花とゆめ連載「スキップ・ビート!」の感想&二次SS中心です。当サイトはリンクフリーです。
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「インタビューしてみました」
2015年03月10日 (火) | 編集 |
「インタビューしてみました」





『あなたの好きな人、事はなんですか?』

今日はこの質問を全員の方にしていきたいと思います。

まず始めに、最近めきめきとその頭角を現していらっしゃいます、タレントの京子さんにお伺いします。

「もちろん大親友のモー子、いえ琴南さんです」

ラブ全開で気持ちよく言い切って下さいました。とても可愛らしい笑顔つき。メロメロ(死語)になってしまいそうです。

この調子でさくさく次の方へ……といきたいところでしたが……その後親友自慢が延々と始まりだしてしまいました。どうしましょう……と、その大親友さんが慌ててやってきて止めて下さいました。た、助かった……。ふう~、無理やり引っ張られて連れて行かれなければ、彼女は一日中話を続けていそうですね。やれやれ。

き、気をとり直して次の方は……なんと大変お美しい女神様です。いえ、失礼いたしました。天使様でした。慈愛に満ちた優しい笑顔を浮かべてお待ちいただいています。いやあ、役得です。

「そうねえ……私の可愛いダイアナよ。あの娘はほんとに素直で可愛くて……なのにあの男……あの悪魔はよくも…よくもっ……!」

あわわわっ!先程までのお優しいお顔が、女神様が、ま、まるで悪鬼のような表情を浮かべていらっしゃいます。このままでは私縊り殺されてしまうかもしれません。ああ、でもこの女神様、もとい、天使様に殺されるならそれでもいいかも……。

い、いけません。私にはまだ仕事があります。天に召される訳にはいきません。つ、次は本郷家のお嬢様、本郷未緒様です。素敵な黒のワンピースをお召しでいらっしゃいます。

「くすくすくす……人の不幸?かしら……。苦しみに歪む顔って素敵でしょう?ふふふっ……」

妖しくも禍々しい笑いを浮かべる未緒様。背筋に寒気が走りました。こ、怖いです……。呪われそうです。でも悪魔に魅入られるとはこういうことでしょうか。私なぜか惹かれてしまいました。

危ない世界に行っている場合ではありません。次、次の方に行きましょう。次は女子高生のカリスマ的存在、北澤ナツさんです。今日も制服をスタイリッシュに着こなしていらっしゃいます。

「はあ?そんなの決まってるじゃない?面白いことよ。退屈するのが嫌いなの。そろそろ今のおもちゃに飽きてきたから……面白い遊びがあったら教えて?ね、わかった?」

こんな綺麗なお顔で言われてしまったら頷くしかありません。ああ、なんかいけない遊びを教えて欲しい気がいたします。

はわわっ……な、なんでもございません。つ、次の方はまた強烈な…いえ、個性的、いえ、エロ格好いいハードなお衣装の雪花・ヒールさんです。

「……なに?」

ローテーションで冷たく睨まれてしまいました。いえ、でも負けませんよ、私。懲りずにもう一度聞いてみます。

「兄さん……」

ボソッとおっしゃっていただきましたけど、あれ?なんか顔が赤いですよ、セツカさん。

なんですか、クーデレってやつですかね。ちょっと可愛いなんて思ってしまい……ん?何やら背筋に寒気が……。気のせいか後ろから殺気を感じるんですけど。

恐いもの見たさに確認してみましょう。

こ、殺される!今度こそ、私本当に殺させてしまいます!!黒い服の大男にめちゃくちゃ睨まれてます!

あれは……。

「兄さんっ!!」

な、なんと!あれが噂のカイン兄さんとやらですか。

想像以上に恐いです。大きいです。そしてヤバそうな雰囲気です。そんな恐ろしい大男に向かって嬉しそうに駆けていくセツカさん。

「兄さん、迎えに来てくれたの!?嬉しい!!」

「遅かったからな……それにお前がいないと……」

何やらお兄さん、ボソボソとしゃべっていらっしゃいますが聞き取れません。もっと近くで聞きたいところですが、殺されそうなので恐くて近付けません。

あ、なんか頭をなでこなでこ……うおー、今度は抱き合っていらっしゃいます!!あれはほんとに兄妹なんでしょうか。あんなにラブラブな兄妹、見たことありません。

ん?心なしか、セツカさんの耳が赤いような気がいたしますが、気のせいでしょう。

ん……?また殺気?う、またあの恐い番犬、いえ、カイン兄さんに睨まれました。何か指で……あ、早く消えろってことですね。消えないと……殺す?ひーっ!!な、なんと恐ろしいことをジェスチャーで伝えてくるんでしょう。しかし助かりました。ほんと生きた心地がしませんでした。

はあ~疲れました。ようやく最後です。最後の方はなんと…………………さんです!

「そうですね……妖精かな?ふふ……」

またまたそんな……。あ、ティンカーベルとか妖精のキャラクターってこと?

「いいえ。本物です。見たことあるんですよ。嘘だと思ってるでしょう?」

そりゃそうでしょう。妖精なんてそんな……幽霊とかならまだしも。

「ふふ。でもいるんです。それに今は傍にいて私を幸せにしてくれてます」

本当に幸せそうな笑顔でおっしゃるのでなんだか信じたくなってきました。もしかして妖精は比喩なのかもしれませんね。

とするともしかして妖精の正体は……。

以上、特別インタビューでした。





<後書き>
本編がカイセツやってる頃に書いていたものです。なのでカイセツ多め。サイトに載せるのは初めてのはず。メモの中から出てきたのでせっかくだからup。拍手用に書いていたみたいです。
「魅惑のレッスン(ふろく妄想)」
2015年03月08日 (日) | 編集 |
「魅惑のレッスン(ふろく妄想)」





その時、男は自分の理性が脆くも崩れ落ちるのを感じた。

ドクンと高鳴る鼓動、熱くなる躯。

もう止めることなどできない。

男は本能の赴くまま、欲望を露にした。




「これ、ほんとに君が?」

「そうなんです。だから困ってるんです」

長身の男は台本に目を通しながら、傍らの少女に意識を向けた。

ほっそりとした躯を包むシンプルな白いシャツ。その下には黒いキャミソールがちらりと見えている。ワインレッドのタイトスカートから惜し気もなく晒されているすらりと伸びた滑らかな脚。そして男を誘うかのように朱く濡れた唇。

どれも普段の彼女とは違い、壮絶に色っぽく、大人の女の雰囲気を漂わせている。それなのに……。

「私みたいな色気もない女がどうやって男の人を誘惑したらいいんでしょう?」

そんな理性を揺るがす上目遣いで、そんなことを言われてもな……と、男は内心焦っていた。

「私、ダメだしされる自信ありすぎて……だからその……敦賀さんなら艶っぽいし、演技指導して下さるかなって……」

図々しくてすみません、と彼女は小さくなって謝罪した。

(むしろ謝るのは俺の方だ。真剣に演技の指導を請う君に対して不埒な欲望を向けているのだから)

早くも理性がぐらつき始めている。

男は自分を押さえ込むため、必死で色即是空、色即是空と頭の中で唱えた。

そんなことを傍らの男が考えているとは露知らず、女は更に男の理性を試す行動を取った。

「出来れば敦賀さんに先生役になっていただいて、私の色仕掛けが通じるか試したいんですが……」

色気のある表情や仕草を教えろと言われても悩むだろうが、これはこれでかなりヤバイぐらい困る。今でも十分理性を試されているのに、その上演技とはいえ色仕掛けなんてされたらこちらが持たない。理性なんてどこかに飛んでいってしまいそうだ。

「も、最上さん……?」

「お願いします……敦賀さんしかいないんです」

真剣な表情で懇願され、男は白旗を上げた。

「わかったよ……。俺でいいなら」

「ありがとうございます。じゃあよろしくお願いします」

女はそう言ってにっこり笑った。

そうして男――蓮の地獄は始まった。




これは演技。これは演技。これは演技。これは演技なんだ。

蓮は何度も自分に言い聞かせた。

そうしないと自分の本能に負けてしまいそうだった。

それほど演技を始めたキョーコ、いや、ナツは色っぽかった。

『単なる遊びよ。私、退屈なの……。楽しいことがしたいだけ』

『人をいじめるのが遊びなのか』

『そうよ。他人の屈辱に歪む顔とか泣き叫ぶ顔とか見ると堪らなく楽しいわ』

『傍迷惑な遊びだな』

『そうねえ……代わりに先生が私を愉しませてくれる?』

ナツがそう言って蓮を見つめた。その誘うような眼差しが理性を揺るがす。

ドクンと心臓が鼓動を打つ。蓮は思わず視線を反らした。

『ふふふ……。冗談よ。ねえ……先生?私のお願い、聞いてくれるでしょ?」

艶やかな妖しい笑顔を浮かべナツが迫ってくる。足元に座っていた時から胸元のキャミソールが僅かに見えていたのに、近付かれると胸の谷間が中に着ているブラジャーまではっきりと見えてしまう。

『お、俺が聞いたらいじめを止めるのか?』

内心の焦りを隠すように言えば、ナツは髪を耳にかけ、ふふふと微笑し蓮の隣に座った。

『さあ……?それはどうかしら?』

『いじめを止めないなら俺にはなんのメリットもない』

『いい先生ぶるのね。でもそれなら最初からいじめを見た時点で学校に言えばよかったんじゃない?』

ナツはそう言いながらソファに座る蓮の膝の上に手をやり優しく撫で上げた。

『そ、それは……』

蓮が言い淀むとナツは愉しそうに笑う。その色気のある視線と唇が艶かしい。

蓮はごくりと息を飲んだ。

『本当は期待してるんでしょう……?』

耳元に囁きかけられ、更にフーっと息を吹き掛けられる。それだけで鳥肌がたつ。

『……ね?このまま黙っていてくれるでしょう……?』

ネクタイの端を弄びながら蓮を見て妖艶に微笑むナツに、警鐘が鳴り響く。

これ以上は危険だ。

しかしナツは今度は蓮の正面に身体を移動させ、足の間に入り込んできた。そしてソファに片方の膝を乗せ、指に蓮のネクタイを絡ませたままくい、とそれを引っ張りあげ顔を更に近付ける。

片手で蓮の顎の持ち上げ、唇をじっと見詰めた。まるでキスをねだるような視線に、蓮の心臓が早鐘を打つ。

ナツは指先で自分の唇をゆっくりとなぞるように拭い、口紅の着いたその指で蓮の唇に撫でるように触れた。

いつの間にか脚を絡ませられ、太股をやわやわと刺激されていた蓮はとうとう陥落した。

本能のまま、ナツを抱き寄せその唇を奪う。

誘ったナツが悪いのだ。

自分にそう言い訳をしながら甘い唇を貪った。





<後書き>
ずーっと前にふろくで付いていたふろくの妄想です。以前書いたものが消えてしまったのですが、最初の方だけ書いていたメモを見つけたので再度書いてみました。後半のドラマパートは覚えてないので違う感じになってしまいました。前の方がよかったとかはなしにしてね。

◎「デレデレなカイセツ」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「デレデレなカイセツ」





「ただいま」

「お帰りなさい、お兄ちゃん」

玄関を開けると、すぐに愛しい妹、セツカが廊下の奥からパタパタと音をたて駆けてくる。そして玄関で靴を脱いでいたカインの背中に飛び付いたてきた。

「ただいま、セツ。寂しかったよ」

「まさかほんとに一人で行っちゃうなんて思わなかった。セツカ、すごく寂しかったんだからね!」

「一人にしてごめん。お詫びにセツの好きなケーキ、買ってきたぞ」

背中に抱き着くセツカの手をあやすように撫で、立ち上がったカインはそのままセツカを背に乗せリビングまでのっそりと歩いた。

「ケーキ!?嬉しい!!」

カインの思った通り、セツカは差し出されたケーキに目を輝かせ、嬉しそうな笑顔で受け取った。が、台所に向かう途中でくるりと振り向いて小さく呟いた。

「でも……セツカはお兄ちゃんが早く帰ってきてくれた方が嬉しいな」

もちろんその呟きはカインの耳にも入っている。

「相変わらず可愛いな、セツは」

台所から戻ってきたセツカを抱き寄せ、頭を撫でてやる。そうするとセツカはふにゃと顔を綻ばせ、カイン首に巻き付いて言った。

「お兄ちゃん、だーい好き。ずっとセツカのそばにいてね!!」

「もちろん。お兄ちゃんもセツのことが大好きだよ」

そう言って、カインはセツカの頬に口付けをする。お返しとばかりに今度はセツカもカインの額にチュッと唇を押し付ける。そしてどちらからともなく唇を寄せてキスしあった。

カインとセツカ。これがいつもの二人の日常。お互いのことが愛しくて堪らない。一時も離れていたくない。

そんな二人だったから、俳優であるカインが引き受けた映画撮影の話は二人にとってとても辛いものだった。当初離れがたい二人は日本でのロケ中もセツカを一緒に連れて来るつもりだったのだが、セツカの進級試験が運悪く重なってしまったのだ。カインは仕方なくセツカを本国に残し、日本での一人淋しい生活を過ごした。約2週間の撮影がようやく終わり、本国に戻って来れたのだ。

カインは久しぶりのセツカを思う存分堪能しようと決意した。

約2週間ぶりに食べたセツカの手料理は相変わらず美味しかった。日本ではまともに食事をしなかったのが嘘のように、出された料理を完食する。カインは満足そうなセツカを抱き寄せ、感謝をこめて唇にキスをした。久しぶりのセツカの感触。触れるだけで荒んでいた精神が和らいでいく。

同じようにセツカもカインに触れられるだけで安心できた。軽いキスだけなのにセツカはいつもそのキスでメロメロになってしまう。トロンと瞳を潤ませ、もっととせがめば更に深いキスを与えてくれる。優しいキスも情熱的なキスも、カインが与えてくれるキスならセツカはなんでもよかった。

カイン以外としたことはないが、カインほど上手い人はいないのではないかと思う。もちろんカイン以外とするつもりなんて全くない。カイン以外はセツカにとっていないも同然だ。

「セツカがいない間、ちゃんとご飯食べてた?」

「………………」

「お兄ちゃん……?」

「……食べてない」

ぼそりと小さく呟くカインにセツカのイラツボを突いた。

「お兄ちゃん!!あんなにきちんと毎日食べてって約束したじゃない」

「ごめん……。でもやっぱりセツがいないと食べる気がしないんだ」

「子供じゃないんだからセツカがいなくてもちゃんとご飯食べなきゃダメでしょう!」

「ごめんごめん。次からはちゃんと食べるよ」

「もう!お兄ちゃんてばセツカがいないとほんとにダメなんだから!」

そう言ってセツカはプリプリと怒りを露にしつつ、キッチンに向かった。その姿が少しだけ嬉しそうなのはカインの気のせいではない。

セツカにとってカインが唯一無二の存在であるように、カインにとってセツカも唯一無二、離れていてはまともに食事も出来ない。そんな存在である。

それが確認出来てセツカは少し嬉しかったのだ。




「…………な、なんですか、この台本は!?」

キョーコはプルプルと肩を振るわせて叫んだ。

「兄妹役って言いましたよね!?」

「うん。だから『兄妹』だろう?」

「これのどこが『兄妹』なんですが!!」

「ちゃんと『お兄ちゃん』って言ってるじゃない」

「どこの世界に口にキスする兄妹がいるんですか!?」

「どこかにはいるんじゃない?」

蓮が平然と言い返すのでキョーコはますます興奮していく。

「それにどんな兄妹か聞かなかったのはキョーコだよ?」

「それはそうですけど……」

「ねえ、試しに呼んでみて。『お兄ちゃん』って?」

「いいいいい、言えませんよ、そんなの!!」

「残念。ま、それは撮影の時まで取っておくよ。楽しみにしてるからね、最上さん♪」

「……っ!このっ……嘘つき悪魔ーっ!!」



すみません。終わりにして下さい。





<後書き>
ヤンデレカイセツを書いたらデレデレ?書こうぜと脅され、こうなりました。ツンデレでもなくなぜデレデレ?タイトルすら思い付きませんでした。ちなみに付き合い始めた頃の蓮キョ設定です。こんなカイセツはいかがでしょうか…色んな意味で恐いです。


◎「狂愛螺旋」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「狂愛螺旋」





『お・に・い・さ・ま~』

雪(セツ)は語尾にハートでも付けそうな勢いで魁(カイ)に抱き着いた。

『どうした、セツ。ずいぶんご機嫌だな』

『だって今日はお兄様が一日中わたくしのそばにいて下さるんですもの。こんな幸せな日はないわ』

上機嫌でゴロゴロと甘えてくる雪の頭を撫でながら魁も穏やかに笑った。

『そうか…。私もセツと一日一緒にいれて嬉しいよ。普段は仕事で中々構ってやれないからね』

『ほんと。わたくしお兄様がお仕事にいらっしゃってる間はとても寂しい思いをしていますの。だから今日はたーっぷりお相手して下さいね』

お気に入りのカウチで二人並んで座る。甘え、時にじゃれあう姿は本当に仲のよい兄妹にしか見えない。使用人達も微笑ましげにそんな二人を見ていたが、家令である不破だけは暗鬱な思いでその光景を見ていた。

華族である蛭田家はもちろん裕福だったが、当主であった二人の父が亡くなり、魁が後を継いで新しい事業を起こすと益々繁栄し、今や蛭田家は政財界において口出しできるものはいない程の地位を築き上げていた。ただ、その急成長ぶりに黒い噂が絶えず、巷では邪魔な父を魁が殺しただの、ライバル業者の取引先を潰しただの、魁に近付く女性が次々とまるで呪われているかのように姿を消すだの、様々な噂がまことしやかに囁かれている。

そして噂ではなく、それを事実として知った人物がまた一人、この世から消されようとしていた。

『ふふふっ。わたくしからお兄様を奪おうとなさるなんて……愚かな人ね』

雪は心底楽しそうに笑い、男達に捕らえられている女を憐れむように見た。

『あなた、狂ってるわ!この悪魔!!』

気丈にも女は雪を睨み付け叫んだ。取り乱してはいても落ちぶれたとはいえさすがは伯爵令嬢。この状況でまだ雪に言い返す強さを持っている。だからといって雪は認めたりはしない。誰であろうと兄との仲を引き裂こうとする者には死をもって償わさなければ許せない。たとえこの身が地獄へ落ちようともかまわない。

『ええ、そうよ。わたくしは狂っているの。悪魔でも何でもかまわない。お兄様が愛して下さるなら、何だってするわ』

『魁様とあなたは実の兄妹でしょう?そんなの……そんなのおかしいわ!』

おかしい……そんなことはわかっている。それでも愛しているから。

『実の兄妹…そうね。でも…そんなこと関係ないわ。わたくしたちの間では些末なことよ。わたくしはお兄様を愛しているし、お兄様だってそうよ』

だから貴女はいらないの、と言ってふふっと笑い、雪は男達に命じる。そして女が断末魔の悲鳴を上げるのを、実に楽しそうに見ていた。




「キョーコちゃん…相変わらず凄い怖いなあ。鬼気迫るっていうか。あの狂気に満ちた表情……恐すぎて寒気がする」

キョーコの演技に社が思わず呟くと、蓮も直ぐ様同意した。未緒の時もそうだったがキョーコの狂気の演技には本当に呑まれそうになる。キョーコが凄烈なまでの狂った笑顔を見せる度、演技ではなく背筋が凍り付いている役者を何度見ただろう。それに今回の雪には兄と禁断の関係にあるせいか、狂気の中に妖しさとどことなく艶があり、女性らしい色気がプラスされて未緒とはまた違った雰囲気を醸し出していた。

「そうですね…それに兄と接している時とのギャップが……」

なんとも堪らない。可愛くおねだりされたら何でも買い与えてしまいたくなる。しかも素の最上キョーコではありえないスキンシップつき。それもかなり際どい行為まで予定されている。

それを反芻するだけで口元が弛む。蓮は慌てて手で口を覆った。

その行動が何を意味するかもうすでによく知っている社は心底思う。

(よかったな。最初この仕事を引き受けた時はただの普通の兄妹役かと思っていたが、まさかこんなご褒美があるとは)

兄を盲目的に愛し、甘えてくる雪は社から見ても可愛い。役じゃなくてもデロデロに甘やかせたくなる。おまけに具体的に台本に書かれている訳ではないが、この兄妹はどう考えても肉体関係がある。二人の間に時折流れる妖しい雰囲気やそうとしか思えない、そう匂わせるセリフがそこかしこに散りばめられていた。やに下がる蓮の気持ちが社にはよくわかった。

ただそのシーンになる度、キョーコが恥ずかしさのためか蓮に近寄らないようにしているのが気になるところではあるが……。

(まあ役に入っちゃえばキョーコちゃんほんと凄いし。過激なスキンシップもなんなくこなしてるから心配いらないんだけど……)

役が抜けている時のキョーコをどうするか。それが目下のところ、社の最大の悩みだ。




「モー子さんに……、モー子さんに、こ、こんなことするなんてえ~!」

私出来な~い、と絶叫するキョーコに、やれやれと奏江は呆れた。

(あくまでも役の上なんだから割り切ればいいのに。千織が不死蝶なんて呼んでる割にはまだまだね)

なんて思いつつ、再び台本を捲った。

確かに内容は強烈だ。

何度も「死んで」と言われ、挙げ句にそういうシーンはないものの暴行されてボロボロにされ、殺されるなんて。

しかもそれまで親友と思っていた相手からだなんて。リアルに考えたらなんて恐ろしいことなのだろう。まあこの暑苦しい親友なら例え天地がひっくり返ろうともあり得ないことだろうけれど。

まだぐずぐずと駄々を捏ねる本物の親友を、奏江は台本で軽く叩いた。

「ほら、いつまでそうやってるの。さっさと切り替えなさい」

でも本当は知っている。役に入れば彼女はどんな演技だってやってのける。役に入り込んで、本当に相手を殺してしまうのではないかと思えるほど、完璧な狂人を演じて切ってしまうのだ。

「よし!」

(私も気合い入れないと!この娘に呑まれてたまりもんですか!)

奏江は気持ちを切り換えるためにあえて声を出して気合いを入れ直した。キョーコに負けないように。




『あの娘が何をしているのか、あなたはご存知なのでしょう!』

『ああ……』

それがどうしたと事も無げに言われ、琴子は驚愕した。

『なぜお止めにならないのですか?』

『止める……?なぜ?』

『なぜって……。あなたの大切な妹が罪を犯しているのよ!それも人を…人を平然と殺して……。しかもあなたの婚約者だった人まで次々と。止めるのが当たり前しょう!』

魁は笑っていた。それも凄まじく美しい笑顔で。この狂気に満ちた表情は妹とそっくりだ。狂っているのは妹だけだと思っていた。けれど違った。兄の方も狂っているのだ。

『でしたら……でしたらなぜ私を婚約者になさったの?』

『セツが珍しく君を気に入っていた』

『それが?』

『セツは可愛い。とてもね。そして美しい。けれど嫉妬に歪むセツはもっと美しい。それが親友の君が相手だったら更に美しく歪むだろうと思ってね』

強すぎる愛情が互いを狂わせたのか。それとも最初から狂っていたのか。

どちらにしろこの狂った兄妹に自分は殺される。琴子は呆然とその場に立ち尽くした。そこへ雪がノックもせずに入ってきた。廊下からではなく隣の魁の寝室から。明らかに夜着と思われる姿で。かなりはだけ、胸が少しばかり見えている。そのしどけない姿に魁は少しも動じず平然と声をかけた。

『セツ?どうした?』

『琴子様とお二人で何を話していらしたの?』

『内緒だ』

『あら、酷い。わたくしに隠し事なんて……』

『秘密があった方が楽しいだろう……?』

『でも……お兄様のことなら何でも知っておきたいのよ。わたくし独占欲が強いの』

そっと手を伸ばし正面から抱き着き、ついと逞しい鎖骨に口付ける。

『悪い子だ……』

『お仕置きして下さいませ……』

『またかい?さっき散々してあげただろう?』

『……足りないわ』

『いいよ。後でたっぷりしてあげよう』

『後で?お仕事なんですの……?』

『ああ。セツは着替えて琴子さんと一緒にかふぇにでも行っておいで』

『……わかりました。琴子様、こちらで少しお待ち下さいませ。仕度して参ります』

そう声をかけられたが、琴子は動けなかった。立ち尽くしたまま動けない彼女を魁は椅子に座らせる。

『不破……』

廊下に控えていた家令を呼び寄せると琴子にお茶を持ってくるように命じ、魁は寝室に姿を消した。

その後しばらくして雪は華やかな京小紋を纏い現れた。今度は寝室ではなく廊下側の扉から。

鮮やかな朱色の地色にたくさんの小菊が描かれた小紋は雪によく似合っている。雪はにこりと笑うと凍り付いて動けない琴子を無理矢理車に乗せて連れ出した。




『約束だ。お仕置きしてあげよう……』

『お兄様……』

抱き合いながら寝室に向かう二人の姿を不破は黙って見ていた。

琴子はもうこの世にはいない。彼がわかるのはそれだけだ。

雪が先程まで纏っていた朱色の小紋。白かった小菊が真っ赤に染まっている。鮮やかだった朱色の地色は一部がくすんでしまっていた。けれどきっとこの部屋の主はそれを美しいと愛でるのだろう。

血塗れの小紋を魁の私室に掛け、不破は暫しそれを見ていた。

あとどのくらいこうして血に汚れた着物を飾ればよいのだろう。もうこれが最後であって欲しい。そう願いながらも魁に近付く女性と新しい着物を着て出ていく雪を黙って見送り、その着物を魁の部屋に掛ける。

自分も恐らくもう狂っているのだ。あの兄妹のように。

不破は二人の消えた寝室を振り返り、部屋から辞去した。

それに応えるかのように血塗れの小紋が哀しげに揺れる。赤く染まった小菊からは紅い血がまるで泣いているかのように滴り落ちた。

『わたくしにはお兄様が世界のすべて。お兄様さえいれば何もいらないの。だからわたくしとお兄様の間を引き裂こうとする者はたとえ神や悪魔でも死んでいただくわ』

『狂気に蝕まれた血塗れのセツはこれ以上ない程美しい。たとえ狂っていると言われようと、私はセツを愛している。私のセツ、もっと嫉妬に歪んでいけばいい』

兄妹の狂愛が螺旋のように絡まり、いずれは蛭田家を破滅させる渦になるであろう。

ただ今は狂愛に溺れるだけ。

兄妹の行き着く先は天国か地獄か。それは誰にもわからない。





<後書き>
最初カイセツが出た時にヤンデレか?と勘違い、私が思い付いたヤンデレを麒麟氏に話したのが運のつき。「それどうせなら蝶屋敷風で書いて」とおねだりされてしまいこうなりました。ああ、ついにスキビでやってしまった。





オマケ


ショー「んなもん地獄に決まってんだろーが!」

蓮「そうかな?二人で地獄に落ちたとしたら二人にとっては天国なんじゃないかな?ね、最上さん?(最上級のキュラキュラ笑顔で同意を求める)」

キョーコ「(間近にその笑顔を見て真っ赤になりながら)ははははは、はいぃ!!」

ショー「だいたいなんで俺がお前らなんかに仕えないといけねえんだよ!」

蓮「意外と似合っていたんじゃないかな?次は奴隷役なんていいんじゃない」

ショー「ふざけんな!俺様が奴隷だと?そこの地味で色気のねえ女ならまだしも俺が奴隷なんて似合うかよ」

キョーコ「ぬぅわんてすぅってえぇぇっ!!(怨キョ炸裂)」

蓮「最上さん?別に彼は君のことを言ったんじゃないよ。彼はきっと幻でも見ているんじゃないかな。もし君が地味で色気がないって見えるなら彼の目が悪いだけだよ」

キョーコ「でも…………」

蓮「君が色気がないなんてあり得ないだろう?さっきあんなに……(キョーコのうなじについたキスマークを舐める)」

キョーコ「わわわわっ…………(顔を真っ赤にしてパニック中)」

ショー「なっ!な、な、ななな、何やってんだよ、キョーコオォ!!」

蓮「さ、最上さん、帰ろうか(ショーを無視してまだパニック中のキョーコの腰に手をやりを優雅にエスコートし去ろうとする)」

ショー「ちょっ!待たんかーい!キョーコをどこに連れて行くつもりだよ」

蓮「(ショーを振り返りバカにしたように見下して)楽屋に決まってるだろ?(まあその後俺のマンションに連れて帰るんだけどね)」

ショー「てんめえぇぇ、いけしゃあしゃあ嘘つくんじゃねえよ!楽屋に連れて帰ってその後キョーコをお持ち帰りする気だろう!」

蓮「(なかなか鋭いな)……君には関係ないよ」

ショー「………なっ!ちょっとは否定しろよ!キョーコ、いつまでもボケッとしてんじゃねえ!そいつに喰われんぞ」

蓮「確かに食べさせてもらっているよ、彼女の手料理をね。最上さん、今日もお願いしていいかな?」

キョーコ「(パニックから立ち直り)も、もちろんです!」

蓮「ありがとう。あ、(キョーコの耳元で囁く)帰ったらさっきの続きしてあげるね」

キョーコ「い、いい、い、いりませんからあ!敦賀さんの破廉恥ーっ!!!(顔をゆでダコのようにして蓮の腕から猛ダッシュで逃げていく)」

蓮「くす。逃がさないよ」

ショー「キョーコに何いかがわしいこと言ったんだよ、この変態野郎!!」

社「キョーコちゃん、逃げてー!!」


終わり。本編があまりにもアレなんで気晴らしです。止めどころがなかったので強制終了。
◎「ヒールな兄妹」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「ヒールな兄妹」





大好きな兄さん。

強くてかっこよくて、誰よりもアタシを好きでいてくれる人。

みんな「怖い」とか「いつも不機嫌そう」とか言うけど、全然そうは思わない。

だって兄さん、アタシの前ではちょーカワイイもの。

そりゃあ多少乱暴だし横暴だけど。仔犬みたいな瞳で甘えて。子供みたいにダダこねて。

だけどそれは秘密。

兄さんのことはアタシだけが知ってればいいの。

アタシを酷い妹だなんて思わないでね。

ただ兄さんを独り占めしたいだけなんだから。

だからお願い。

まだ誰のものにもならないで。

誰も好きにならないで。

ワガママだってわかってる。

でも好きなんだから、仕方ないでしょ!

だから、諦めて。

カイン兄さんはアタシのものなんだから!




「なんだかなあ~」

社長が遣した『妹』は、それはもうヤバイくらいブラコンな妹だった。

カイン・ヒールを演じているだけで神経を使うのに、四六時中この妹といろと言うのだ。

はっきり言って、拷問だ。

社長は俺に死ねって言いたいのか?

これじゃあ起きている間は――いや寝ている間もか――気が抜けない。

社長は俺の理性の脆さを知らないようだ。

今はかろうじて堪えているが、もし二人きりのホテルで妹に「大好き、兄さん」なんて言われてみろ。

俺はあっさりと理性を捨てるだろう。

だから最上さん、早くその役降りてくれないかな。

俺がそう思うのとは裏腹に、彼女はどんどんセツカに入り込んでしまっている。なんだか最初と違って生き生きしてしてきたのは気のせいか?

なぜかセツカグッズも着実に増えているような……。

最初に用意されていた物以外、服など、俺が買ったのもあるが、ハンカチやアクセサリーなどの小物は彼女が買っているみたいだ。

考えたらヤバイことになりそうだが、きっと下着もそうなんだろう。

普段の彼女が身につけないようなセクシーな……考えない。考えない。

それにしても……。

俺は部屋を見渡しため息を吐いた。

ツインとはいえ、好きな女の子と同じ部屋で寝るなんて有り得ない。

社長はともかく、彼女も一体何を考えているのか。

入浴シーンを見られた時から思っていたが、男とみられていないのだろうか。

なんの警戒心もない彼女を見ているとそう思う。

いくらセツカの衣装に馴染みがないからって、もう少し姿勢を考えて行動してほしいものだ。ヤバイと感じるアングルが何度もあった。あれは目の保養…いや、毒だ。

俺の理性がヤバすぎる。

俺が何度、円周率を唱えたか、君は知らないだろう?

今君が浴びているシャワーの音にさえ危ないというのに。

それを、それを……。

『明日は兄さんのベッドに潜り込んでみようかしら』

なんて!!

どれだけ俺の理性を試したいんだ!

無防備な彼女に頭痛がする。

どうも勝手に『兄をびっくりさせよう週間』を始めてしまったらしく、俺を驚かせようとあの手この手で迫ってくる。

俺が難無くそれをかわすのが気に入らないらしい。

だからだろう。

明日は強行手段に出るつもりのようだ。

先程シャワー室の前を通り掛かった時、偶然聞いてしまったのだ。

勘弁してほしい。

俺は酒を煽り、台本に目を通していた。

いつものように先に繭状態で眠って、横に張り付かれでもしたら理性が決壊してしまうからだ。

俺は今ヒール!カイン・ヒールだ!

自分に言い聞かせ、彼女が出て来るのを待った。




しばらくしてセツカがシャワーから出てきた。

ろくにに乾かしもせず、髪を濡らしたままだったセツカは、俺がベッドに座っていると一瞬戸惑ったようだ。

いつも先に眠る俺が起きているので驚いたのだろう。

「に、兄さん。珍しいね、起きてるの」

「ああ。そろそろ撮影が始まるからな」

「ねえ、読み合わせっていうんだったっけ?してあげましょうか?」

ボディーソープの匂いをさせて、セツカが擦り寄ってくる。

「いらない。お前は先に寝てろ」

「嫌!ツマラナイ!」

不満そうな抗議の声を上げ、セツカが俺を睨み付けた。

「そんな顔したって無駄だ。俳優のまね事なんてお前にはできない」

「そんなことないわよ!」

むっと脹れたセツカの顔が子供っぽくて可愛い。

頬を抓ろうと手を延ばしたところ、ふいにセツカが膝に乗り上げてきた。

「隙あり!」

手に持っていた台本を取り上げられ、俺は怒ったふりをした。

「セツ、返せ」

「いやよ」

「セツ、セツカ」

強引に台本を持つ手を引っ張ろうとすると、セツカはするりと逃げ……バランスを崩した。

「キャっ!」

座りこんだセツカの服が捲れ、太腿が大きく曝される。

「セツ……見えてるぞ」

「へっ?」

しばらくして、セツカは鼓膜が破れそうな程の絶叫を上げた。

その後セツカはトイレにこもり、俺はホテルのバーに向かった。




「黒のTバックはないだろう……」

バーカウンターで一人酒を煽り、俺は息を吐いた。先程見た光景が脳裏に蘇り、頭が痛くなってくる。

黒いレースで出来たそれは、際どい部分をかろうじて隠しているだけだった。おそらくあれが、彼女がイメージしたセツカが穿きそうなセクシーな下着なのだろう。

彼女が絶対身につけなさそうな感じだ。

どこで購入したのか。店頭で買う…のはなんとなく彼女らしくない気がする。あんなに卑猥でエロチックな下着を彼女が選ぶ訳ない。

誰かに頼んだ?誰に?まさか社長…な訳はないな。いくら社長が頼んだこととはいえ、まさか下着のことまで相談しないだろう。

だとしたら通販?いや、そんなものが届いている様子はなかった。

そう言えば普段はどこで買っているのだろう。彼女はきっとピンクとかチェックとか可愛い感じの物を穿いてそう……って、俺は何を考えてるんだ、俺!

変態か、俺は!

自己嫌悪に陥りつつ、どうしたものかと悩んでいると、突然背後が騒がしくなった。

「ちょっと酒呑もうって誘っただけだろうが!」

「お高くとまってんじゃねーよ!」

なんだ?喧嘩か?

人が苦しんでいる時に……。

ギリリと拳を握りしめたところで、聞き覚えある声がした。

「大事な用事があるから邪魔しないでって言ってんでしょ!」

振り向いた俺の目に写ったのは、派手なピンクの髪に黒のパンクルックを着た少女だった。

酔っ払いらしき二人の男が彼女の腕を掴もうとしている。

俺は立ち上がり、怒りを一旦鎮めてから彼女に近付いた。




「セツ……何してる」

「に、兄さん!」

俺が低い声で呼ぶと、セツカはホッとしたようだった。

「どうした?」

「この人達がアタシに相手してほしいんだって。アタシは兄さんに用事があるのに」

「そうか」

すっと目を細めただけで酔っ払いどもはビビって手を引っ込めた。更に俺が少し近寄っただけで膝をガクガク震わせている。

こんな連中、相手にする必要もない。

連中には目もくれず、俺はセツカの手を取った。

「部屋に戻るぞ」

「はーい」

素直に返事をして、セツカが俺の腕に絡んでくる。

少し腕が冷たくなっているのは、湯冷めしたせいだけだろうか。

部屋の前までそうしてくっついていたセツカだったが、部屋のドアの前にくると、ぱっと俺から離れた。

「セツ……?」




「さっき見たの……忘れて下さいね」

耳まで真っ赤にした彼女の顔は、セツカではなく、最上キョーコのものだった。

「勘弁してくれ……」

せっかく忘れていたのに……。

またもや脳裏に浮かんだ黒いレースに、俺は深いため息を吐いた。

ほんとに先が思いやられる……。

俺はカイン。カイン・ヒールだ!





<後書き>
コミックスにて、ヒール兄妹が本格始動ってことで、書いてみました。いや、書き始めていたのはその前からですが。馬鹿ですみません。
蓮がただの変態ですみません。
先月の日記でちらりと書いたと思いますが、セクシー下着。私はイメージできないので、研修で一緒だった同僚に聞いたら色々教えて下さいました。穴あきとかあるらしくて、恥ずかしすぎました。普通のお店にも置いてるらしいですが、それらしいお店の方が品揃えはいいらしいです。

◎「誘惑ギミック」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
「誘惑ギミック」





『それってつまり 敦賀さん 私をどうにかしたいって言ってます?』

彼女の言葉に一瞬ドキリとした。

見透かされているのかと思った。

心臓がドクンドクンと鼓動する音が聞こえる。

試されているのだろうか。それとも解き放っていいのだろうか。だが、今想いを告げる訳にはいかない。だから俺は……。




彼女は貴島に連れられ、俺の前に現れた。まるで知らない女性のように、綺麗にドレスアップされ、腕を組み、腰まで抱かせて。

嫉妬で胸が真っ黒に染まる。余りの怒りにいつもの作り笑いが張り付く。

俺の笑顔に聡い彼女が怯えているのがわかったが、そんなこと、今は気にしていられない。いや、むしろ彼女にも味わってもらわないと。俺の心をこんなに掻き乱してくれたんだから。

他の共演者やスタッフと談笑しながらも、俺は貴島と彼女の話にずっと聞き耳をたてていた。俺が話を聞いているとも知らないで、彼女は群がる男達から寄せられる称賛に頬を染めている。あまつさえ、貴島とお似合いだなんて言われた上に、貴島の「付き合おう」発言にあっさり「喜んで」なんて答えている。

君はその場のノリのつもりだろうけど、貴島は本気だぞ!

そう言いたいのを堪え、俺は関係者にひたすら笑顔を振り撒いていた。彼女の声が聞こえる範囲で、けれど近付き過ぎない間隔を取って。そうしないと今すぐにでも貴島から彼女を引きはがしてしまいそうだったから。

怒りを内に秘めたまま談笑していると、貴島が彼女を占いコーナーへと連れて行こうとしているのに気付いた。やはり貴島は本気で彼女と付き合う気らしく、二人の相性を占ってもらおうとしている。そこで最上さんはようやく貴島が本気なことに気付いたようで、まず固まった。そしてちゃんと断ってくれた。

「誓いを立ててしまっているので……っ」

なんて言って……これは俺が彼女に約束させたこと……なんだろうなあ。

俺が独占欲にかられて無理矢理させた誓いを、彼女は律儀に守ろうとしてくれている。

自然と顔が綻んだ。

まだ飯塚さんが呼ばれたばかりだが、そろそろ邪魔、もとい、助けてもいい頃合いだろう。

「最上さん」

俺がそう呼ぶと、彼女は恐る恐る振り返った。まだ俺が怒ってると思っているようだ。

確かに怒っていたよ。

でも……今は許してあげる。

インタビュー待ちの間、俺は彼女の顔に書いてあった疑問に答えるついでに、無防備な彼女を窘めた。先輩からの注意、なんてかこつけて、彼女が他の男から狙われないように仕向けた。男性関係ばかり諌め過ぎたので慌てて事務所の教育方針なんて取り繕ったが、彼女は怪しみもせず素直に謝罪する。

ほらね。だから君は無防備なんだ。

俺がこうやって君に悪い虫か付かないようにしているのに気付きもしないんだから。

だから……。

彼女に対する独占欲は日々強くなっていく。

彼女に頼られるのは俺だけでいい。

その心根のままに俺は言ってしまった。

「誰に言うより真っ先に俺に言うんだよ?」

俺がそう言うと、彼女は急に口をつぐんだ。

何か俺、妙なこと言ったか……?

自分が漏らしてしまった本音を暴露したことにも気付かず、俺は最上さんを覗き込んだ。

「…最上さん?」

俺が呼び掛けると、彼女はまるで知らない女のような顔をして言った。

「それってつまり 敦賀さん 私をどうにかしたいって言ってます?」

妖艶な微笑みを浮かべる彼女に、俺は自分が何を言ったのか一瞬で理解した。そして……自分の気持ちにストッパーをかける。

「…今すぐ どうにかしてあげようか……?」

敦賀蓮ではなく、「俺」がこう切り返すと、予想通り、彼女は大慌てで俺から逃げていった。

呆れるぐらい真剣に狼狽えた彼女に、俺はため息をつく。

彼女が逃げるのを見越して、彼女の苦手な「俺」を演じた。わかっていたはずなのに苦しい。本当は俺から逃げないで欲しい。けれど今彼女を欲する訳にはいかない。まだ俺にはその資格がない。

だからまだ……。

「…何もしないよ 君には」

そう言って、彼女に言い聞かせるのと同時に自分にも枷を付けた。それなのに……。




「DARK MOON」の特番放送後、彼女の周りが騒がしくなった。彼女の魅力に気付いた馬の骨が爆発的に増えたのだ。おまけに貴島とのことも取り沙汰され、まことしやかに噂されるようになった。

ラブミー部員である彼女がそう簡単に落ちる訳がない。そうは思っていても彼女が男に狙われていると考えるだけでも許せない。彼女のことを他の男が話題にしているだけでも不愉快だ。

俺が不機嫌なのを彼女も感じとっているようで、セツカの姿でも少しびくついている。
理不尽な怒りを彼女にぶつけていいわけがない。そうは思っていても苛立ちを隠すことが出来なかった。

そんな中、映画の主演俳優、村雨がセツカに興味を示しているのに気付いた。最初にきっちり睨み据えてやったのに、奴は怖じけづくことなくセツカに近付いている。

ああ、くそっ!!

今日もまた俺の撮影中を狙い、性懲りもなくセツカに話かけている。

視界の端に映る光景に、俺は怒りを隠せなかった。本当に殺しかねない勢いでスタントマンを引き倒してしまう。

こんなことでは役に飲み込まれる。

ブラック・ジャックをカイン・ヒール、いや敦賀蓮として、演じ切らなくてはいけない。焦りはまた怒りを産む。

セツカと二人でホテルにいてもあまり落ち着くことが出来なかった。

そんな俺に最上さんから電話があった。一緒にホテルの部屋にいるのに。

「どうかした?」

セツカではなく最上さんからの電話だったから、俺もカインではなく敦賀蓮として対応した。

『やっぱり怒ってるんですか?』

「……えっ…………?」

『私が敦賀さんから注意受けたのに、貴島さんと噂されてしまったから……。確かに敦賀さんがおっしゃる通り私が軽率でした』

「も、最上さん……?」

『だから…だから……嫌わないで……』

今にも泣きだしそうに言われて俺は携帯を放り出した。そして簡易キッチンの隅でうずくまる彼女を抱きしめる。

「嫌う訳ないだろう……」

「つ、敦賀さん……」

「俺が君を嫌えるはずないよ。だって俺は……」

君が好きなんだから。

絞り出した声は彼女に届いたようだ。顔を真っ赤に染め俺を見つめている。

「敦賀さん……私、私……」

潤んだ彼女の瞳に俺が映っている。

「敦賀さんが……好きです」

そう言われた瞬間、俺は彼女もう一度強く抱きしめた。そして……




「……っ!」

鳥の声で目覚めた俺はがっくりとうなだれた。

夢か……。

せめてキスくらいしてから起こしてほしいな……。

なんて思っていると隣でもぞりと何かが動いた。

「…セツ……」

俺の横でスースーと寝息をたてるセツカ……。

いつ俺のベッドに潜り込んだ?

昨夜は確かに別々に寝たはずだ。

「う、う~ん……」

寝返りをうったセツカがこちらを向く。開けたキャミソールから胸の谷間と臍がちらりと目に入った。

「~~っ!!」

ただでさえあんな夢を見た直後で興奮していると言うのに!これはなんの罠だ!?それとも罰なのか!?

触れたくて堪らない。強力に締めていた理性のネジが緩んだ。

少し位構わないよね。いちゃラブ設定なこの兄妹ならなんてことない。いつものスキンシップの範囲だ。

社長も撫でる位ならいいってお許しも出してくれているし。

隣で君が無防備に寝ているのが悪いんだよ。

俺は開き直り、隣で気持ちよさ気に眠る彼女に触れた。

どこまでしたか……は歩く純情さんな最上さんに知られたら自害しそうなので言わないでおこう。

カイン・ヒールとしての生活はまだ始まったばかりだ。闇に打ち勝ち、ブラック・ジャックを演り遂げるためにも、セツカにはまだまだ傍にいてもらわないと。

ねえ、最上さん?





<後書き>
蓮視点も書いてみましたが、ちょっと難しかったです。最初、村雨くんは社長の送り込んだ(蓮に発破をかけるための)当て馬にしようと思いましたが、とあるサイトさんで予想以上に面白そうな方だなっと思いやめました。もうちょっと本誌で活躍してからいじってやろう 。

◎「彼の波紋」
2015年03月07日 (土) | 編集 |
ACT171~ACT175の内容です。



「彼の波紋」





特番放送の翌日、学校に行くと、何故か男子生徒達がちらちらとこちらを見ていた。女子生徒は私を見てこそこそ何か話し合っている。

何かしら?いじめ?

全く身に覚えがないけれど、弱肉強食の芸能界、やっぱり昨日目立ったから気に入らないってこと?

不審に思いながら教室に辿り着くと、今まで話したこともないクラスメートが勢い込んで話し掛けてきた。

「京子さん、昨日凄い美人だった~。言われなかったらわからなかったよー」

「私も~。それに大人っぽかったし」

やっぱり昨日のテレビのせいらしい。

散々言われたことを繰り返され、私はここでも同じ言葉を返した。

「あれは制服だった私に貴島さんが服もメイクもして下さったおかげで……」

「えーっ!何それ、京子さんて貴島さんと付き合ってるの?」

あら?違う反応……。

「いえ…別に。その……」

確かにお付き合いを申し込まれたけど、やっぱりあれはノリみたいだろうし……。

「付き合ってないのにってことは京子さんに気があるんじゃないの?」

「だよね~。服を贈るのは相手をあわよくばって思ってるってことだもんねー」

やっぱり敦賀さんと同じことを指摘されてしまった。これって一般的なことなの?

認めたくなかったけど、確かに敦賀さんは正しかったのよね。

気を付けないと。出ないとまた……。

一昨日の出来事を思い出してしまい、顔が火照ってきた。

「で、本当の所はどうなの?」

「本当になんでもありません!」

ブンブン首を勢いよく振って否定すれば、二人はふーん、と一応は納得したように席に戻っていった。

その後もひきりなしに同じようなことを聞いてくる人が後を絶たなかった。

はあ~。もしかして今日はずっとこうなの?

せっかく今日は一日授業を受けれると思ったのに……これじゃ平穏に過ごせないじゃない。

無視されたり、陰口を叩かれるのも欝陶しいけれど、こういうのも憂鬱な気分になるのね~。

女って面倒だわ。

もちろん不可解な視線を送ってくる男子も迷惑極まりない。言いたいことがあるんなら面と向かって言えばいいのに。

なんだか私、ささくれ立っている。

『何もしないよ、君には』

ただでさえ、そう言われて、モヤモヤした想いが燻っているのに……。

そういえば……。

一昨日は言われなかった。

あんなにみんな綺麗だと褒めて下さったのに。

あの人は言ってくれなかった。

自分でも矛盾してるってわかってる。

前にそう言われた時は、その言葉を放り投げたのに。今は言って欲しいって思う。

図々しい。

『綺麗だよ』

そんなに敦賀さんに言われたかった?

言われたらきっと逃げてしまっただろう。

本当に私って勝手だわ。

自分の気持ちを持て余す私に、翌日も嫌な視線が纏わり付いてきた。

こんなのはすぐに収まる。一時的なものだわ……。

そう思っていたのに、事態はあらぬ方向に向かってしまった。

『必死に否定してましたけど、あれは絶対付き合ってるますって~』

『そうですよね~』

この間真っ先に話しかけてきたクラスメートが無責任な発言をして、リポーターと一緒になって盛り上がっている。

「だから違うって言ってるのに!」

ワイドショーの画面に向かって怒鳴った私を、事務所の人が不審げに見た。

一週間経っても事態の収拾はつかない。

しかも有り得ないことになぜか、

『貴島秀人と京子は付き合っている』

なんてことになってしまった。

肝心の貴島さんが否定しないものだから、騒ぎは拡がる一方だ。

私の学校にも芸能レポーターが来てしまい、自転車で仕事場に行くのにも苦労した。

『事実無根です!』

何度も何度も言ったのに、私の発言は完全に無視されている。

『だから言ったろう……』

ああ~敦賀さんの呆れた声が聞こえてくる。

泣きそうになりながら、今日もセツカとしてカイン・ヒールの撮影場所に向かう。

でもカイン兄さんに逢うの、なんかヤダなあ~。

それがセツカとしての気持ちでないのはわかっている。最上キョーコとしての気持ちを抑えられないのだ。

だって心なしか兄さん、最近不機嫌なんだもの。

それが貴島さんのせいなのか、それとも、最近やたらと構ってくる村雨さんって人のせいなのか、さっぱりわからない。

ねえ、敦賀さん?

私に怒ってるの?それともセツカに怒ってるの?

私と私の中のセツカが同時にため息をついた。

「憂鬱~」

暗鬱な気分を振り払うように、セツカの長い髪を払った。



<後書き>
ACT172(7号)を読んだ当初から何か書きたーいと思いつつも形にできず(一ヶ月もあったのに)、次が出てしまいました。
ただ考えていた展開にまだ影響がなかったので書き続けてました。しかし、ACT174で今だにキョーコさんが綺麗に見えるのはローザ様云々って言ってるー!と慌てて書き換え(最初はもう変えるとおかしいのでやめました)ました。そしてどうせならACT175に出てきた彼もどうせなら出してしまえ!と見切り発車しちゃいました(笑)。
さて、彼とは誰とは?

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