花とゆめ連載「スキップ・ビート!」の感想&二次SS中心です。当サイトはリンクフリーです。
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◎「狂愛螺旋」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「狂愛螺旋」





『お・に・い・さ・ま~』

雪(セツ)は語尾にハートでも付けそうな勢いで魁(カイ)に抱き着いた。

『どうした、セツ。ずいぶんご機嫌だな』

『だって今日はお兄様が一日中わたくしのそばにいて下さるんですもの。こんな幸せな日はないわ』

上機嫌でゴロゴロと甘えてくる雪の頭を撫でながら魁も穏やかに笑った。

『そうか…。私もセツと一日一緒にいれて嬉しいよ。普段は仕事で中々構ってやれないからね』

『ほんと。わたくしお兄様がお仕事にいらっしゃってる間はとても寂しい思いをしていますの。だから今日はたーっぷりお相手して下さいね』

お気に入りのカウチで二人並んで座る。甘え、時にじゃれあう姿は本当に仲のよい兄妹にしか見えない。使用人達も微笑ましげにそんな二人を見ていたが、家令である不破だけは暗鬱な思いでその光景を見ていた。

華族である蛭田家はもちろん裕福だったが、当主であった二人の父が亡くなり、魁が後を継いで新しい事業を起こすと益々繁栄し、今や蛭田家は政財界において口出しできるものはいない程の地位を築き上げていた。ただ、その急成長ぶりに黒い噂が絶えず、巷では邪魔な父を魁が殺しただの、ライバル業者の取引先を潰しただの、魁に近付く女性が次々とまるで呪われているかのように姿を消すだの、様々な噂がまことしやかに囁かれている。

そして噂ではなく、それを事実として知った人物がまた一人、この世から消されようとしていた。

『ふふふっ。わたくしからお兄様を奪おうとなさるなんて……愚かな人ね』

雪は心底楽しそうに笑い、男達に捕らえられている女を憐れむように見た。

『あなた、狂ってるわ!この悪魔!!』

気丈にも女は雪を睨み付け叫んだ。取り乱してはいても落ちぶれたとはいえさすがは伯爵令嬢。この状況でまだ雪に言い返す強さを持っている。だからといって雪は認めたりはしない。誰であろうと兄との仲を引き裂こうとする者には死をもって償わさなければ許せない。たとえこの身が地獄へ落ちようともかまわない。

『ええ、そうよ。わたくしは狂っているの。悪魔でも何でもかまわない。お兄様が愛して下さるなら、何だってするわ』

『魁様とあなたは実の兄妹でしょう?そんなの……そんなのおかしいわ!』

おかしい……そんなことはわかっている。それでも愛しているから。

『実の兄妹…そうね。でも…そんなこと関係ないわ。わたくしたちの間では些末なことよ。わたくしはお兄様を愛しているし、お兄様だってそうよ』

だから貴女はいらないの、と言ってふふっと笑い、雪は男達に命じる。そして女が断末魔の悲鳴を上げるのを、実に楽しそうに見ていた。




「キョーコちゃん…相変わらず凄い怖いなあ。鬼気迫るっていうか。あの狂気に満ちた表情……恐すぎて寒気がする」

キョーコの演技に社が思わず呟くと、蓮も直ぐ様同意した。未緒の時もそうだったがキョーコの狂気の演技には本当に呑まれそうになる。キョーコが凄烈なまでの狂った笑顔を見せる度、演技ではなく背筋が凍り付いている役者を何度見ただろう。それに今回の雪には兄と禁断の関係にあるせいか、狂気の中に妖しさとどことなく艶があり、女性らしい色気がプラスされて未緒とはまた違った雰囲気を醸し出していた。

「そうですね…それに兄と接している時とのギャップが……」

なんとも堪らない。可愛くおねだりされたら何でも買い与えてしまいたくなる。しかも素の最上キョーコではありえないスキンシップつき。それもかなり際どい行為まで予定されている。

それを反芻するだけで口元が弛む。蓮は慌てて手で口を覆った。

その行動が何を意味するかもうすでによく知っている社は心底思う。

(よかったな。最初この仕事を引き受けた時はただの普通の兄妹役かと思っていたが、まさかこんなご褒美があるとは)

兄を盲目的に愛し、甘えてくる雪は社から見ても可愛い。役じゃなくてもデロデロに甘やかせたくなる。おまけに具体的に台本に書かれている訳ではないが、この兄妹はどう考えても肉体関係がある。二人の間に時折流れる妖しい雰囲気やそうとしか思えない、そう匂わせるセリフがそこかしこに散りばめられていた。やに下がる蓮の気持ちが社にはよくわかった。

ただそのシーンになる度、キョーコが恥ずかしさのためか蓮に近寄らないようにしているのが気になるところではあるが……。

(まあ役に入っちゃえばキョーコちゃんほんと凄いし。過激なスキンシップもなんなくこなしてるから心配いらないんだけど……)

役が抜けている時のキョーコをどうするか。それが目下のところ、社の最大の悩みだ。




「モー子さんに……、モー子さんに、こ、こんなことするなんてえ~!」

私出来な~い、と絶叫するキョーコに、やれやれと奏江は呆れた。

(あくまでも役の上なんだから割り切ればいいのに。千織が不死蝶なんて呼んでる割にはまだまだね)

なんて思いつつ、再び台本を捲った。

確かに内容は強烈だ。

何度も「死んで」と言われ、挙げ句にそういうシーンはないものの暴行されてボロボロにされ、殺されるなんて。

しかもそれまで親友と思っていた相手からだなんて。リアルに考えたらなんて恐ろしいことなのだろう。まあこの暑苦しい親友なら例え天地がひっくり返ろうともあり得ないことだろうけれど。

まだぐずぐずと駄々を捏ねる本物の親友を、奏江は台本で軽く叩いた。

「ほら、いつまでそうやってるの。さっさと切り替えなさい」

でも本当は知っている。役に入れば彼女はどんな演技だってやってのける。役に入り込んで、本当に相手を殺してしまうのではないかと思えるほど、完璧な狂人を演じて切ってしまうのだ。

「よし!」

(私も気合い入れないと!この娘に呑まれてたまりもんですか!)

奏江は気持ちを切り換えるためにあえて声を出して気合いを入れ直した。キョーコに負けないように。




『あの娘が何をしているのか、あなたはご存知なのでしょう!』

『ああ……』

それがどうしたと事も無げに言われ、琴子は驚愕した。

『なぜお止めにならないのですか?』

『止める……?なぜ?』

『なぜって……。あなたの大切な妹が罪を犯しているのよ!それも人を…人を平然と殺して……。しかもあなたの婚約者だった人まで次々と。止めるのが当たり前しょう!』

魁は笑っていた。それも凄まじく美しい笑顔で。この狂気に満ちた表情は妹とそっくりだ。狂っているのは妹だけだと思っていた。けれど違った。兄の方も狂っているのだ。

『でしたら……でしたらなぜ私を婚約者になさったの?』

『セツが珍しく君を気に入っていた』

『それが?』

『セツは可愛い。とてもね。そして美しい。けれど嫉妬に歪むセツはもっと美しい。それが親友の君が相手だったら更に美しく歪むだろうと思ってね』

強すぎる愛情が互いを狂わせたのか。それとも最初から狂っていたのか。

どちらにしろこの狂った兄妹に自分は殺される。琴子は呆然とその場に立ち尽くした。そこへ雪がノックもせずに入ってきた。廊下からではなく隣の魁の寝室から。明らかに夜着と思われる姿で。かなりはだけ、胸が少しばかり見えている。そのしどけない姿に魁は少しも動じず平然と声をかけた。

『セツ?どうした?』

『琴子様とお二人で何を話していらしたの?』

『内緒だ』

『あら、酷い。わたくしに隠し事なんて……』

『秘密があった方が楽しいだろう……?』

『でも……お兄様のことなら何でも知っておきたいのよ。わたくし独占欲が強いの』

そっと手を伸ばし正面から抱き着き、ついと逞しい鎖骨に口付ける。

『悪い子だ……』

『お仕置きして下さいませ……』

『またかい?さっき散々してあげただろう?』

『……足りないわ』

『いいよ。後でたっぷりしてあげよう』

『後で?お仕事なんですの……?』

『ああ。セツは着替えて琴子さんと一緒にかふぇにでも行っておいで』

『……わかりました。琴子様、こちらで少しお待ち下さいませ。仕度して参ります』

そう声をかけられたが、琴子は動けなかった。立ち尽くしたまま動けない彼女を魁は椅子に座らせる。

『不破……』

廊下に控えていた家令を呼び寄せると琴子にお茶を持ってくるように命じ、魁は寝室に姿を消した。

その後しばらくして雪は華やかな京小紋を纏い現れた。今度は寝室ではなく廊下側の扉から。

鮮やかな朱色の地色にたくさんの小菊が描かれた小紋は雪によく似合っている。雪はにこりと笑うと凍り付いて動けない琴子を無理矢理車に乗せて連れ出した。




『約束だ。お仕置きしてあげよう……』

『お兄様……』

抱き合いながら寝室に向かう二人の姿を不破は黙って見ていた。

琴子はもうこの世にはいない。彼がわかるのはそれだけだ。

雪が先程まで纏っていた朱色の小紋。白かった小菊が真っ赤に染まっている。鮮やかだった朱色の地色は一部がくすんでしまっていた。けれどきっとこの部屋の主はそれを美しいと愛でるのだろう。

血塗れの小紋を魁の私室に掛け、不破は暫しそれを見ていた。

あとどのくらいこうして血に汚れた着物を飾ればよいのだろう。もうこれが最後であって欲しい。そう願いながらも魁に近付く女性と新しい着物を着て出ていく雪を黙って見送り、その着物を魁の部屋に掛ける。

自分も恐らくもう狂っているのだ。あの兄妹のように。

不破は二人の消えた寝室を振り返り、部屋から辞去した。

それに応えるかのように血塗れの小紋が哀しげに揺れる。赤く染まった小菊からは紅い血がまるで泣いているかのように滴り落ちた。

『わたくしにはお兄様が世界のすべて。お兄様さえいれば何もいらないの。だからわたくしとお兄様の間を引き裂こうとする者はたとえ神や悪魔でも死んでいただくわ』

『狂気に蝕まれた血塗れのセツはこれ以上ない程美しい。たとえ狂っていると言われようと、私はセツを愛している。私のセツ、もっと嫉妬に歪んでいけばいい』

兄妹の狂愛が螺旋のように絡まり、いずれは蛭田家を破滅させる渦になるであろう。

ただ今は狂愛に溺れるだけ。

兄妹の行き着く先は天国か地獄か。それは誰にもわからない。





<後書き>
最初カイセツが出た時にヤンデレか?と勘違い、私が思い付いたヤンデレを麒麟氏に話したのが運のつき。「それどうせなら蝶屋敷風で書いて」とおねだりされてしまいこうなりました。ああ、ついにスキビでやってしまった。





オマケ


ショー「んなもん地獄に決まってんだろーが!」

蓮「そうかな?二人で地獄に落ちたとしたら二人にとっては天国なんじゃないかな?ね、最上さん?(最上級のキュラキュラ笑顔で同意を求める)」

キョーコ「(間近にその笑顔を見て真っ赤になりながら)ははははは、はいぃ!!」

ショー「だいたいなんで俺がお前らなんかに仕えないといけねえんだよ!」

蓮「意外と似合っていたんじゃないかな?次は奴隷役なんていいんじゃない」

ショー「ふざけんな!俺様が奴隷だと?そこの地味で色気のねえ女ならまだしも俺が奴隷なんて似合うかよ」

キョーコ「ぬぅわんてすぅってえぇぇっ!!(怨キョ炸裂)」

蓮「最上さん?別に彼は君のことを言ったんじゃないよ。彼はきっと幻でも見ているんじゃないかな。もし君が地味で色気がないって見えるなら彼の目が悪いだけだよ」

キョーコ「でも…………」

蓮「君が色気がないなんてあり得ないだろう?さっきあんなに……(キョーコのうなじについたキスマークを舐める)」

キョーコ「わわわわっ…………(顔を真っ赤にしてパニック中)」

ショー「なっ!な、な、ななな、何やってんだよ、キョーコオォ!!」

蓮「さ、最上さん、帰ろうか(ショーを無視してまだパニック中のキョーコの腰に手をやりを優雅にエスコートし去ろうとする)」

ショー「ちょっ!待たんかーい!キョーコをどこに連れて行くつもりだよ」

蓮「(ショーを振り返りバカにしたように見下して)楽屋に決まってるだろ?(まあその後俺のマンションに連れて帰るんだけどね)」

ショー「てんめえぇぇ、いけしゃあしゃあ嘘つくんじゃねえよ!楽屋に連れて帰ってその後キョーコをお持ち帰りする気だろう!」

蓮「(なかなか鋭いな)……君には関係ないよ」

ショー「………なっ!ちょっとは否定しろよ!キョーコ、いつまでもボケッとしてんじゃねえ!そいつに喰われんぞ」

蓮「確かに食べさせてもらっているよ、彼女の手料理をね。最上さん、今日もお願いしていいかな?」

キョーコ「(パニックから立ち直り)も、もちろんです!」

蓮「ありがとう。あ、(キョーコの耳元で囁く)帰ったらさっきの続きしてあげるね」

キョーコ「い、いい、い、いりませんからあ!敦賀さんの破廉恥ーっ!!!(顔をゆでダコのようにして蓮の腕から猛ダッシュで逃げていく)」

蓮「くす。逃がさないよ」

ショー「キョーコに何いかがわしいこと言ったんだよ、この変態野郎!!」

社「キョーコちゃん、逃げてー!!」


終わり。本編があまりにもアレなんで気晴らしです。止めどころがなかったので強制終了。
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コメント
この記事へのコメント
カイセツが好きです。
はじめまて、蒼天ともうします。
カイセツが大好きで色々めぐっていたらたどり着きました。
こちらのサイトのカイセツ全部読ませていただきました。どれも面白かったです。この小説も妖しくていいですね!何よりもすごくヤンデていいですね!時代は明治とかの設定ですか?蝶屋敷とはなんでしょう?
「インタビューしてみました」のインタビュアーにジェスチャーで脅すカイン兄さんにも笑えました。妹大好き嫉妬深い兄さん大好きです。
本編ではもう登場しないかもしれませんが、カイセツまた書いてください。よろしくお願いします。
2015/05/02(土) 14:25:35 | URL | 蒼天 #-[ 編集]
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