心地悪くなって少女が目を反らすと、青年は徐に近付いていきました。そして少女の前に立ち、少女に視線を合わせます。仕立てのよいコートを気崩しつつも、品よく着こなしているその青年は、マジマジと少女を覗きこんで言いました。

「君、よく見ると可愛いね。マッチを売っているの?」

「あ、はい……」

「ふーん。なら買うからさ、今から一緒に俺の家に来てくれないかな?」

行ってどうするのか。少女にはよくわかりませんでしたが、買ってくれるならそれに越したことはありません。

「はい、喜んで」

にこりと笑って少女が答えると、青年は人好きのする笑みを浮かべ、少女の肩を抱いて言いました。

「じゃあ決まり。俺は貴島ね。よろしく。あ、俺の家に来る前に、その派手な服も着替えて貰うから。服代は俺が出すから遠慮しなくていいよ」

貴島と名乗った青年の言葉に不審を抱きつつも、少女は大人しくついていこうとします。そこへ慌てた様子でもう一人、眼鏡をかけた青年がやってきました。

「ちょっと待って!!マッチを俺にも下さい」

息を乱しながらも少女の手を取り、青年はそう言うと、財布を懐から出します。見るからに高そうで上品なそれには、特徴的な紋章が施されていました。その紋章を見て貴島は驚きます。

「あ、あなた……もしかして………」

「ありがとうございます。あの…でも……貴島様の……」

「お、俺ちょっと用事を思い出したからさ、帰るね」

そう言って貴島はそそくさと帰っていきました。

「行っちゃった……。まだ買ってもらってないのに」

「ごめんね、商売の邪魔しちゃって。お詫びにそのマッチ、残り全部下さい」

「へっ…………?」

少女が驚くのも無理はありません。籠の中にはまだまだたくさんのマッチがあるのです。これを全部だなんて少女には信じられませんでした。

「あ、もしかして全部は駄目?」

ブンブンと首を横に振ると、眼鏡の青年は安心したように笑ってよかったと言いました。

「でね……申し訳ないけど、俺マッチあんまり使ったことないんだ。だから家まで来て使うとこ見せて欲しいんだけど……いいかな?」

「はい。もちろんです。喜んで」

少女は満面の笑みで答えました。何しろ少女はマッチのプロです。使って見せるなんてお手のもの。それに何よりマッチを全部買ってくれるなんて、とてもいい人なのです。少女はウキウキしながら眼鏡の青年の後に従いました。

眼鏡の青年は、少女を橋の向こうに停めていた馬車まで案内してくれました。その馬車には見覚えがあります。豪奢な装飾が施されたそれは、間違いなく朝のあの意地悪な紳士が乗っていた馬車と同じでした。

「あの…この馬車……」

少女が乗るのを躊躇っていると、眼鏡の青年が少し強引に中へ引き込みました。

「あの……」

「大丈夫。悪いようにはしないから」

不安そうにする少女に、青年は安心させるように笑いかけます。それでも少女の心は晴れません。

言い知れぬ予感に、少女は体を震わせました。なんとなくですが、自分の人生が変わってしまう。そんな気がしたのです。

そんな少女の当惑をよそに、しばらくすると、走っていた馬車が停まりました。目の前には豪奢で大きな門があります。その門の前には衛兵らしき人物が数人立っていました。彼らは恭しく一礼し、門を開けます。そうしてゆっくりと、馬車は門の中へ入っていきました。

門を通ってから何気なく窓の外を見ていると、よく手入れされた庭が見えました。色とりどりに咲く花、美しく揃えられた木々、凝ったデザインの噴水。見たこともない美しい庭に少女は目を輝かせます。そうしてキラキラとそれらに目を奪われていると、あっという間に目的地に到着してしまいました。

「着いたよ。俺の主が住む屋敷へようこそ」

「あの……ここは…………」

少女は目を疑いました。目の前にはあるのは屋敷というより宮殿といった方が相応しい、豪華できらびやかな建物でした。

「お帰りなさいませ、社様」

「ただいま。あの方は?」

「お部屋にいらっしゃいます」

「ありがとう」

馬車を降りると、両端に並ぶメイド達に恭しく迎えられ、少女は慌てつつも社と呼ばれた青年の後をついていきました。その背中に隠れるように。

建物の中も外から見たイメージに違わず、きらびやかな装飾品で埋め尽くされていました。まさに豪華絢爛、どこぞの王宮か、といった雰囲気に、少女は自分の身の置き場に困ってしまいました。こんな所で一体何をさせられるのか、何をされるのか、不安で堪りません。

「今すぐ帰りたいって顔してるよ」

「だって……まさかこんな立派な宮殿だなんて……」

「あはは……ここは別邸。そんなにたいそうなもんじゃないよ」

社はそう言いますが、庶民である少女にしてみれば充分たいそうなものでした。

おっかなびっくり歩く少女を連れ、一際豪華な装飾の施された扉の前に来ると、青年はそこで止まりその扉を叩きました。

「社です。戻りました」

「帰ったか。入れ」

中からした声に従い、社は中へ入って行きました。

「連れて来たか?」

「はい……あれ?入ってきて?」

少女は扉の前に立ち止まったままでした。社が声をかけても一向に入ってくる様子はありません。

「どうしたの?」

「だって怖くて……」

少女は朝出会った意地悪な紳士が中にいるのだと思っていました。そしてまた意地悪を言われるんじゃないか。そんな想像をして怯えていたのです。

「大丈夫だよ。とって食ったりしないから」

社に言われ恐る恐る中に入ると、そこには少女が思っていた紳士はいませんでした。

中にいたのは確かに紳士は紳士でしたが……。
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