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☆◎「隔靴掻痒」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「隔靴掻痒」





ラブミー部員が一人増えたらしい。

そんな話を最上さんから聞いたのはつい先日のことだった。

ついに放送が始まった「BOX"R"」。見れば見る程、彼女の演じるナツに驚かされる。以前見た時もそう思ったが、まるで別人のように綺麗で、そして……恐ろしい。

俺が演じるB・Jとは違う種類の恐怖。

まるで人をおもちゃのように扱い、苛烈な虐めを心の底から愉しんでいる。

彼女の演じるナツはそんな女だった。

そしてその彼女の手足となり虐めを実行するユミカという少女もまた、演技とは思えないほど凄まじい虐めを繰り広げていく。

彼女の迫真の演技には目を見張るものがある。

そのユミカを演じるのが、新しいラブミー部の一員、天宮千織だ。

そんな彼女に最近、悪質な手紙が届くらしい。どうもドラマを見た丸山留美の熱狂的なファンかららしく、「マルミーを虐めるな!」とか「これ以上マルミーを虐めたら僕がお前に天罰を与える!」などという内容のようだ。

今の所実害もなく、天宮さん自体は気にしていないというか、むしろ自分の演技が評価されていると喜んでいるみたいだが、事務所と最上さんはとても心配していた。マネージャーが付いていない時は、最上さんが自主的に彼女に付き添っているらしい。だがもちろん、虐めを主導している「ナツ」も狙われないとは限らない。

『危ない真似しないように』

最上さんにはそう釘を刺しておいたが、一体それがどれほどの効果があるのかわからない。あの娘のことだ。きっと無茶をやらかすに違いない。同じラブミー部員だからか、天宮さんをすごく気に入っているみたいだし。

何もないのにこしたことはないが……。

別の事務所に所属しているとはいえ、大事なラブミー部の一員である彼女をどうやって守ればいいか。社長も策を練っている。ラブミー部員にマネージャーを付けようか、それとも当面の間ボディガードを雇うか。椹さんと向こうの事務所で話が進められていた。

その矢先、事件は起きた。




今日はカイン・ヒールとしてセツカとオフを過ごす、ラブラブ甘々兄妹Dayだ。

といっても、彼女は午前中仕事があり、それまで俺はホテルで一人過ごしていた。あくまでも今日はカインとして振る舞わないといけないので、一人とはいえ気を抜けない。

黙々と台本を読んでいると、セツカからメールがあった。

『ごめんなさい、兄さん。もうすぐ終わるからお昼、もうちょっと待っててね 』

そういえばもう昼だ。別に空腹ではないが、仕事の終わったセツカに食事を用意させるのも可哀相だ。

『今どこにいるんだ?迎えに行くから外で食べて帰ろう』

そう返信すればすぐに返事が返ってきた。

内容を確認して、俺はゆったりと腰をあげた。今から出ればセツカを待たせることなく、余裕でセツカの下へ行くことができる。

問題はそこに辿り着くための交通手段だ。まさかこの姿で公共の交通機関に乗ることなんて出来ない。カインが東京の鉄道路線に詳しいのも不自然だ。

仕方なくフロントでタクシーの手配を頼むことにした。俺が英語で話し掛けると、彼はびくりと肩を震わせながらも丁寧に対応してくれる。おかげでホテルの前に手配されたタクシーの運転手は、英語が通じ、俺を見ても驚きも怯えもしなかった。

行き先を告げると、タクシーはすぐに動き出した。今日はあまり混んでいないようで、車の流れが速い。

メールを貰ってから一時間たらずで目的地に着いた。セツカが指定したのは都内の大型ショッピングモールで、今日はそこで「BOX"R"」の撮影があったらしい。

平日なのにやたら人が多く、待ち合わせ場所の広場まで行くのも大変そうだ。もちろん、人波を掻き分けていくのが、という訳ではない。俺が歩く度にまるでモーセの十戒のように割れる人々が大変なのだ。すし詰め状態の満員電車で人の迷惑を顧みず動き回る乗客のようだ。申し訳ないなあと思いながらもゆったりと歩く。

無事広場に辿り着くと時計のすぐ下にあるベンチに腰を降ろした。人々が遠巻きに俺を見ている中、堂々と煙草を吹かす。

先程タクシーで確認した時、あとワンカット確認すれば終わりだとメールが来ていたので、もうすぐ彼女も来るだろう。

そう思いながら2本目の煙草に火を点けた時、少し離れた所から騒がしい声が聞こえてきた。何事だろうと思いつつも、我関せず煙草を吸った。しかし騒ぎは一向に収まらない。聞き耳をたてていると、大勢の悲鳴が聞こえてくる。その中に聞き覚えのある声が混じっていた。その声が必死になって聞き間違えようのない名前を呼んでいる。

嫌な予感がして、人を掻き分け急いだ。

「京子さん!しっかりして!京子さんってば!!」

天宮さんが階段の下にうずくまり、横たわっている誰かを揺さ振っている。倒れているのは……。

「最上さん!!」

俺はカイン・ヒールであることも忘れ、倒れてる彼女に駆け寄った。

「どうした!?」

「う、後ろから私が突き飛ばされて……それで京子さんがとっさに私を庇って下敷きになって……どうしよう……」

突然現れた俺に、天宮さんはぎょっとした。しかしすぐ最上さんに視線を戻し、泣きそうな顔で事情を話してくれた。

最上さんは頭を打っているようだった。あまり強く揺さ振るのはマズイ。幸いにも血は流れていない。頭だから打ち所が心配なのだが……。

「とにかくすぐに救急車を!」

俺がそう叫ぶと、周囲の人だかりから声が上がる。

「今呼びました!」

「そう……。ありがとう」

ふわりと俺が笑うと、周りが息をのんだ。

しまった……。

カイン・ヒールでは有り得ない笑みだ。でも……こんな時は仕方ない。こんな時まで平静を保ってなんていられるか!

とりあえず彼女を抱き上げ、階段の上まで運び上げた。

「あの…ありがとうございます!」

ペコリと天宮さんが頭を下げる。

「君はどこも怪我してない?」

「あ、はい…大丈夫です。あの……京子さんのお知り合い…ですか?」

「ああ……」

「もしかして、京子さんがこの後待ち合わせしてる人って……」

「そうだ……」

やっぱり…と納得しながらも、天宮さんは俺の出で立ちを不審そうに見ていた。どう見ても堅気でなさそうな大男が、何故タレントの卵である最上さんと知り合いなのか。接点がどこにも見付からない、と言わんばかりの瞳だ。

それからはっと何かに気付き、彼女は慌てて階下へ向かった。

どうしたのだろうと思っていると、すぐに大きめの袋を提げてやってきた。

「これ、京子さんの着替え……あなたに会うために用意してたみたいで……」

「ありがとう……」

きっと最上さんはトイレにでも入ってセツカになるつもりだったのだろう。階下にトイレの案内表示があるのが見える。

俺がちょうどその袋を受け取った時、救急車のサイレンが聞こえてきた。

「あの…病院まで付き添って下さるんですか?」

「ああ…そのつも……」

そのつもりだと言おうとしたその時、俺の手を誰かが強く掴んだ。はっとして見ると、最上さんがうっすらと目を開けている。

「ダメ……あなたは一緒に来ちゃダメ……」

「どうして……?」

「カインの正体がばれちゃう……」

「こんな時に何言って……」

彼女が紡いだ言葉に、俺はいたたまれなくなった。

「私なら…大丈夫です……それより…私のせい…私のせいであなたが今まで築いてきたものを台なしにしてしまうのが……」

嫌なんです、と彼女は俺の手を握って言った。

そして俺の腕から逃れようともがく。

「京子さん…ダメよ。じっとしてないと」

「天宮さん……この人、早く連れていって……早く隠して」

「何言ってるの?」

「お願い。今こんなに目立つ訳にはいかないの……」

最上さんは俺を一度も「敦賀さん」とは呼んでくれなかった。こんな時にまで俺の役のことを気にかけてくれている……。

確かにカイン・ヒール姿の俺を「敦賀蓮」とは呼べないだろう。でも……。

「君が心配なんだ……」

役なんて今はどうだっていい。

さすがにそれを口にすることはしなかったが、彼女にはそれがわかってしまったようだ。彼女の瞳が悲しそうに俺を見ていた。

天宮さんはそんな俺達に黙ってついていてくれている。

ようやく救急車が到着し、ストレッチャーに最上さんを乗せた。

「天宮さん、すまない…彼女のこと、頼めるかな?」

「あ、はい……」

天宮さんが頷くのを確認し、俺はその場から立ち去った。ギリリと拳を握りしめて。




そのままカインとしてホテルに戻る気になれず、俺は社長の家に向かった。ちょうど社長は自宅にいて、電話で打ち合わせ中だという。

社長を待つ間、トイレにこもった。

鏡に映った自分の姿……。この姿でなければあんな状態の彼女にいらぬ気遣いなどさせなかったのに……。

帰りに乗ったタクシーの中でも、カインとして振る舞うことなど到底できなかった。

もちろん今も出来ていない。

敦賀蓮……でもない、『俺』がいる。

「くそっ!」

鏡の中の自分を睨み、俺は洗面台を拳で叩き付けた。掌にはずっと握り締めていたせいか、くっきりと爪の痕がついている。

「敦賀様…旦那様がこちらにいらっしゃるようにと」

しばらくそうしてトイレにこもっていた俺に、外から声がかかった。

「わかりました」

それだけ返事をして冷水を頭から浴びる。ポタポタと水が滴り落ちるのにも構わず、俺はそのままトイレから出た。

応接室に通されると、そこにはすでに社長が来ていて、ソファーにゆったり腰をかけていた。

「蓮……今日はカインとしての日じゃなかったか?」

「……すみません」

「まあこんな時だから大目に見てやるが……」

はあ、と息を吐いて社長は一旦俺から目を反らした。そして机の上にあった携帯をひっつかむと、俺へと放り投げた。

「なんですか?」

「見てみろ……今彼女から入ったメールだ」

言われたように携帯を開くと、確かに最上さんからメールが入っている。不注意で頭を打ったが、脳震盪を起こしただけで仕事には支障を来さないという事務連絡と、それから――。

『敦賀さんのカイン姿を見られてしまったかもしれません。もし気づかれていたら、社長の方でなんとか対処していただけませんか。セツカ役は辞めさせていただきます。御守りになれず、その上ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』

「蓮……どうする?」

俺が読み終わった頃を見計らって社長が問う。

どうするも何も答えなんて決まっている。

彼女をクビになんて出来ない。出来る訳がない。

悪いのは俺で彼女は何も悪くない。

それに今さら彼女を手放したくなんてない。

確かに思い人と同じ部屋で過ごすのは辛い。けれど……。




「セツカ……お前は俺の可愛い妹だ。撮影中は日本の、俺の傍にいてくれるんだろう?」

「つ…、に、兄さん、私ここにいていいの?」

「当たり前だろう?日本にいる間、俺の世話をしてくれるんだろ、セツカ?」

俺が微笑むと、最上さんは泣きそうだった表情を一瞬で引き締め、そして挑戦的な瞳で艶然と笑った。

「もちろんよ」

二人きりのホテルの一室で、俺はこれまでより強く、己に打ち克ちたいと願った。いや、誓った。俺の守り神に。俺だけの女神に。





<後書き>
今年も大幅に遅れてすみませんでした!大佐の誕生日にメールすら送れずほんとにほんとに申し訳ありませんでした。
3ヶ月近く遅れましたがキリル大佐のバースデーリクエストです。
蓮が思った以上に悩んでしまい、困りました。そしてチオリンを全然絡ませらせずすみません。なんかドラマが放送されたらこうなるかなあと勝手に彼女をターゲットにしてしまいました。ごめんなさい。
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