花とゆめ連載「スキップ・ビート!」の感想&二次SS中心です。当サイトはリンクフリーです。
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☆「それはホントに夢かしら?蓮Ver」
2015年05月26日 (火) | 編集 |
「それはホントに夢かしら?蓮Ver」





鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いに目が覚めた。

トントンとリズミカルに何かを刻む音が聞こえる。

最上さんが朝食を作ってくれているのだろうか。ヒール兄妹が終わってから、彼女は以前にも増して俺の食生活を気にして自主的に食事を作りにきてくれるようになった。合鍵を渡してからは朝食も頻繁に用意してくれる。今日もそうなんだろう。

そう思ったら早く起きねばと急に意識が浮上した。ムクリと起き上がり、辺りを見渡すとそこは自宅ではなかった。てっきりマンションの自分の寝室で寝ていると思ったのに、どうも違うらしい……。

薄暗いが見知った部屋の間取りでないことはわかる。マンションのどの部屋でもない。かといってホテルっぽくもない。

あれ…………?

ここはどこだ?

暗くてはっきり見えないが、雰囲気からいってどこかの家のような気がする。

社長の家……?

しかしそれにしてもそこにいる理由が思い至らない。

そう言えば記憶も曖昧だ。昨日の出来事が全く思い出せない。

とりあえず起きようとベッド脇に足を下ろしたところで声が聞こえてきた。

「右京、カレン、そろそろパパを起こしてきてくれる?」

「うん、わかった!」

「ラジャー」

聞き覚えがある声に、聞き覚えのない声が応えている。二つの幼い子供の声。マリアちゃんよりも少し小さいぐらいだろうか。

パタパタと元気に駆ける音が聞こえたと思ったら、バタンと勢いよく部屋のドアが開いた。

「パパー!おっきろー!!」

なんとも可愛らしい声で、女の子が元気に駆け寄ってきて俺が寝ていた布団にダイブした。さっきの声の持ち主の一人だろう。

「あれ?パパもうおきてたんだ!」

女の子は俺の顔を見て嬉しそうに笑う。そして布団の上をよじよじと這って起きようとしていた俺に抱きついてきた。

「おはよう、パパ。ごはんできたよ!」

ぎゅーっとくっついてくる女の子を落ちないように抱いていると、不思議としっくりくるのに気付いた。子供を抱く仕事してたっけな?それにパパだって?

「カレン、はしっちゃダメだって。あ、パパおはよう」

訳のわからない情況に内心焦っていると、今度は七歳くらいの男の子が入ってきた。

「パパ?まだねぼけてるの?はやくおきないとママにおこられるよ」

???????

男の子は動かない俺に疑問を持つことなく部屋の奥へと進み、カーテンを開けてくれる。薄暗かった部屋に光が入り二人の顔がはっきり見えた。

俺の膝の上に座り、楽しそうに足をばたつかせている女の子は、少し幼いが小さい頃の最上さんに瓜二つ。黒い髪をピンクのリボンで2つに結んでいる。ただあの頃の彼女と違うのは瞳の色が青みがかった緑色だった。

そして男の子の顔は昔の俺に似ている。日の光に照らされて輝く金髪と、俺とは違う黒い瞳。その黒い瞳がいつまでも動かない俺を不思議そうに見ている。

「パパ?どうしたの?まだあたまおきないの?」

そう言いながら男の子が近付いてくる。

俺に似た男の子と最上さんに似た女の子。瞳の色だけがそれぞれ反対の色を持っている。

これはもしかして……。

推察した嬉しい答えに顔がにやけてくる。

「右京、カレン?パパまだ起きないの?」

そう言って部屋に入ってきたのは、予想通り大人っぽくなった最上さんだった。体がより女性らしくなっていて髪が伸びている。そして想像したより遥かに綺麗で、でもどこか可愛くて、大人の女性の色気と最上さんらしい溌剌とした雰囲気が絶妙の加減で同居し、何とも言えない魅力を醸し出していた。

「起きてるよ。おはよう」

カレンと呼ばれた幼女の頭を撫でながら笑顔で応える。

「おはよう、コーン。なんか嬉しそうだけどいい夢でも見たの?」

「うん、すごくね」

本当にすごくいい夢だよ。

君と結婚してこんなに可愛らしい子供がいるなんてね。

カレンちゃんを抱き上げて立ち上がり、最上さんにおはようのキスをした。嫌がる様子もなく応えてくれる彼女。

ああ、本当になんていい夢だ。

嬉しさのあまり長く唇を合わせていると胸を叩かれた。そして三方向からじっと見詰められ、三者三様の声を浴びせられる。

「もう~!長い!ご飯冷めちゃうわ!」

正面からは真っ赤になった最上さんからの抗議の声。

「パパ、カレンにもチューして!おはようのチュー」

胸元からはカレンちゃんからの可愛らしいお願いの声。

「パパ、あさからウザいくらいラブラブだね」

後ろからは右京くんからの呆れたような冷めた声。

とりあえず笑って最上さんに謝り許してもらい、カレンちゃんの頬っぺにキスしたらキスを返され、右京くんに酷いと訴えると冷たく一瞥された。

ほんとになんていい夢なんだろう。このままずっと覚めなければいいのに。

いつまでもふよふよと笑いを浮かべる俺に、三人は「今日のパパ、変ね」なんて言いながら楽しそうに俺の顔を見ている。

「よっぽどいい夢だったのね。どんな夢だったのかしらね?」

「あてっこしようよ、ママ!」

「カレンにあてられるわけないだろ」

「そんなことないもん!カレンだってあてられるもん!」

「あらあら、もう止めなさい。それよりほんとにご飯が冷めちゃうわ。早く行きましょう」

最上さんが二人を連れて部屋を出ていく。俺もその後へ続こうとして、何かに躓き壁で頭を強打した。




気が付くと見慣れたマンションの寝室で寝ていた。

やっぱり夢だったか…………。

起き上がり、がっくりと肩を落としたら頭からも何か落ちた。

……………タオル?

少し濡れた感じのするタオルは、確かに自分の家の物だ。それにしてもなんでタオルが頭にあったんだ?

不思議に思いながら枕元を見たら温くなった氷枕が置かれていた。

??????

こんな物を買った記憶も、ましてや枕元に置いた記憶もない。そういえば昨日どうやって帰ってきたのかすら思い出せない。

困惑しながら床に足を下ろしたところで誰かが近付いてくる足音がした。

「そろそろ起きていただかないといけないわね……熱下がったかしら」

いつもの最上さんがそう言いながら部屋の扉を開けた。

「あ……敦賀さん、なんだ、起きてらしたんですね。体の調子はいかがですか?」

「おはよう、最上さん。もう大丈夫だよ」

にこりと微笑みかければ、最上さんもおはようございます、と言って笑顔を見せてくれた。そして俺の額に手をあててまたふわりと笑う。

「うん、熱下がってますね。よかった……」

「ありがとう。最上さんのお陰だよ」

至近距離で最上さんの瞳を見つめて言えば、最上さんは少し紅くなった。

可愛いな……。夢の中でも可愛かったけど、現実の最上さんもやっぱり可愛い。

でも……本当に可愛かったな。最上さんも俺の娘も。早く現実に逢いたいな……。

可愛い娘にキスされた頬に触れば、自然と顔が弛んでしまう。

「機嫌よさそうですね。何かいいことでもあったんですか?」

「えっ?ああ、うん。いや、凄くいい夢を見たんだ」

「へえ~。どんな夢だったんですか?」

「ん?う~ん、忘れちゃった。どんな夢だったんだろ?なんか凄くいい夢だったっていうのは覚えてるんだけどね」

「確かにそういうのありますよね。またその夢見れるといいですね」

俺の吐いた出任せを疑うこともなく、最上さんは笑ってそう言ってくれた。

うん、確かにまた見れるといいな。

でも所詮は夢だ。それよりこの夢を現実にしないと。

そう決意して、その日から俺は最上さんにアプローチを開始した。

その結果、恐怖の大魔王に出会ったかの如く恐れおののき、逃げられ続けることも知らないで――――。





<後書き>
キリル大佐様からのバースデーリクエスト。以前麒麟様企画で書いたような未来の夢の話を蓮で。子供の名前もちょっとした設定もリクエストしていただいてありがとうございます。希望通りになっているでしょうか。
これが夢シリーズ2作目です。
☆「それはホントに夢かしら?キョーコVer」
2015年05月26日 (火) | 編集 |
「それはホントに夢かしら?キョーコVer」





気が付つくと、なぜか見知らぬ所にいた。まるで豪邸訪問を絵に描いたかのようなだだっ広いリビングに、どう考えてもオーダーメイドにしか思えない大きさのふかふかのカーペット、たいそう座り心地のよい革張りのソファ。そこに私一人が座っている。目の前にはホームシアターとしか思えない大きさのテレビが鎮座しているし、きょろりと視線をやればそこかしこにカメラや頭上にはライトのようなものまである。

豪邸……にしては特殊すぎる設備。どう考えても一般人というか一般的なお金持ちが住んでいるとは思えない。

「どこなの、ここは…………?」

バラエティーでロケ?いやいやそんなはずはない。そもそもバラエティーの仕事なんて『坊』以外今はしていない。

ドラマの撮影……にしては撮影機材が一切見当たらない。だいたいにして他のスタッフやキャストが全くいないのもおかしい。

それともラブミー部の仕事……?

「だめだ……全然思い出せない」

なぜこんな所にいるのか、どうやってここまできたのか。そもそも直近でどんな仕事をしていたのかすら思い出せない。これまでの記憶があいまい過ぎる。

「あれ?私こんな服持ってたかしら?」

そこで今度は自分の格好に気付いた。よくよく見れば着ている服にも見覚えがない。衣装にしては体に馴染みすぎているし、何よりも色使いが自分の好みにピッタリ過ぎる。シンプルだけれどレースやシフォン素材が然り気無く使われていて、可愛らしさと大人っぽさがミックスされたようなデザインだ。しかも着心地も触り心地も抜群にいい。きっと上質な生地が使われているのだろう。

服に触っていたら、自然と胸元にも目がいった。少しばかり大きくなっているような気がする。いやいや、気のせい、気のせい。

首を振ったところで不意に背後から声を掛けられた。

「キョーコ。後から日本に送って欲しい物があったら……」

この声はもしかして…………。

「せ、先生!」

振り向いて確認したらやはり先生がいらっしゃった。

思わず大声で叫んだ私に、先生は近付いてくるなりいきなりデコピンしてきた。それも思いきり。

「い、痛いですよ。なんですか、いきなり……」

「バカ者っ!痛くしないとまたボケたことを言うだろうが!」

「何もボケたことなんて言ってません、せんせ……」

言い切る前にまたデコピンされてしまう。

「わたしは悲しいぞ、キョーコ。そんなにわたしを他人扱いしたいのか……はっ!もしかして昨日勝手にリオン達にオモチャを買ったこと、まだ怒ってるんじゃないだろうな。いや…でもあれはしかし……」

先生が訳のわからないことを言いながら、ブツブツ何か言い訳めいたことを呟きだした。

それにしても……。

昨日?リオン達…?オモチャ……?

全くもって意味がわからない。どうも先生のお家にお邪魔しているらしいことだけはわかった。だとしたらここはアメリカ?さっき日本に送るって仰られていたし。

確かにいつでも遊びに来ていいと言われていた。けれど具体的な話はしていなかったし、それに先生と最近話した覚えもない。一体いつ約束を取り付けたのか。

もしかして社長が……?

ということはドッキリ的な何かで拉致られた?

「あり得るわ……」

「何があり得るんだ?というか荷物が見当たらないぞ?」

「荷物?」

「帰る荷物を整理していたんじゃなかったのか?」

「帰る?せ、せん…じゃなくて父さん……私もう帰らないと行けないんですか?」

今会ったばかりなのに……。

寂しいという意思をこめて見上げれば、先生は鳩が豆鉄砲を食ったようなぽかーんという顔をした。

「………………は?」

「父さんともっとお話ししたいな……」

ちょっと甘えた感じで言えば先生は固まってしまった。なんか先生らしくないわ……。もかしてお体の具合でも悪いのかしら。そう思って額に手を伸ばしてみた。

「父さん……?どうした……」

「そうかそうか。キョーコはまだここにいたいか!そうか、わたしもまだキョーコと話し足りなかったんだ!!リオン達も喜ぶし、何よりジュリが喜ぶぞ!!久遠のやつ……キョーコがそう言ってるならなぜ無理矢理帰るなんて……」

私の手が額に触れる前に、先生はかっと目を見開いた。そしてそれと同時に物凄い力で抱き締められたと思ったら、なんだか凄く嬉しそうな声を上げられた。

それに今なんか久遠さんのお名前が聞こえたような……。いえ、あれ?だって久遠さんってお亡くなりになっているのよね?

先生の腕の中で半ばパニックを起こしていると、急に背後が騒がしくなった。

『ほら、ちゃんとグランパとグランマにお別れ言ってきなさい』

聞き慣れた声が優しく諭す。

この声……どう聞いても……いやいや、聞き間違いよ。でも…………。

先生の腕の中から何とか離れ、恐る恐る振り向けば……。

「コーン……?」

あの日、グアムで別れた妖精王子が、あの日のままの姿でそこにいた。足元には可愛らしい二人の天使を従えている。

そして傍らには生きた宝石みたいに美しい、ダイヤモンドのようなきらめきの、ヒトとは思えない……まさに妖精界のクイーンが降臨されていた。

『いやだ~っ!!おわかれしたくないよ~』

『そうよね~。グランマもとっても寂しいわ。ほんと寂しくてあと1日で死んじゃうかも』

『え~っ!!そんなのいやだ!グランマしなないで!!』

『やだやだ。しんじゃやだ!ねえ、パパ。グランマしんじゃうのやだからまだここにいようよ~』

『…………孫にまでそんな嘘つかないで下さい、母さん』

『あら、失礼しちゃう。ほんとよ。ほんとに寂しいと死ぬんだから』

『どこかのウサギでもあるまいし。父さんも笑ってないで母さんをなんとかして。ねえ、キョーコ?』

「……ありえない……私…妖精の国に来たのかしら…………」

「だよね……って…………へっ?」

「ありえないわ……なんなのこの夢」

「夢……?何を言ってるの?キョーコ……?」

金髪の敦賀さん……じゃなくてコーンが不思議そうに首を傾げながら近付いてくる。私は思わず後退り、ソファの影に潜めた。

「キョーコ?一体どうしたの……?」

「なんなのこの夢は……どうやったら覚めるの…………」

何がどうなっているのか。ぐるぐると混乱してきた。踞っている私にコーンが二人の天使を伴い近付いてくる。心配そうに顔を覗きこまれ、ますます訳がわからなくなってきた。

「父さん……キョーコ、何かあったんですか?」

「さあ?わたしは知らん。二階から降りてきたら他人行儀に昔の呼び方をされて、腹が立ったからデコピンしただけだ」

「昔の呼び方?……って、何俺のキョーコにデコピンしてるんです!キョーコ、大丈夫?痛くない」

再び覗きこまれて混乱というレベルを通り越し、脳がショートした。

「ママ?ママもいたいの?ママもしんじゃう?」

「いやだ!!ママしんじゃやだ!」

泣きながら抱きついてくるまるで妖精のような天使達。思わず抱きしめてしまった。

「大丈夫よ。死なないから。ね、泣かないで?」

「ほんと?ほんとにママしなない?」

「ええ、死なないわ」

ぽんぽんと優しく背中を撫でてやれば、二人の天使達はそれはもう可愛らしい顔で笑った。

なんて可愛らしい生き物なの!!

思わずムギューと強く抱き締めてしまう。

今さらだけど……ママ……ママって私のことよね……?

だからその……つまり結婚してるってことで……相手は…………。

「ズルいぞ、二人とも。俺もギューして貰おうかな」

なんて言いながら、私を正面から包み込むように抱き締めてきた。ふわりと香る優しい匂い。安心するこの感じ…………。

「お前がキョーコに抱きついてるだけじゃないか」

「うるさいですね。おかげさまでキョーコには昨夜たくさん抱きついて貰いましたから、そのお返しです。ね、キョーコ?」

にっこりと神々しい笑顔。なのになぜか内容はとてもハレンチなような気がする。

「「『キョーコ?』」」

「「ママ?」」

6つの目が上から。4つの目が下から不思議そうに見つめている。

私は一体どこにきてしまったの?

夢なら早く覚めてえ!!




「…………という夢だったの」

「ふ~ん。激しくのたうち回ってるから、一体どんなキツいミッションさせられてるのか心配したじゃない」

心配して損したわ、とモー子さんは颯爽と部室から出て行った。

「相変わらずつれないなあ。でも……心配して貰えちゃった♪」

モー子さんの家に泊まって一緒に出勤できただけでも嬉しいのに、夢に魘される私を心配してくれるなんて…………。

「ふふっ♪。モー子さん、だーい好き」

本人を前にして言えば絶対怒られそうだけど。

怒られる……ってそういえば先生にされたデコピンもほんとに痛かったなあ……妙にリアルだったわよね~……。

ほんとおかしな夢。

でも…………。

夢の中のコーン。亡くなったはずの先生の息子さんであり、そして……。

私は知らない。

この夢が何年か後には現実になることを。

この時の私は知るよしもなかった――――。





<後書き>
4年前に書いて、お蔵入りしてた麒麟様へのプレゼント企画SS。これが夢シリーズ第一弾です。今回掲載するにあたって昔書いたのを今回一部書き直してみました。当時読んでいた方、わかるでしょうか。合宿みたいで楽しかったからまたお泊まり会したいね~。まあ結婚したから無理か。
☆◎「恋する炭酸 side光」
2015年04月08日 (水) | 編集 |
「恋する炭酸 side光」





神様、仏様、カンドードリンコ様!!

ありがとうございます。感謝します!!

なんとなんと、カンドードリンコのCMに起用されることになった。しかもブリッジ・ロックとしてでなく、俺がピンで!

しかも!しかもだ!!

キョーコちゃんとの共演だとか。

これは夢か?それともドッキリなのか?

正直代理店の方々と打ち合わせしていても、俺はまだ半信半疑だった。テレビのドッキリなら撮影するまではほんとに仕掛けてきそうだから。

でもほんとにほんとにほんとだった。

撮影日、キョーコちゃんに挨拶されてようやく信じることができた。よしんばCM自体が嘘でもキョーコちゃんと一緒に撮影して貰えるだけでも嬉しいし。

しかも今回は、前回キョーコちゃんが出演していたキュララの別バージョンで高校生の淡い恋愛を描くんだとか。

恋だよ!恋!

キョーコちゃんと共演できるだけじゃなく、なんと恋人を演じられるなんて。なんて夢のような話なんだ!!

打ち合わせで聞いたら、今回のキュララは前回の弾けるような清涼感に加え、爽やかな飲み心地をそのままに、桃とレモン、女の子が好きなベリーをミックスさせた新感覚の炭酸飲料とのことだ。何種類かのベリーが絶妙に配合され、レモンがきりっと、ベリーと桃の甘さがふわりと香り、爽やかかつ甘酸っぱい味わいとなっているそうだ。

その味わいをイメージさせたのが高校生の淡い恋愛なんだそうな。

キョーコちゃん演じる“桃”と俺が演じる“涼”が幼馴染みから恋人になった。そんな初々しい高校生のカップルを演じないといけないらしい。

それにしても高校生かあ~。なんでよりにもよってCMデビューが高校生役なんだか。そりゃコントでなら制服は着てるけどさ。ま、でもキョーコちゃんとお揃いだからいいか。

「俺、もう普通に制服なんて着る機会なんてないと思ったよ~。似合わなくて降ろされるのも嫌だけど、似合ってもショックだなあ。慎一なんてそのまま高校通っててもきっと違和感ないよ、なんて言いやがってさ」

思わず俺が愚痴ると、キョーコちゃんはクスクスと可愛く笑ってくれた。そして、

「でも、相手役が光さんがよかったです。私ちょっと緊張してて……」

なんて恥ずかしそうに言うからこっちが恥ずかしくなってきて顔が火照ってきた。

「俺もキョーコちゃんでよかったよ。CMなんて初めてでどうしようかと思ってたんだ~」

「えっ!?CM初めてなんですか?」

「そうだよー。番宣とかはあるけど。でもそれも俺一人じゃなかったし。だいたい今更高校生役だなんて~」

「頑張って、“涼”。な~んて……ふふ」

キョーコちゃんが突然雰囲気を変えてコケティッシュに言う。どうやら今日の役、“桃”になっているみたいだ。

もう役が出来てる!ま、負けてらんない。

「が、頑張るよ“桃”?」

「よう!もうすでに雰囲気作りか?えらく仲良さそうじゃねーか」

なんとか俺が今日の役“涼”になって返した所で、黒崎監督が後ろから現れた。今日も顎ヒゲをワイルドに生やし、濃い色のサングラスをかけている。この間初めて会った時から思っていたがやっぱり監督には見えない。下手すればヤーさんに間違えられそうだ。

「おはようございます。黒崎監督」

「お、おはようございます!!監督。今日はよろしくお願いします!」

「おう!よろしくな!キョーコも前みたいに自然体で頼んだぜ!」」

ニッと笑って監督はそのまま俺達を抜いていった。

「やっぱり撮影の時もあんなんなんだあ」

しみじみ呟くと、制服を持ってきてくれたスタッフさんが「そうなんです。いつも職質されそうになってるんですよ」と笑いながら教えてくれた。

簡単な打ち合わせの後、すぐに制服に着替えさせられて今日の最初の撮影場所である教室へ向かった。

用意された制服は濃紺のブレザーで、まあ胸ポケットの校章さえなければスーツに見えないこともないシンプルなデザインだった。

似合ってるか?違和感……ないよな?

「学ランじゃなくブレザーなのがまだ救いだよなあ。これで学ランだったらコントだよ」

「そっちもきっと似合ってたわよ、涼」

「桃ひでぇ!」

またキョーコちゃんが役になっていたので役で返した。普段のキョーコちゃんと違って、桃にはなんか小悪魔的な魅力がある。

いや、普段のキョーコちゃんに魅力がないって訳じゃなくて、むしろ俺には魅力的…って、いや、何言ってるんだ、俺!

とにかく普段のキョーコちゃんも可愛いけど、今日も可愛くて引き摺れそうになる。ほんとの彼女だって勘違いしそうで。

演技なのに演技じゃなくなってしまう。

私立高校を借りての撮影だから日曜日の今日中に仕上げないといけない。なのにいくつものシーンをカメラアングルを変えて何カットも撮影する。本当なら撮り直しなんてしていられない。でもやっぱりこだわり派の黒崎監督。時間がないのに納得できるまで同じシーンをやらされた。

特に大変だったのは二人で校舎内を疾走するシーンだ。

『競争しない?』

『競争?』

『負けた方はバツゲームだからね!』

『バツゲームぅ?』

『いくよ!よーい、ドン!』

放課後、教室から部室まで全力疾走するというシーン。教室、廊下、階段、色んな場所をアングルを変えて何パターンも撮影する。カットの声の度にエキストラの配置を変更したりして、小間切れで走らされているから距離としては長くない。けれどたとえ短い距離でも全力疾走はかなり体力を消耗する。

もう限界だと思った所でちょうど休憩を告げられた。

お、終わった~。

あまりの疲労に俺は思わずその場に座り込んでしまった。なのにキョーコちゃんは全然疲れた様子がない。そういや『坊』でも結構ハードに動いてるもんなあ。あの着ぐるみで動くの大変なのに。

「キョ、キョーコちゃん……た、体力あるなあ。俺…もう結構キツイや……」

ゼーゼーと肩で息をしていると、キョーコちゃんがキュララを差し出してくれた。まるで女神のように。

「いえ、私も辛いです。もう一回走れって言われてももう無理です」

「もう一回は絶対無理。死ぬよ、マジで」

ハハっと軽く笑えば、キョーコちゃんもクスリと笑ってくれた。

こうして二人でいるとなんだかほんとに恋人同士みたいだ。いつまでもこうしていたいなあ。

撮影が長引けばそれだけ長く一緒にいられるよな……。

不埒な考えが頭を過る。ちらりと隣のキョーコちゃんを見ると、キョーコちゃんも疲れているのかぼんやりとしていた。

いつもと違う白いセーラー服ののキョーコちゃん。素のキョーコちゃんに近いけれど、一度撮影に入ればその表情をガラリと変える。彼氏の気を引きたくてちょっとしたいたずらをしたり、可愛く我が儘を言ったり。普段の礼儀正しいキョーコちゃんとは違う、今時の女子高校生なキョーコちゃん。

役じゃなくて素のキョーコちゃんで見てみたいなあ…なんて思ってしまう自分に笑ってしまう。

告白すらしてないのに。たかが番組で一緒になっているだけなのに。

欲って怖い。

一緒にいれるだけでよかったはずなのにどんどんそれ以上求めてしまう。

「休憩終わりでーす。撮影再開しまーす」

スタッフさんの声が聞こえ、よっと腰を上げた。キョーコちゃんに手を差し出したが、反応がない。

聞こえなかったのかな?

「キョーコちゃん?」

声をかけたのになんだかぼんやりしている。やっぱり疲れたのかな?

「大丈夫?もうちょっと休憩もらう?」

顔を覗きこむと少し顔色がよくない。

「い、いえ……大丈夫です」

「そう?でも顔色悪いよ?」

「ほんとに大丈夫ですから」

キョーコちゃんはそう言うけど顔色は悪いままだ。やっぱり心配だし……そうだ!!

「キョーコちゃん、汗かいてるからメイク直しいいですか?」

近くにいたスタッフさんにそう頼むと、すぐにメイクさんを呼んでくれた。

これでちょっとはよくなるかな?




メイクを直したキョーコちゃんはすっかり元通りなって、俺を惑わす桃へとなっていた。

さっき休憩前に撮り終えたシーンの続きからの再開で、走り終えた所からだ。

『いっちばーん!はい、私の勝ち!』

部室まで走りきったキョーコちゃんは少し後ろを走っていた俺を振り返り、得意気にニッと笑った。

『ま、負けた~』

ゼーゼーと肩で息する演技をした俺はがっくり項垂れてそのまま倒れ込んだ。さっきは素だったが疲れの取れた今は演技だ。

『じゃ、罰ゲームだからね!』

嬉しそうにキョーコちゃんが言う。

『マジかよ~』

『目瞑って!』

『へ、変なことするなよ~』

『ほら、早く!』

俺が素直にが目を瞑るとキョーコが座り込んだ俺の前に腰を下ろすのがわかった。顔を寄せ、顎に手をかけられる。キスを迫るような雰囲気にわかっていてもドキドキする。息がかかり唇が近付いてくる感じに、演技じゃなく心臓が張り裂けそうになっていた。顔が自然と紅くなり、地面に付いている手は汗ばんでいる。

ドキドキ、ドキドキ。ドキドキ、ドキドキ。

これ以上ないほど唇が近付いたと思ったとたん、ふにっと押しあてられたものの感触にびっくりして思わず目を開いてしまった。

『つっ!つっめてぇー!!』

叫び声をあげた俺に、キョーコちゃんがキャラキャラと笑い声をあげる。

『罰ゲームって言ったでしょ!』

ふふっと小悪魔のような微笑みを浮かべたキョーコちゃんは持っていたキュララ俺に差し出した。

『半分こだからね』

『ケチくせーの!』

『私だって走ってのど渇いたんだもん!早く飲んで!』

むうと軽く怒ってねだるキョーコちゃんが凄く可愛い。もう少しこの顔を見ていたいなあ……いやいや、とりあえずここは台本通りにしないと。素直にキュララを飲むと、

『美味しい?』

キョーコちゃんが上目遣いで聞いてくる。

ああ……なんて可愛いんだ。

『ああ……』

『ふーん、じゃあ私も貰うね!』

ひょいと俺の手からキュララを奪うと、キョーコちゃんは飲み干し言った。

『間接キス……だね』

僅かに顔を紅く染め、ふわりと笑ったキョーコちゃんくらくらしそうになる。

なんか…なんか……すげー可愛い!!

キョーコちゃんは空になったキュララのペットボトルの側面にキスをすると、俺に向かってそれを放り投げた。

『罰ゲーム!ゴミ箱に捨てておいて!』

そして天使みたいにニコっと笑うと部室まで走っていった。

『間接キス……』

素で惚けていた俺は渡されたペットボトルを握り締め……キスをした。キョーコちゃんがキスをした同じ場所に。




「お疲れさん!いい絵が撮れたぜ!」

「黒崎監督、ありがとうございました!」

「お疲れ様でした!」

「涼の最後の表情は特によかったぞ!」

「は、はい!ありがとうございます!!

撮影後、俺とキョーコちゃんが揃って挨拶に行くと監督が上機嫌に肩を叩いてきた。そして俺の最後の表情を褒めてくれる。でもあれは……。

「いや……あれはキョーコちゃんに引き出して貰えただけで……」

そう、キョーコちゃんの表情に思わずそうなっただけだ。キョーコちゃんの演技につられただけで……いや、違う。あれは演技じゃなかった。

俺は本気だった。なのに……。

「そんな…私こそです。なんか自然に振る舞えたっていうか……楽に演じられましたから。なんか光さんって頼りになるお兄ちゃんみたいです!」

キョーコちゃんのその発言に、目の前が真っ暗になった。茫然自失した俺の隣では黒崎監督が盛大に吹き出しいる。

「ブーっ!!アハ……、アハハ……くくっ……いや、ハハハハ……」

「黒崎監督……?」

監督はひとしきり笑った後、なぜか俺に近付いてきた。そして、

「こりゃあ落とすの、大変だぜ“お兄ちゃん”?」

なんて耳打ちされるとは。

バ、バレてる~。

顔から火が出そうになって、俺は監督から思いっきり離れた。

笑われてる時はまさかと思ったけど……なんで?俺が演技出来てなかったから?

駄目だ。顔上げられない!!

「黒崎監督?光さん?どうしたんですか?」

「いや~走ってる時に、キョーコがパンチラしてたから、こいつも見たかと思ってな!」

俺の気も知らないでガハハと豪快に笑う監督はヒラヒラ手を振って帰っていった。

「パ、パンチラーっ!?ほんとですか、光さん!!」

キョーコちゃんが絶叫して詰め寄ってきた。

た、頼むから今近寄らないで~!

「し、知らない知らない!わ、悪いけど…お、俺は帰るから!!」

そう言い捨てて俺はその場から逃げた。

逃げるしかなかった。

だって……さ。“お兄ちゃん”はないだろう!?




その日の夜、俺はバーで酒を煽りながら自己嫌悪に陥っていた。

いくらショックだったからって……しっかりしろよ、俺!逃げるようにして帰ったからキョーコちゃん、変に思ってないかな?

監督にもバレてるし……演技出来てなかった証拠ってことだよな。

「はあ~もう!!」

CMデビューだったのに落ち込んでいる俺に、慎一も雄生も何も言わなかった。いつもは煩いくらい構うくせに。

でも今はそれが有り難い。

今日は。今日だけはそっとしておいて欲しい。そういうオーラを出していたんだろう。

「お兄ちゃんなんてくそ食らえだーっ!!」

意味不明な絶叫した俺を二人が不審そうな目で見ていた。

忘れよう。今日のことは。

そう決心してぐいと酒を飲み干した。爽やかで甘いキュララとは違う、キツイ苦い酒を。





<後書き>
薔薇姫様のキリ番リクエスト採用バージョン。
キョーコ視点で書いたら、「これ、光視点で書いて 」なんて言われて頑張って書きました。書いといて何ですが、ブリッジ・ロックはCMデビューしてそう。


★◎◇「クレイジー・ナイト」(クレパラのSSです)
2015年03月26日 (木) | 編集 |
*ごめん、結局書き直してない。



「クレイジー・ナイト」



しなやかな肢体。
目を奪われる俊敏にして流麗な動き。
そして美しくも鋭い眼光。
確かにあの野郎の言うようにこの黒豹のようだ。
俺はいまだに組員を怯えさせているカーリーを見ながら思った。
カーリーはのほほんと眠っている。
サイボーグのくせに司がいないと四六時中ダラダラとこうして寝ているようだ。しかも司がいる時は嘘のように上機嫌にじゃれつくのだから腹が立って仕方ない。
俺がいながらこいつと戯れるなんて!
と思いつつもそんなあからさまな嫉妬をすれば司に笑われるので声に出したりなどしない。
『カーリーにヤキモチなんて』
とニヤニヤされるのはごめんだ。
はあとため息ついでに煙草を手に取れば、背後に控えていた渋谷がすかさず火を着けた。
今日は煙草を吸っても止めるやつがいない。
司が傍らにいないだけでこんなに空虚な感じがするとは思わなかった。
「早く帰ってくるといいですね」
俺の考えを読んだように渋谷が言う。俺はそれに同意せず無言で新聞を広げた。



今日は司が朝来と買い物に行っている。
ついていこうとしたら下着を買うからと断固拒否された。それならなおさら選びたかったのだが、さすがにそれを朝来の前で言うのは憚られた。
俺が揉むからか司の胸は順調に育っている。片手では掴めないぐらい大きいうえ、形もよく垂れることなくぷるんと張っていて非常に好ましい。
始めの頃は真剣に嫌がっていたが、段々と恥ずかしさから嫌がっているだけになり、今では場所さえ選べば黙って身を任せている。まあさすがに真っ昼間に寝室以外でエロい触り方をすれば鉄拳制裁を喰らうが、それもただのスキンシップの一部だ。
傍にいると触り心地のいいあいつの胸を四六時中揉んでいたくなる。
それが更にあいつの胸を育てることになっている原因かもしれない。
司の胸はもうさらしだけでは隠し通せなくなってきた。あいつの兄が調整しているプロテクターも許容範囲の限界らしくかなりキツいようで、家にいる時には外して過ごしている。
組員たちの手前何も着けない訳にもいかずしぶしぶ下着を着けてはいる。
しかしあまり興味はないようで自分で買っているらしい下着は毎回同じようなスポーティーなタイプで色気がない。すぐ外すとはいえやはり服を脱がせた時の楽しみは欲しい。
どうせなら色気のあるやつにしろと俺が買った下着はハレンチ過ぎるとめったに着けてはくれない。
まあ全く着てくれない訳ではないので俺もあまり気にしてはいなかったが、どうもサイズや選び方自体が合っていないらしい。
それを朝来に指摘され今日一緒に買いに行くことになったのだ。
朝来がついているからあまり妙なのは選んでこないだろう。
いつも司が選ぶのは色気のない白やボーダーばかりだから赤や黒、紐…もいいかもしれない。
ドレスを着せた時に合わせた下着は紫のレースだったがあれも中々よかった。深い紫が何ともセクシーでレースの透け感が際どい部分ギリギリまであって脱がせた時はかなり興奮した。
一体どんな下着を買ってくるのか。
それからどうやって脱がせるか。
帰ってくるのが楽しみだ。
ニヤリと笑った俺に渋谷が一瞬固まったが、何事もなかったように灰皿を片しにいった。



夕方になって司はようやく帰ってきた。
司が敷地に入ったとたんむくりと起き上がり玄関に向かっていったカーリー。いつものようにひとしきりじゃれてくるだろうなと思ったら珍しいことにすぐに入ってきた。
かなり買い込んだらしい荷物の音に振り向いて思わず息をのんだ。
しばらくじっと見てからようやく言葉が出た。
「その服はどうした?」
今日は下着を買うから女装…最近は家にいる時はほぼそうさせている…していたのだが出掛けた時とは違うかなり色っぽい格好をしている。
肩を出し胸が見えか見えないぐらいギリギリまで深く切り込んだネックライン、ボディーラインを強調するデザインのカクテルドレスは司によく似合っている。メイクもアップにした髪の毛もそれに合わせたものになっていていつも以上に俺を魅了した。
「それがさ、朝来が服も見ようって言い出して…似合わないか?」
俺をうかがうような上目遣いの瞳に思わず息を呑む。
「………出掛けるぞ」
「へ?」
「は?」
司と渋谷が同時に声をあげる。
「その格好のままでいいから荷物置いてさっさと準備しろ」
「な、なんなんだよ、一体…」
文句を言いながらも司は素直に自分の部屋に向かった。
「さ、三代目、今日は緑竜会との会合が…」
「キャンセルしろ。あとすぐにロイヤルホテルのエグゼクティブスイートを予約しろ」
「そっ!は…わかりました」
何か言いたそうにしながらも渋谷は頷いて部屋を出ていった。
俺もそれなりの準備をするか…。
あいつのドレスに合わせてワインレッドのネクタイと着け胸元にも同じ色のハンカチを入れる。
普段はしない香水を首筋と手首に少しつけた。
その状態で待っていると司はすぐにやってきた。
戻ってきた司はドレスと同じワインレッドのクラッチバックを持っていた。
「それも買ったのか?」
「いや、ドレス買ったら似合うからって店の人がくれた」
「靴は?」
「靴は朝来と店の人が色々選んできた」
着せ替え人形状態で疲れたと司は言って笑った。それでも最後まで付き合ったのだろう。
俺と一緒の時は終始文句を言って途中で切り上げるくせに相変わらず女には甘い。
「三代目、車の準備が出来ました」
「よし、行くか」
「どこに?」
「デートだ」
「…………………は?」
呆けた表情の司を引っ張り車に乗せまずは埠頭に向かった。
「なんで急にデートなんだよ!」
「昼間は朝来に付き合ったんだから夜は俺に付き合え」
「なんだよそれ…」
ブツブツ文句を言いつつも隣で暗い海に浮かぶ街灯りを見ている。司の瞳に映るその光が綺麗で更に俺を魅了する。
海風がほんの少し伸びた司の髪を靡かせる。初秋とはいえやはり夜は少し肌寒い。
「寒くないか?」
「ちょっとだけ」
そう言ったので後ろから抱き締めてやる。
「こうすりゃあったかいだろ」
「そこまで寒くねえよ」
そう言いつつも離れようともせず胸に体を預けたままじっとしている。
「司」
「ん?」
振り向いた所で不意打ちに口付ける。
いきなり何するんだと殴られるかと思ったが
「…………………バカ」
と視線をそらし顔も耳を真っ赤にさせてぽつりと言っただけだった。
それが可愛かったので顎を持ち上げて今度は深く唇を合わせる。爪先立ちにさせた司の体を片腕で支え少し強引な態勢で舌を捩じ込み息つく隙を与えないよう貪った。
司の体から力が抜けたのを見計らって唇を離せばガクンと膝から崩れ落ちそうになっている。もちろん片腕で支えているからそんなことにはならないが。
「このドスケベ!エロじじい!変態!」
息を整えてから司はキッと俺を睨みつけ罵った。そんな涙で潤んだ目で見られても色っぽいだけだ。
「今さらだろ?」
ニヤリと笑えば司は鳩尾を殴ってスタスタと先に車に戻ってしまった。
やりすぎたか…。
さすがに痛いなと殴られた箇所を押さえつつ車に向かう。
「大丈夫ですか?」
「ああ。大したことない」
「加減すりゃいいのに。照れ隠しも暴力だと三代目も大変ですね」
「加減はされてるさ。本気でやられたら起き上がれない」
心配する渋谷に言えば
「それもそうですね」
とあっさり言われてしまった。
実は以前そんなことがあったのだ。
司に殴り倒され昏倒していた所を渋谷に起こされた時の羞恥心は忘れようもない。
「そろそろ予約した食事の時間ですが」
「ああ。向かってくれ」
そう指示して車に乗り込めば司は膨れっ面のままそっぽを向いている。
「そんなブスくれた顔してたら綺麗な格好が台無しだぞ」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
「…悪かった。お詫びに今日は好きなだけ食べていいぞ」
「そ、そんなことじゃごまかされないからな!」
と言いつつも嬉しそうだ。単純だな。
ホテルに到着すると司は目を見開いて呆気にとられていた。
一応エスコートするように腕を組んだがロビーに入ったとたんするりと離れて勝手に歩き出す。
「ここメチャメチャ高いとこじゃねえか!」
そして興味津々そわそわしながらあちこちに視線を泳がせる。
「おい。せっかく綺麗な格好してるんだ。ガキみたいキョロキョロするな」
ドレスで美しく着飾っていてもこれでは台無しだ。
「だって貧乏人の俺には縁遠いとこなんだぞ!お前の仕事以外でこんなとこ二度と来れねえよ」
「こういうとこが好きならいくらでも連れて来てやる」
ホテルくらいでこいつを釣れるなら容易いものだ。
「別に好きな訳じゃねえよ。ただ物珍しいだけだ」
案の定これだ。
ほんとに一筋縄ではいかない。
「とにかくさっさと部屋に行くぞ」
「部屋?そんなもん取ったのか?」
「黙ってついてこい」
色気もそっけもないが司相手にそんなものを求めるだけ無駄だ。色っぽい雰囲気なんて…その時まで全くない。
専用のエレベーターで最上階へ向かえば、司は落ち着かない様子で大人しく俺の腕に掴まっている。
「そんなにビクビクしなくても誰もお前が貧乏だからって捕らえたりしない」
「ちっ!ちげえよ!ここの床柔らか過ぎてこの靴じゃ歩きにづれえんだよ!」
真っ赤になって俺のからかいに反論し腕をつねってきた。
そんな言い訳も少し可愛いと思うのは惚れた欲目だろうか。
部屋に着くと全面ガラス張りの窓からは煌々と灯りの点る夜景が見えた。
「すっげ―――っ!」
夜景に向かって一直線に走っていく司にガキみたいだとくすりと笑いがこぼれる。窓に張り付いてキラキラと目を輝かす司はガキそのものだ。
嬉しそうな様子に連れて来てよかったと思う。
組の中ではこうもいかない。
たまにはこういうのもいいか。
そう思っていると間もなくシャンパンと食事のメニューが用意された。
「司、食事にするぞ。何がいいんだ?好きなだけ食え」
「いいのか?高いんだろ…ここ」
おずおずと聞くのが可笑しい。
「俺を誰だと思ってる?」
ニヤリと不敵に笑ってみせれば
「イヤなやつ!」
と司は嬉しそうな顔で寄ってきた。
「お前が困るぐらいに高いの、ガンガン食ってやる」
そう言いながらメニュー画面を操作していく。
「お前は何食べる?酒だけとかは許さないからな!」
「当たり前だ。お前と同じでいい」
「わかった。あ、でもこのシャンパンはちょっと呑んでみてえかも」
鬼の風紀委員とは思えぬ言葉に驚いた。よほど楽しいようだ。
「お前はちょっとでもすぐ酔うだろうが。弱いんだから呑むな!」
「えーっ!!」
つまんねえのと膨れるがまあ仕方ないかとすぐに諦めた。そして俺からもシャンパングラスを取り上げた。
雰囲気作りのためにせっかく注いでやったが呑まれたら困る。何しろ一口で酔い寝てしまうからだ。
そうこうしていると自動トレーから食事が次々と出てきた。
「うんまそう!いっただっきまーす!!」
がつがつと食べる司に色気がないと呆れつつも司らしくていいかと笑ってしまう。
「お前…ちゃんと噛んで食えよ」
「いいだろ。何でも。それよりお前も食ったら」
手をつけていない俺の皿をちらりと見ただけでまた料理に視線を戻し頬張り続ける。ちょっとは俺の方を見ろ。
「お前が食わせてくれんなら食べてやってもいい」
「…ばっ!ばっかじゃねえの!調子にのるな!」
顔を真っ赤にさせた司は口だけでなく手も速い。のるな!と同時な頬を殴られた。
予想通りの反応なのでダメージはない。
しょうがなく自分で食べようとナイフに手を伸ばせば目の前にずいっと何か出された。
「ほら、食えば?」
司が仏頂面のままフォークに突き刺した肉を口の前に差し出してくれている。
「あーんは?」
「誰がやるかよ、馬鹿!」
ふんとそっぽを向いた司の顔が赤い。
差し出された手を握って肉を口にしそのまま指先をペロリと舐めた。
「…………………………にゃっ!にゃにすんだよ!」
湯気が出そうなほど真っ赤になった司がフォークを置いて殴りかかろうと立ち上がる。
「なんだ?今度はお前も食べさせてやるぞ」
にやりと笑えばムムムと口を曲げて司は黙りこんだ。
「いらねえよ!この変態!スケベ!エロ親父!」
「それは期待してるのか?なんなら今すぐなってやってもいいぞ」
司が苦手としている笑いを浮かべれば司には窓辺までざざざと逃げていった。
「くくく…冗談だ。さっさと食え」
食べたらその後俺がお前を食べさせてもらうかな。じっくりゆっくりと。
そのドレスを脱がすのも楽しみだ。
夜のお楽しみに思いをはせ食事を再開した司をじっと見ていた。



おしまい。



【あとがきという名の言い訳】
ほんっとごめん。毎回ごめん。めっさ遅れておきながらこんなんで。全然いちゃらぶしてへんし。私的には司に「エロ親父」と竜二を罵倒して貰えて満足(笑)。


>ぴよぴよママ様からいただいたバースデープレゼントSSです。「クレパラ」のいちゃらぶした竜二×司をリクエストしたらいただきました。十分いちゃらぶしてますよ!あとカーリーに嫉妬する竜二が可愛いです。


★◎「どうしても別れたくない」
2015年03月26日 (木) | 編集 |
「どうしても別れたくない」




『別れて下さい』

彼女の流麗な文字で書かれた書き置きに、俺はどうしようもなく落ち込んだ。

どうしたらいい?

どうしたら彼女をまだ繋ぎとめられる?

それとももう遅いのか?

彼女は俺に弁解する余地も与えず出ていってしまった。

言い訳ぐらいさせてほしかった。

せめて面と向かって別れを告げてほしかった。

それとも顔を見るのも嫌だった?

違うよね?

君はまだ俺を愛してるんだろう?

だから許せなくて、やり切れなくて、出ていったんだろう?

だからまだ話し合うことはできるはずだ。

キョーコ、君に会って話したい。

だから、別れるなんて言わないでくれ。

携帯に入れてあるキョーコの写真を見ながら俺は祈った。

部屋からはすでに彼女の荷物がなくなっている。

本気なのだ。

だから急がないと。

彼女の誤解を解いて。抱きしめて。愛してると告げよう。

俺は携帯の短縮ボタンを押した。

『お客様のご都合により、こちらの携帯にお繋ぎすることはできません』

冷たい音声に茫然とする。

なんだ?何がどうなってるんだ?

もしかして着拒されてる?

いやそんな馬鹿な。

彼女がそんなことするはずない。

それにまだ昨日の今日だ。

そんなはずない。

そう思うのに、何度かけても彼女の携帯に繋げることができない。

嘘だ。嘘だ。嘘だ。

背中に冷たい汗が流れ落ちる。

嫌だ。絶対。

別れるなんて。

キョーコと別れるなんてできない。

別れたら俺は生きていけない。

ようやく手に入れたのだ。

心から愛しいと思える相手を。

手放すなんてできない。

お願いだから、ずっと俺の側にいて。

キョーコ、君が好きだよ。

だから帰ってきて。

俺は着の身着のまま部屋を出た。

彼女の元へと急ぐ。

今日の仕事先はSTBで、ドラマの撮影に行っている。

もちろん顔パスで入り、彼女の控室まで通してもらう。

控室に彼女の姿はなく、監督と打ち合わせに行っているそうだ。

逃げられると厄介なので、俺が来ていることは黙っていてもらうことにした。

それが功を奏して、しばらくしたら彼女が戻ってきた。

台本に目を通しながら入ってくる彼女を俺は背後から抱きしめた。

「ふへっ?何!?」

ふいを突かれたのか彼女は裏返った声を漏らす。

「キョーコ、捕まえた」

「敦賀さん!」

彼女は驚いて、そしてはっとした。それから猛然と抵抗を始めた。

「放して下さい!」

「嫌だ。放さない。キョーコ、聞いて!」

「嫌です!聞きたくない。聞きたくない!」

嫌がって暴れる彼女を俺は問答無用で押さえ付ける。

端から見たらきっと俺が乱暴しているように見えるだろう。

それでもかまわない。

俺は必死だった。

「聞いて!お願いだから!」

「嫌!いや!!」

「昨日は誤解なんだ。俺が君以外を愛せる訳ないだろう!」

「嘘!いつだって貴方はそうやって嘘をつくんです!」

「俺がいつ嘘なんてついた?少なくとも君と付き合ってから君に嘘なんてついた覚えはないよ」

「嘘ばっかりなんだもの………」

彼女の瞳に涙が浮かぶ。

「俺が嘘?ついてるはずないだろう?」

大切な君に。

嘘なんてつけるはずがない。

「じやあ、どうしてキスなんて………」

「それは……その………」

もう言ってしまおうか。でもまだ俺は………。

「やっぱり、あの人が好きなんでしょ?あんなに愛しそうに見つめて………」

彼女の顔が歪み、ボロボロと涙が零れ落ちた。

「綺麗な人でしたもんね。私なんか敵うはずない………」

「キョーコ………」

泣かないでと涙を拭おうと伸ばした手を振り払われてしまった。

「触らないで下さい」

俺を睨むつける彼女に、心が折れそうになる。

「キョーコ。ほんとに違う。彼女とは確かにキスをした。でもあれは親愛のキスであって、その………」

「お付き合いする時、そういうのは仕方ないって諦めてました。でも……でも、昨日の人は明らかに違いました」

「キョーコ……信じて。君以外には俺は……」

「京子さん、出番です!」

続きを言おうとしたときちょうどキョーコを呼ぶ声がした。

「はい!今行きます」

俺は彼女を放し、腕を一本だけ取って言った。

「撮影終わるまで待ってるから」

俺の言葉を承諾したのかわからないが、彼女は勢いよく飛び出していく。

「はあ」

彼女の椅子に座り込み、思わず出た息は重かった。

「とにかく彼女が帰ってくるまでなんとかしないと」

どうやって誤解を解くべきか。

昨日の失態を、あの人はきっと笑っているだろう。

『未来の娘に、ちょっとした意地悪よ』

帰りがけにひらひらと手を振りながら、あの人は帰っていった。

『だって私の大事な人の心を掴んでるんですもの。それも二人も』

「ズルイと思わない?」なんて笑いながら言って、なんてひどいんだ。

こっちはそのせいで今大変なことになっているのに。

むしろ彼女に対する意地悪じゃなく、俺に対する嫌がらせだろう。

まだ俺が彼女に打ち明けられていないのが気に食わないのか、あの人達は日本に来る度彼女に接触しようとする。

でもまさかここまで揉めるとは思っていないんだろうな。

『好き。好きよ。だーい好き』

『はいはい。わかってます。俺もです』

酔っ払ったあの人をホテルの部屋まで送り、ねだられるままにキスしてしまった。

まさか世話役を任されていた彼女にそれを目撃されるなんて。

昨日のことを思い出すと胃が痛む。

また溜息をついたところで携帯がなった。

『よう、蓮!せっかく休みにしてやったのにもう帰ったんだって』

聞こえてくる社長の声にうんざりした。

「社長、なんですか?俺今忙しいんですけど」

『仕事じゃないだろうが!は、はあん。さてはまたなんかあったな?』

「なんかじゃありませんよ。なんかじゃ」

ほんとにいい迷惑だ。

だいたい社長だってあの人の協力者だ。

『ははは!また奴に聞いてみるとするか!それはそうとマリアがお呼びだ』

「すみませんが、今日はそれどころじゃないんで断っていいですか?」

『大変そうだからな。わかった、わかった。くくくっ!何があったかしらんが仕事に支障がないように早くなんとかしろよ』

最後まで笑いながら社長は電話を切った。

なんだかみんな俺で遊んでないか?

俺がこんなに悩んでいるのに。

ほんとにもう、どうしたらいいんだ!

頭を抱えて俺は唸った。

彼女は逃げずに控室に帰ってきてくれるだろうか。

それも段々不安になってきた。

時間が刻々と過ぎていく。

時計の音だけがやけに大きく感じる。

彼女になんて言えばいい?

好きなのは君だけなのに。

キョーコ、俺が愛してるのは君だけだよ。

それだけは信じてほしい。

だから別れるなんて言わないで。

携帯の写真にキスをした。

笑っている君に。

俺はもう一度キスできるだろうか。




〈あとがき〉
お誕生日おめでとうございます!!

ヘタ蓮?ウザ蓮?

私もこんな蓮ならウザイなあ。て、自分で書いてるのに。でも書き直しはなしの方向で!

あの人はマミーです。きっとこんなキャラじゃない。でもクーパパがあれだからありかなと。

はたしてキョーコは帰ってくるのか。はは!

ちなみに今年は一番乗りで送れたかな?



>サリーちゃんからいただいたバースデーSSです。
ヘタレな蓮をリクエストしたらこんなにぶっ飛んだ設定を書いてくれました。むしろそのまま別れてしまえ!なんてね(笑)。この時はまだ熱もなかったのでただ爆笑してました。
ジュリママまでありがとう!

★「Bomber girl」
2015年03月26日 (木) | 編集 |
「Bomber girl」





キラキラ、ふわふわ、ひらひら。

俺が好きな娘の好きな物はそういう言葉で表現される。

ちなみに。

妖精、王子様、お嬢様。

好きな存在だとこうなる。

妖精と王子様には苦い想いがある。

過去の自分がそう名乗った…いや、正確には勘違いされたのを訂正せず放置した。

そして彼女は今でもそれを信じている。

しかも今回自らその嘘を上書きしてしまった。

「まいったな…」

あまりにもメルヘン思考な彼女。とっさについた俺のバカな嘘もあっさり信じてしまった。

「これ正体バレたら殺されるかも」

彼女に殺されるなら本望か。

殺されるほど激しい感情をぶつけられるのならまだいい。

軽蔑されたり、無視されたり、避けられたりしたらどうしよう。

何しろ彼女の大好きな者で嘘をついたのだ。

許せない嘘であるのは間違いない。

今のところ、彼女とどうこうなる気なんてない。むしろ彼女が無理だろう。

けれどもし俺とそういう関係になってくれたら喋らない訳にはいかない。喋らないと俺の気が済まない。

さっきそう決めたのに。

恐い。

そのことを言って、それまで築き上げた関係が壊れてしまうのが恐ろしい。

彼女に嫌われたら生きていけない。

そんな弱きなことを思ってしまう自分が情けない。

あんな馬鹿馬鹿しい嘘をなぜついたんだと、自分を殴りたい。

「10年経っても成長してないな…俺」

自業自得とはいえ、自分の浅はかな言動にため息が出た。

カインとしてセツカに接する時はまだいいが、敦賀蓮として最上キョーコに接する時どう対応したらいいだろう。

なるべく普通に?

普通ってなんだ?それまでどうしてた?

コーンの姿とはいえ最上さんにキスをした。

呪いを解いてくれた彼女からの一瞬のキス。

それだけでは物足りない。

妖精コーンとしてはもう会えない、いや会わないだろう。

そう思ったら欲しくなった。

別れ際に彼女から奪った口付け。

彼女はあのキスをどう思っているだろう。

イヤだった?

まさかコーンのこと、嫌いになってはいないよな?

また俺との約束を守れなくてあたふた思考の渦に捕まっているんじゃ……。

案外俺の顔を見た途端思い出して真っ赤になるかも…実際に想像してみたら自然に笑みが浮かんだ。「バレなきゃいいんじゃない」なんて言った手前、馬鹿正直に『敦賀蓮』に相談はしないだろう。

でも彼女が困るのをわかっているくせに、どんな反応するか見てみたい。

だから意地の悪い言葉を投げつけてしまった。

それなのに……。



「ファースト・キスを経験致しました」

いきなり直球で投下されたその発言に、俺は思わず噎せてしまった。

さっきは誤魔化したのに、なんで正直に話すんだ?

なんで隠さない?

黙っていれば一生わからないのに。

なんて疑問に思っていたら、すぐに答えをくれた。

あまりにも嬉しい彼女の気持ち。

よかった。コーンは嫌われていなかった。それどころかコーンの素晴らしい一日をなかったことにしたくないなんて……。

心の底から込み上げてくるこの何とも言い難いこの感情。

彼女に触れたい。抱き締めたい。

思わず手が出そうになったところで更なる爆弾が投下された。

照れているような恥ずかしそうな、まるで恋する乙女な表情で、俺には嘘をつきたくない、なんて言われたら。

危うく伸びそうになっていた手を腕ごと押さえ込んだ。

これは何のワナなんだ。

馬鹿みたいな嘘をついた俺に対する天罰か?

彼女の好きなモノを土足で汚して。

素直にあの時バラせばよかったのか?

二回もそのチャンスがあったのに。

キラキラ、ふわふわ、ひらひら。

妖精が花畑で戯れるファンタジーな世界。

メルヘン思考な彼女の夢を壊したくなかった。

けれどそれ以上に嘘をついていたのだと幻滅され、嫌われるのが恐かった。

『敦賀蓮』はどうであれ、『コーン』だけは彼女のメルヘンの世界でいつまでも生きていて好かれていたい。

もしかして俺に特別な感情があるかも……なんていう淡い幻想をすぐにぶち壊されたが、それも嘘をついた罰として甘んじて受け入れよう。

妖精コーンとしてやらかしたあれやこれやを反芻してはため息をつく。

見た目だけは彼女の好み。

中身はまるで違う真逆の俺。

いっそ彼女が普通の子ならよかったのに。

俺を惑わすメルヘン思考の爆弾娘は日本へ帰っていった。




<あとがき>
お誕生日おめでとうございます。

咳早く治るといいですね!

リクエスト通りになってないような……すみません。なんかうまくまとまらなかった。

爆弾娘は「bombshell girl」が正しいのですが分かりにくいの語呂と響きでこうしました。


>サリーちゃんからいただいたバースデーリクエストSS。ヘタ蓮同盟の私達はコーンをばらす時この時のことをどう話すのか楽しみで堪らないです。
☆◎「クーとクオンとキョーコと蓮と」
2015年03月08日 (日) | 編集 |
「クーとクオンとキョーコと蓮と」





CMで最上さんと共演することになった。久しぶりに彼女に逢える。俺は朝からそわそわしていた。人目がなければ鼻歌でも口ずさんでいたかもしれない。

それぐらい彼女と逢えるのが楽しみだった。

「DARK MOONの打ち上げ以降会ってないからっていって羽目を外すなよ」

「心配しすぎです。だいたい仕事場で羽目なんて外しようがないですよ」

社さんにそう言ったものの、浮かれているのは隠しようもない。

ハンドル捌きも軽やかに、スタジオへと急ぐ。いつもなら何とも思わない信号待ちも、今日はやけに長く感じる。

早く青にならないかと歩道に目をやると、見間違えようもないド派手なピンクつなぎが視界に入ってきた。

慌てて左側へ寄り、クラクションを鳴らす。するとピンクつなぎが振り返り、彼女――最上さん――は俺の車を見付けると、笑顔になり走り寄ってきた。

「おはようございます、敦賀さん!」

「君も今からSスタジオだよね?早く乗って」

彼女が後部座席が乗り込んだのを確信し、俺はすぐに車を発進させた。

「ありがとうございます。助かりました。」

「どうせ同じ所に行くんだから気にしないで」

俺がそう言うと、最上さんはほわりと嬉しそうに笑った。

ああ、可愛いな。

口元が緩みそうになったが、隣で社さんニヤニヤ嫌な笑いを浮かべていたので我に返った。

「敦賀さん、今日はよろしくお願いします」

ミラー越しに最上さんがお辞儀するのが見えた。社さんが居なければ……。

「そういえば、最上さん、今日はこの撮影終わったらまだ仕事?食事にでもいかない?」

「すみません。今日はちょっと……」

「バイト?」

「いえ……。えと…実は今夜、と、と、父さんが来るんです。なんか逢わせたい人がいるらしくって……」

相変わらず、素の状態で俺の父親を父さんと呼ぶのが照れくさいらしい。将来的にはずっと呼んでもらうことになるんだけどな。

……て、そんなことは今はどうでもいい。

父さんが来るって!

聞いてない。聞いてないどころか逢わせたい人がいる?

まさか俺じゃないだろうし…母さんか?

しかしそれならマスコミがすでに騒いでいるはずだ。父さん一人ならお忍びで来日するぐらい造作ないが、母さんを伴うとなればそう簡単ではない。あの人にはお忍びで来日するなんて芸当到底無理だ。

だとしたら誰だ……?

さっぱり検討がつかない。社長に探りを入れたい所だが、からかわれるだけなのがオチだ。

「そう…。ミスターヒズリがね。俺も是非お会いしたいな」

ここは彼女と一緒に父さんに会うのが手っ取り早い。そう思って俺が言うと、彼女は目をキラキラ輝かせた。

「本当ですか!?嬉しいです。実は一人だとちょっと心細かったんです」

「どうして?彼とは親しいんだろう?」

「いえ…父さんが目一杯着飾ってこいっておっしゃるので…逢わせたい人ってどんな凄い男性かなって……」

男性……ということはやはり母さんじゃない。着飾ってこいってどういうことだ?

「ミスターヒズリからは何も聞いてないの?」

「はい。ただ男性としか……」

「ところで、俺も本当に行っていいの?」

「はい。社長の別宅だから誰でも連れてきていいっておっしゃったので。よかったあ。これでお休みのモー子さんをわざわざ呼び出さなくてすみます」

ありがとうございます、と彼女は丁寧に頭を下げた。

社長の別宅ということは、あの二人で何か企んでいることは間違いない。

社長が絡んでいるとなれば、俺が今日彼女と逢うことぐらい簡単にわかったはずだ。そしてこの相談を受けるのを見越して同伴者を許したに違いない。

一体、何を企んでいる?

彼女に紹介したい男性って誰なんだ?

CM撮影の間中、俺の頭はそのことだけに支配されていた。

先に自分の撮影を終えた最上さんは、社さんに伝言を残して帰ってしまった。

『着替えを借りに事務所に行きます。敦賀さんが来て下さるのを待ってます』

彼女からのメッセージに、俺は心を入れ替え撮影に集中した。




撮影が終わるとすぐ、俺は社長の別宅に向かった。最上さんはもう来ているだろうか。

明るい玄関ポーチにたどり着くと、淡いピンクのイブニングドレスに身を包んだ女性が佇んでいた。

「最上さん……?」

振り向いたのはやはり最上さんだった。いつもより大人っぽい雰囲気に、知らない女性のようで緊張してしまう。

「敦賀さん!来て下さったんですね!」

「遅れてごめんね」

「いえ、来て下さって嬉しいです」

満開の笑顔に、そのまま連れ去りたい衝動に駆られた。

俺が必死に欲望を押さえ込んでいると、荘厳な玄関が開き、中から執事服の男が出てきた。

「いらっしゃいませ、最上様。敦賀様も。旦那様からお伺いしております。ヒズリ様がお待ちなっておいでです」

その男がにこやかに笑い、俺達を中へと促す。

中はやはり、社長の別宅に相応しいどこかの宮殿のような雰囲気だった。天井にぶら下がっているシャンデリアに圧倒され、俺と最上さんはその場で立ち止まってしまう。

「さすが社長……」

「お二人ともこちらです」

案内された応接室にはすでに誰かが待っていた。

何ヶ月か前に見た、見覚えのある背中がソファーの向こうにちらりと見えている。

最上さんも気付いたようで、そちらにパタパタと走り寄っていく。

「父さん!!」

最上さんが大声で呼ぶと、懐かしいがゆっくりこちらを向き、彼女を見咎めると破顔した。

「父さん、久しぶりだね!」

ここにきてもまだクオンにならないと呼べないのか、彼女は男の子っぽい仕種で父さんに抱き着く。

「だから別にクオンにならなくてもいいんだぞ」

父さんは笑って最上さんのおでこを小突いた。

「だって……」

照れ臭そううに下を向きつつも、彼女の表情は少し嬉しそうだった。

「それにしても久しぶりだな。敦賀くんも」

「お久しぶりです」

俺が軽く会釈すると、父さんはすぐに最上さんに向き合い、引き寄せた。未来の義理の親子の仲がいいのは結構な話だが、仲が良すぎるのも問題だ。

「キョーコ、いじめ役はうまくいったのか?」

「うん!父さんのおかげだよ!」

「そうかそうか。お前ならやれると思っていたぞ」

「ミスターヒズリ。そろそろそちらの可愛いお嬢さんを紹介していただけませんか?」

偽親子のいちゃつきに、ギリリと奥歯を噛んだ時、窓辺に佇んでいたもう一人の男がこちらにやってきた。

「あの……父さん?」

「ああ、紹介しよう。こちらはアルヴィ・クオン・カートラ。北欧のとある国の王子だ。クオン、この娘はキョーコ。日本で女優をしている」

「王子様?」

「王子?」

俺と最上さんは同時に声をあげた。

しかもクオンだって?

「あの、父さん……?」

「王子役で悩んでいるんだろう?雰囲気が掴めないそうじゃないか」

「なんでそれを……?」

「ボスに聞いた。で、ちょうどこのクオンが日本に留学するって言うからついでに連れてきたんだ。彼に王子としての立ち振る舞いを教わるといい」

「よろしく、キョーコ。君もクオンって呼んで下さいね」

クオンは彼女の前で片膝をつくと、彼女の手を取り、その甲に口付けをした。




クオンという男は、確かに昔の俺をそのまま大きくしたような、中性的で穏やかな雰囲気を持つ金髪の美しい青年だった。彼女のイメージするコーンに近いのだろう、まるで夢見る乙女のようなキラキラした瞳で彼を見つめている。

俺は思わず、窓ガラスに映った今の自分の姿を確認してしまった。そして変貌した自分に落ち込んだ。

二人は今仲良く王子様ごっこをしている。

どうも最上さんは養成所でやる舞台で王子を演じるらしく、それがうまくいかなかったそうだ。それで本物の王子に学ぼうというのだ。

「はあ~」

「ずいぶんなため息だな」

二人の様子を遠目で見ていた俺に、父さんがニヤニヤと笑いながら近付いてきた。

「何を企んでいるんですか?」

「酷い言い草だな。別に何も企んでないさ」

嘘なんてつかない、なんて顔をして彼は平気で嘘をつく。

「見え透いた嘘はつかないで下さい」

「失礼な!何も企んでなどいない。ただ俺は可愛い息子の力になりたいだけだ」

息子?まあ確かに、今最上さんはクオンになりきっているから息子だよな……。

しかし……。

ジロリと父さんを睨むと、彼は余裕たっぷりに微笑んだ。

勝てないな……。

諦めて窓の外を眺めていると、ふいに背後に気配を感じた。

振り向けば、クオンがいつの間にか俺の後ろに来て俺を見ている。

「さっきは挨拶もせず失礼したね。僕はアルヴィ・クオン・カートラ。君は?」

「敦賀蓮です」

「そう……よろしく、蓮。仲良くしてね」

にこやかに差し出された手を握ると、意外と骨張った男っぽい手をしている。俺は何故かすぐにその手を外してしまった。

「皆さん、食事が出来たそうですよ!」

ちょうどその時、最上さんが俺達を呼んだ。

「お前たち、行くぞ!」

「ミスターヒズリ、僕の分まで食べないで下さいね」

父さんが我先にと食堂へ走り出した。俺とクオンはその後ろをのんびりて歩く。階段に差し掛かった所でクオンが不意に俺との距離を縮めてきた。

『魅力的で可愛い人だね』

英語で囁かれた言葉に、俺は目を見張った。

驚いて振り向いた俺の目に映ったのは、一人の男。彼は今までの天使のような笑顔から一変、獲物を狙う男らしい顔付きになった。

『クーには狙うフリでいいって言われたけど、本気になろうかな……』

俺に向かって挑発的に笑う姿はもはや天使のかけらもない。

『君、まだ彼女には何も言ってないんだろう?だったら僕が彼女を貰っても……』

『彼女は渡しません。彼女は…彼女は俺の大切な女性です。貴方には渡せません』

俺がきっぱり言い切ると、クオンは一瞬呆気にとられたような顔になった。しかし次にはその雰囲気を変え、フッと微笑んだ。

『だったら早く告白したらどう?早くしないと彼女、僕以外の誰かに掻っ攫われるよ』

クスクスと笑いながら告げられ、やはり謀られたのだとわかった。

『色々抱えてるみたいだけど、大丈夫。彼女なら君の全てを包み込んでくれる』

『どうして……』

『なんでかな?彼女には僕の母と同じようなオーラを感じるんだ。温かくて優しい女神のような雰囲気がね』

そう言って優しく笑うと、クオンは頑張れよ、と俺の肩を叩いて食堂へ入っていった。

「まいったな……」

俺はその場でうずくまると、重い息を吐き出した。





<後書き>
美羽ちゃんからのリクエスト。クーが出てきて蓮が嫉妬する話がみたいとのこと。
頑張ってみました。
少しでも彼女が笑ってくれるように願いをこめて……。
クーが言った息子は、もちろん蓮のことです。
クオン王子はフィンランド系ってことで。当て馬にしてはすぐばらしちゃうよい子なんです。腹黒ですけど(笑)。

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